1話「汚名の返却」
僕は僕自身が嫌いだった。
...無能王子。そんな情けなく、ダサいあだ名をいつしか貼り付けられていた。
「一週間後、もしシュタール家の王子との格闘試合で負ければお前を破門とする」
急に僕は父上にそんなことを言われていた。
「ま、待ってください。父上。シュタール家の王子...ネイル様はとても優秀な能力の持ち主で僕の通ってる学園でも五本指に入るお強さですよ?!」
「だからなんだ?貴様は私たち一族のヒューゲル家に泥を塗るつもりなのか?いや、もう塗っているからこそ貴様を一刻も早く追い出したいのだ」
ヒューゲル家。この国でもトップに位置する一族の家系で代々優秀な人間を出してきたのだという。
「しかもお前が居なくても、妹のリーナが家系を引き継ぐ。だから無能なお前なんかいらない。それだけだ」
「そ、そんな。父上...!!」
「無能王子。そんな汚名を付けられて家に居させてやっただけでも感謝をしろ。とりあえず格闘試合に負けたら出ていく。いいな?」
圧をかけられ、首を横に振ることなんて出来なかった。
「はい...分かりました」
「ふん。リーナや母に別れの言葉でも告げておくんだな」
そう言い残して父上は出ていった。
負けたら破門??
...まずい。まだやりたい事だって、いっぱいあるのに。しかしネイル様に勝てる気が一切しなかった。
僕は能力を覚醒出来なかった。
基本人は8歳で能力を発揮できるらしいが僕だけが何故か覚醒をしなかった。
「くそ...!」
思わず拳を地面に叩きつけてしまう。
なんで。なんで僕には能力をくれなかったのだろう?神がこの世界にいるのだとしたらきっと僕はその神を恨んでいただろう。
「僕にも能力さえあれば良かったのに」
そうポツリと吐露していると
「お兄様...!!」
「リーナ?」
いきなり妹のリーナが入ってきた。
何の用なのだろうか?
「お兄様、家を出ていくって本当なの?!」
「あぁ、そう伝わっているのか」
一応負けたらっていう話のはずだったんだけど...
「まあそうだな。ネイル様との格闘試合で負けたら家を出ていく事になったんだ」
「ネイル様って...あの人に勝てって言うの?!なんで兄様はそれを承諾しちゃうの!?」
「落ち着けって。仕方ないだろう、ただでさえ無能王子なんていう烙印を押されてもここに居させてくれたんだ。それだけでありがたかったんだ。それに父上のあの圧は断れないしな」
少し笑いながら言うと
「なんで笑ってるの?!もし家を出ていく事になっちゃったらもう私とも会えなくなっちゃうんだよ?」
泣きながら言うリーナに
「おい泣くなよ、リーナは僕と違って優秀なんだ。僕が居なくてもこれからやっていけるだろう?」
「違う、そうじゃない。お兄様がいなくなる事が嫌なの」
悲しんでくれてる。それが少しだけ嬉しかった。
「しかもまだ出て行くって決まったわけじゃないんだ」
「勝てるの...?」
「まぁ厳しいだろうなぁ」
「じゃあ私も出てく」
そんなことを言うリーナに僕は
「それはダメだ。リーナがいなくなったら誰がこのヒューゲル家を支えていくんだ。リーナがこの家を守ってやってくれ」
「でも…」
「でもじゃない。いいね?リーナは僕と違って優秀なんだから」
リーナは渋々首を縦に振った。それでいいんだ。それで。
僕について行ったら恐らく良いことなんて一つもない。家を追い出された元無能王子と一緒なんて。何があるか分からない。
だから一緒に連れていくなんて例え世界が滅んでもダメだ。
僕だって一緒にいたいさ。でもそれはできないことで、叶わないことだ。
でも負けるわけにはいかない。
ヒューゲル家の王子。
ーーーアイル・ヒューゲルとして。
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格闘試合の前日。僕はいつも通り学園に通っていた。
「家から追い出されたらこの学園生活も最後か」
僕が通っているのは王族や貴族しか通わない学校なので破門になったら王族じゃなくなってしまうので学園にいる事がなくなってしまう。
「はぁ」
とそんなため息をついていると
「おいそこの無能王子」
「ん?」
いつものあだ名で呼ばれて背を向けると
「ネイル様...」
後日試合予定のネイル様が立っていた。
「聞いたぞ。明日負ければお前、破門なんだって?」
「正直なんでこの俺様が貴様みたいな無能とやんなきゃいけないんだと思っていたが…そんなものがあるなら俄然やる気が出るな」
とても王子らしき発言だとは思えなかった。
「はは、そうですね。僕も明日は精一杯頑張らせてもらいます」
「頑張る?笑わせるな。お前が頑張ったところで俺様に遠く及ばない。力の差がありすぎるんだよ」
そういって僕の身体は何故か吹き飛ばされていた。
「ごほっ...がはっ」
口から赤い液体が出てきた。
「はっ、いいザマだな。明日もそうなりたくなければ棄権しておくだな無能が」
そう捨て台詞を置いてどこかに言ってしまった。
「これが能力...かぁ」
あぁ羨ましい。
そう思い、眠りにつくのだった。
目覚めるとベッドの上にいた。
「ん…ここは?」
「あ、やっと起きた!」
「リーナ?なんでここに??」
「お兄様こそ...!なんであんなところで血を吐きながら倒れていたんですか?!」
「あぁ、ちょっとね…ネイル様に…」
「ネイル...私ちょっと話に...」
そう言って立ち上がるリーナに僕は
「ちょっと待て!今リーナが行ってはダメだ。シュタール家に喧嘩を売っていい事なんてない!」
「でも、お兄様が」
「いや、いいんだ。しかも明日戦うんだ。その時に一種報いるんだ」
「お兄様...」
「ごめんな...」
おそらくリーナも察しているだろう。一種報いるどころか足元にも及ばないだろう。
明日どうなるんだろうか...
