第9話:女子高生を助けろ!(その3)①
新入生歓迎会が迫ったある日、伊都はまた祠のところへ行った。
そしてまた500円玉を入れて手を合わせた。
「今度の新入生歓迎会のあとのダンスパーティーであのお面の男の子と踊れますように、そしてデートできますように・・・」
チリン、チリン!鈴を鳴らした。
伊都が帰ろうとすると、また竹藪の奥から巫女服姿のあの娘が出てきた。
「願いは確かにお聞きしました」
「そう、でも、ご利益が遅いんじゃないの。あれから、彼と全然デートできないし」
「彼には先約があったのです・・・」
神様と言われているその娘は、なにかやましいことでもあるのか、目をそらした。
「でも、今度のお願いは聞いてよね。あなた幼いけど神様なんでしょ」
「その歓迎会とダンスパーティーですね。あなたの高校に行きますから」
「わたし、生徒会の副会長やってるから、もし、本当に来てくれるんだったら、わたしの名前を出してね。スムーズには入れるようにしておくから」
「橘伊都さんですね」
「まあ、期待しないで待っているわ。じゃあね、可愛い神様」
神様は、伊都のスラリとした後ろ姿を見送りながら
「わたし、そんなに子供っぽいかな・・・」
◇
伊都の通う聖華女学院高等学校は歴史あるお嬢様高校である。そこの女子高生はそれだけで結構なブランドだった。
新歓のあとのダンスパーティーは、伝統的に他高も受け入れている。厳格な紹介が必要だが、戦前の花嫁ブランドの名残である。
その時、受付の女生徒は、目を見張った。
お面を被った背の高い男の子が、他高の制服姿の可愛らしい女の子をつれてバイクでやってきたのだ。
目立つことこの上なかった。その男の子がトップ高の制服を着ていなかったら、警察に通報するところだった。
その姿を遠くからみつけた伊都があわててやってきた。
「愛と正義の使者、お助けマン参上!只今仮契約中・・・」
受付は、伊都さんが、呼んだ、余興の芸人さんだ、と理解した。
「ようこそいらっしゃいました」伊都は満面の笑みで出迎えた。
そして、神様にも
「あなた中学生ではなかったのね」と少し皮肉を込めて言った。
神様は、受付で、「お助けマンと、その妹」とだけ記帳した。
「そうだったの・・!」伊都の顔にほっとしたような笑みがこぼれた。
◇
伊都がうれしそうに、母校の歴史ある建物を案内していた。
神様はお邪魔虫だったかもしれなかったが、憧れの眼差しが隠せなかった。
自分が経験できなかった高校生活とはこんなに素敵なものなのだという憧れだった。
そのころ、生徒会室では、大問題が持ち上がっていた。
式典後の余興で読んだ、OG達のバンドが事故でこれなくなってしまったのだ。
「ここが生徒会室。わたくし、生徒会副会長を務めていますの」
「すごいですね。」お面を被った男の子が素直に賞賛した。
伊都は鼻高々だったが、その時、
「副会長・・・・大変です。」
女生徒が泣きそうな顔で訴えた。
◇
退屈な式典もおわり、会場が和やかなムードに包まれていた。
「三十分、皆で歌でも歌ってつなぐのよ」
生徒会長が困りきった顔で伊都達に言った。
練習もしていないのに、歌えるわけがなかった。
「ギターありませんか」ぼそっとお面の男の子が言った。
「ギターなら、ステージの後ろで準備ができているけど・・・
あなたが引くの?」
生徒会長がいぶかし気に聞いた。
「歌ぐらい歌えます」
「そう、芸人さんだものね。でも、その制服やばいわよ。有名だから。
偽物だとわかったら問題になるから」
「僕は、そこの生徒です。芸人ではありません」
お面の男の子は、むっとしたように言った、顔はわからなかったが。
「僕は、お助けマンです。只今仮契約中・・・」
彼は、胸を張った。お面はダサかったが、妙に恰好がよかった。
生徒会長まで、背の高い抜群のスタイルの彼に見惚れていた。
みんな困っていて助けてもらいたかったのだ。
「とにかく、ダンスパーティーまでは彼で、つなげるわよ!」
伊都が皆に指示した。
「大丈夫です。わたし信じてます。ホールで見ていますね」
神様は、何があっても彼ならできると思っていた。




