第八話 狼の群れ戦
冷菓は頭をフル回転させる。
(ここでもし私が知らんぷりでもしたら、せっかく会えた第一村人を逃すことになる。村人っていうか冒険者っぽけど。しかも目覚めが悪い!)
1人の女冒険者は自分の仲間を抱え膝をつき、残り2人の冒険者は、男冒険者が剣を構え威嚇、更にすぐ後ろに杖を構えた女冒険者がいる。冒険者の後ろに4匹、前に3匹の狼。更に前にボスと思われる狼がいる。
すると女冒険者が詠唱を始める。
「風よ、我が声に応えよ!」
杖の先端に緑色の光が集る。
「集え!巡れ!そして切り刻め!ウィンドカッター!!」
次の瞬間、杖の先端から風の刃が複数飛び出す。
だが狼たちはそれを躱し、再び同じ位置に戻る。
「くっ当たらない.....」
女冒険者は杖を支えにしながら、苦しそうによろめく。
「うっ、魔力が、」
「おい!大丈夫か!くっ」
男冒険者が仲間の安否を確認しようと意識を後ろの方に渡した瞬間狼が襲ってきた。
(あの狼たち連携してる?!)
外から見た冷菓には、狼が誰かに統率されていると感じた。
(統率してるのは絶対あのデカい狼だけど、あのデカい狼に勝てるわけ無い...)
冷菓は握っていたナイフをさらに強い力で握る。
(助けたい。けど私がここで飛び出したところで返り討ちに会うのがオチだしな....ちょっとでも隙さえあれば....)
するとその時強風が吹き荒れ、狼たちは目を細める。
「グルルル.....」
周囲は砂埃や木の葉が舞い、視界が一瞬遮られる。
冷菓は考えるより先に体が動いていた。
ナイフを前に突き出し狼めがけて突撃していく。
「てりゃああああ!!!」
すると両者予想外の展開により一瞬動きを止める。
(うわああ!私なにしてんの?!どうにでもなれ!!)
冷菓はまず手前にいた狼にナイフを突き刺し、仕留める。
それを見逃さなかった男冒険者は後方にいる狼の方へと突っ込み、
「チャンス!!おらあああ!!」
「グル?!」
一振りで2匹を真っ二つに切り裂いた。
しかし、別の狼が男冒険者へ襲いかかった。
「やらせない!」
杖を持った女冒険者は準備していたウィンドカッターを発動させる。
「ウィンドカッター!」
魔法は襲いかかった狼に直撃、真っ二つに割れた。
だが、残り三匹の狼が冷菓に襲いかかっていた。
「えっ、ちょっ」
(あ、やばっ!これ無理、)
3匹が一瞬で距離を詰める。
冷菓は目をつぶり、死を覚悟した。
その瞬間
パーン!パパーン!!
そこへ膝をついていた女冒険者が石礫を手から発射させる。
「「「グルアアア!!」」」
3匹全てに命中させ、狼たちは怯んだ。
冷菓が目を開けると、先程膝をついていた冒険者がいた。
震える腕を伸ばし、手のひらを狼に向けている。
「大丈夫?!ゲホッゲホッ!」
女冒険者は呼吸を荒げながらも冷菓の安否を確認する。
「あ、ありがとうございます!」
冷菓が感謝を述べると女冒険者は笑った。
「お互い様でしょ。」
冷菓は笑い返し狼の方を見る。
デカい狼はなぜか動かない。
(なんであのデカい狼は動かないんだろう?)
疑問に思いつつも、先に狼を仕留めることを優先する。まず最初に一番よろけている狼のところへ走る。
「くらえ!」
ドシュッ
「グルああ!」
狼は動けず冷菓に刺された。冷菓は次の狼の方に意識を向けるが、
「あれ?」
すでに男冒険者が狼の前に立っていた。
「こいつは俺がやる!」
男冒険者が剣を振るう。
「グルァッ!」
狼は後ろへ飛び退こうとするが、男冒険者の一撃を受けて地面へ転がった。
「よし!」
(は、速っ……。)
冷菓は思わず男冒険者を見つめる。
(この人、普通に強くない?)
そのとき――
「グルルル……。」
低い唸り声が響いた。冷菓の表情が固まる。
冒険者たちも一斉に動きを止めた。
「あのデカい狼....」
冷菓は言葉を漏らした。
すると男冒険者は冷菓に対し叫んだ。
「そいつはグレイト・フォレストウルフだ!フォレストウルフの上位種だ!動きが桁違いに早いから気をつけろ!」
「は、はい!!」
勢いにビビり、思わず返事をしてしまった。
膝をついた女冒険者は怪我したもう一人の男冒険者の手当をしている。
「お願い、死なないで.....」
グレイト・フォレストウルフは突然いきなりデカい咆哮を上げた。
「ワオーーン!!!!」
森全体を震わすような咆哮が響き渡る。
すると冷菓の体に異変が起こる。
全身が震え、足に力が入らない。
(な、なにこれ、震えが止まらない!)
体は動かず、心臓の鼓動が早くなる。
呼吸も浅くなり、体が思うように動かない。
「こ、こいつはスタンハウル、殺気で相手の動きを止める技だ、」
男冒険者は剣を握りながら、苦しそうに声を絞り出す。
「そんなのあり?!」
冷菓は震える手でナイフを握る。
だが、手に力が殆ど入らない。
(怖い、逃げたい、けど動けない、苦しい。やばい、これ詰んだ?!)
冷菓は心のなかで焦っている。すると手当をしていた女冒険者が提案してきた。
「わ、私が今から皆に解呪魔法をかけるわ。ガインはその瞬間私とレインを抱えて逃げれる?」
男冒険者の名はガインと言うらしい。ガインは頷く。
「わ、わかった。だがすぐに追いつかれるぞ。どうする気だ、」
「皆を抱えた瞬間、あいつに足が遅くなるデバフをかけるわ。いい?」
ガインは全員の顔を頑張って確認する。
「「「わかった」」」
女冒険者は詠唱を始めた。
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