一瞬にして負けるのだろうか?
「憂鬱だ...」
ぽそりとそんなことを吐いてしまうのだった
格闘試合当日。
僕はその人と向かい合っていた。
「お、昨日思いしめさせたつもりなんだが来たのか無能王子」
「はい、どうにも僕は負けるわけにはいかないので。」
「負けるわけにはいかない??よくそんな事が言えるな。無能が。俺様の足元にも及ばないくせして威勢だけは一丁前だな」
「……っ」
「でもいいさ、今日でお前とはお別れ...見ろ。ギャラリーが沢山いるぞ」
周りを見渡せば沢山の人がいた。
真ん中にはリーナと父上が座って見学をしていた。父上はめんどくさそうに、リーナは何かをお願いするように手を胸に当てていた。
「話題の無能王子を見に来たんだろうな。はは、そこは同情するよ。無能」
「俺様だったら死んでしまいたいくらいの恥だな。自分は無能力者として生きてそれを晒される。とんでもない屈辱だろうな」
実際その通りだった。
これの試合はもう分かりきってる試合。勝ちがもう決まってる試合。
無能王子が終わる瞬間だった。
「でも、このままあっけなく終わるわけにもいかないんですよ...」
「はっ、良いだろう。このシュタール家の力を思い知らせてやる。悪いが殺しても文句は言うなよ」
そういうと試合が始まった。
まずは少し距離を空けて攻撃を...!
そう思っていたのだが
「…っ?!」
謎の力で僕は地面に這いつくばっていた。
「おい、離れれば離れるだけ俺様の有利になっていくぞ?」
「な、んだ…これ」
「特別に教えてやるよ。俺の能力は重力操作。上から重力をかける事だって可能だし下からだって可能だ」
そう言うと僕は宙へと投げ飛ばされていた。
「、、、あ」
やばい。そう思った時には地面に叩きつけられていた。
「う、ぁ....ごはっ」
い、たい。身体中が痛かった。口から血も出ていた。
「おい、もうダウンか?頑張るんじゃなかったのか?つまらねじゃねーかよ」
「ま、だ...!」
なんとか立てたが、圧倒的すぎた。あまりにも圧倒的すぎる。
ふと、リーナの方を見ると心配をしすぎて泣きそうになっているのが見えた。
「妹の前なんだ...もう少し粘ってみるさ」
「いいねぇ。こい。遊んでやるから」
そう言われたのでその敵に向かって走る。
「うぁああああ!」
無我夢中に走ったさ。でも。
「っっっっ!」
相手の能力で投げ飛ばされ、壁に衝突してしまった。
「う....ぁ...」
「無能力者が。この俺様に敵うとでも本当に思ったのか?お前はな。血統だけはご立派なポンコツ野郎なんだよ!」
あまりにも。
あぁ。あまりも圧倒的だ。
完敗。いやこれはもう勝負じゃない。一種のいじめという奴なのだろうか?
周りからは笑い声が聞こえてきた。それは徐々に広がっていき、全員僕を馬鹿にしてくる声が聞こえて来た。
いや、1人違うのかもな...
「はは、」
笑うしかなかった。
こりゃあもうリーナに顔合わせできないな
そこで僕は目を閉じるのだった。
そこで俺は目を覚ました。
何やらうるさい...
雑音が轟いていた。それに少し身体が痒いな。何が起きてる?
でもどうやら目の前にいる奴は敵らしい。
俺のことを見て嘲笑していた。
何故だ?何故俺はこんな雑魚に笑われなければいけない?
....目の前の無能は壁に張り付いていた。
勝った。俺様はそう思っていた。
...だけど
「...は?」
突然だ。突然目を開けたかと思ったら姿を消してこちらの眼前にまで来ていた。
「おま...!なんで...」
言い終わる前に俺様は蹴り飛ばされて逆に壁にめり込むことになった。
「っが?!」
「この程度も見切れないで俺を笑っていたのか?」
そういうとソイツは笑った。
それと同時に周りの観客たちも黙り込んでいた。
そんなわけない...そんな事があって良いわけない。なんで?なんでなんでなんで
「困惑に満ちた顔をしているな。当たり前だろ。俺にお前が勝つなんて世界がひっくり返ってもあり得ないことなんだからな」
そう言ってこちらに歩み寄ってくるソイツに能力をかける。
俺様の能力は重力操作。ありったけの重力をソイツにかける。でも...
でも、そいつはびくともしなかった。
「は、?」
「ん?なんかしたか?」
「なん、で、なんでお前、俺様の能力が効かないんだよ?!」
「……?さっきから言っているだろう。お前みたいな雑魚に俺が負けることはない」
言っている意味が分からなかった。
こいつは誰だ??
無能王子であるこいつがこの俺様を圧倒できるわけない。この俺様が...!
「お前...なんなんだよ!お前みたいな無能王子がなんで...!!!!」
「無能王子?違うな。傲慢の王子……俺はそう呼ばれていた。」
そういうとソイツは俺様にトドメをさしてきたのだった。
面白かったら評価してくれれば嬉しいなぁ、?




