2話「当たり前」
ーー私は驚いていた。
お兄様はネイルに圧倒をされていた。
その時に周りの観客たちは心配の声ではなく、まるでバカにするような。
まるでお兄様を貶すようなそんな汚い笑い声をあげていた。
なんで…?
頭には疑問符しかなかった。
あんな頑張って戦ったお兄様を何故バカにするの?
私はこの時怒りを抑えきれそうになく、観客たちに声をあげようと思った刹那ーー。
もう終わった試合と思われていたスタジアムの方に轟音が鳴り響いていた。
「なに…!?」
またネイルがお兄様を攻撃したのだろうか?と思って見てみると、さっきまで壁に張り付いていたはずのはお兄様はずなのに、なぜかネイルが壁にめり込んでいた。
「な、?!なに?!!」
お父様も信じられないといった顔でスタジアムの方を見つめていた。
実際私も信じられなかった。
お兄様は強い…私はそれを知っている。でもあのシュタール家の人間をあんなにも圧倒できるものなのだろうか?なんならさっきまで圧倒されていたのに…?
こちら側ではあちらのスタジアムの方からの声は聞こえない。でも明らかに笑みを作り余裕の言葉を吐いているのは聞こえなくとも分かった。
「だ、れなの?」
今までと何かが変わったお兄様に思わず吐いてしまう。
お兄様はトドメを刺そうとネイルの方に向かったが、これにはジャッジも止めに入った。
ーーお兄様が過剰にやられてた時は止めに入らなかったくせに…と口には出さないが思わずそんなことを思ってしまうのだった。
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俺はソイツに勝った後、何故か周りの奴らに「何をしたんだ?」「何かイカサマでもしたのか?!」など色々問い詰められた。
いや、イカサマってなんだよ。
ーーー俺という存在は異質だ。
目の前にいた雑魚がそれなりに凄い奴だと聞いた時は酷く驚愕した。
なんせ少し小突いただけでダウンした奴なんて程度が知れていた。
残念だ。久々に目を覚ましたかと思えば...
この世界も落ちたな。
俺は1人その待合室でそんな事を思っていた。
「おい、アイル」
しばらくすると父だと名乗る男がやってきた。
「なんだ、親父」
「おや、、!?貴様!!たまたま勝ったからといってあまり調子に乗るではないぞ!!!」
あ、しまった。敬語を使うべきだったのか。
だが敬語というのは尊敬する相手に使うものであって自分より下に使うものではない。なので俺は敬語なんて使ったこともなかった。
「す、みません、ちち、うえ...善処、します」
片言だった。やっぱり慣れないものを使うものではないな。
「ふん、調子に乗るではない。話を変えるがどうやって貴様はあのネイル様に勝てた?」
「どうしてと聞かれましても...小突いたら相手が飛んでいっただけです」
「小突いただけで勝てただと?!虚言を吐くでない!貴様如きが仮に能力を覚醒させたとしても勝てる相手ではないのだ!」
「貴様は何をしたのだ?!」
そして俺は再度問い詰められた。
ありのままを伝えたつもりなんだが。たく、この頑固ジジイが...
そしてめんどくさくなった俺は。
「でも勝ちは勝ち。」
「、は?」
急に何を言い出すんだ?といった顔でこちらを見てくる。
「いいですか?父上。私は勝ったのです。」
「どんな相手だろうと。その過程がどうであろうとも、勝ったものは勝った。それはひっくり返りようのない事実。」
「ーーー」
「仮に能力を覚醒させ勝ったとしても。」
「相手が油断をしていてその隙を突いて勝ったとしても。」
「結果が全てのこの世界。俺は結果勝ったのです。それにケチを付けるのですか?父上」
「あまり調子に乗るんじゃない...だが確かに勝ちは勝ちだ。勝ち方はどうであれ、それは認めてやる。」
「有難うございます」
「いい気になるな。それと約束の破門の件は無しにしてやる。せいぜいこれから抗うんだな」
「ーーー」
そう言うと父は部屋から出て行った
てか、俺負けてたら破門だったの?
この体の持ち主は大変だな。
弱いからこそあんな待遇なんだろうが。
このアイルと呼ばれていた人格はどうなったのだろうか?死んでいる事はないと思うが、戻ってくる気配もない。
「まぁ俺には関係のないことか」
ただこのアイルとやらが弱いんじゃあ、あまり迂闊に行動ができないな。
確かに俺は最強だがそれを見せつけたいわけじゃない。
とそんな事を思っているとーー。
「お兄様!!」
「ん?」
次から次へと…もうめんどくさいんだが?
確かこいつは俺が戦っていた時に唯一不安そうな目で見てたやつか。お兄様…ってことはこいつは妹か。
「お、なんだ?」
人格が変わっていることはめんどくさいので伏せておこう。と言ってもこいつになりきれるかなんて分からないのだが。
「お兄様はどうやってあのネイル様に勝ったのですか?」
おい、また同じ質問か。
「父上にも言ったことだが小突いたら勝ってた…それだけだ」
流石にこれだけでは先ほどのように問い詰められたりするのだろうか?
とそんな事を思っていたのだが
何故かその妹は目を輝かせていた。
「なんでそんな嬉しそうなんだ?」
「い、いや!お兄様…ついに能力を覚醒させたのですね?!!」
「は、はあ…」
めんどくさいので合わせておく
「お兄様…やっと……私、リーナはとても嬉しく思います!!」
あまりにさっきの父と対応の差が激しいため風邪をひいてしまいそうになる。
「なんでそんなに嬉しく感じるんだ?所詮他人だろう?」
気になった事だったので質問してみた。
俺は実際他人の達成や成功なんて死ぬほどどうでもいい。
なので質問をしたのだが…
「何を言っているのですか!お兄様!私とお兄様は他人なんかじゃありませんし、私が能力を開花させた時にお兄様は自分のことのように驚いてくれたじゃないですか!」
「そ、うだったな」
「お兄様の成功は何より嬉しいですし、今回お兄様が能力を覚醒させて私はとても喜ばしいですよ?」
「みんなに無能力者であることをバカにされても、誰よりも努力をして。口を悪くしていたネイルにも敬意を払ったりして。なので私は努力が実ったような感覚がして嬉しいのです」
「何よりお兄様、私の小さな成功でもすごく喜んでくれたじゃないですか」
忘れちゃったんですか?
そう笑いながら問いかけてくるソレに
ーーー可笑しい。
俺はついそんな事を思ってしまった。
なんで自分は能力がなかったくせに妹の成功を喜べる?
なんで自分は蔑まされていたのに他人に憎悪を抱かない?
この中に眠ってる奴はなんなんだろうか?
きっとソイツにとっては当たり前のことだったのだろう。
でも俺には微塵も分からない。
普通はそんな状態だったら人を妬み嫌うものだ。
妹だから?大事な家族だから?自分よりも上だから?
ーーー俺にはそれが分からない。
変なとこあったらごめんね?
面白かったらひょうk…(((((((




