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仮想現実~プレイヤーとして呼ばれた少女は仮初の世界で無双する。  作者: 冷崎
第一章 鮮烈な少女

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第24話 首無しデュラハン

幻覚かと思った。いや、幻覚だと思いたかった。

薄暗い松明が少しずつその姿を照らしていく。

馬の蹄が石造りの床を叩く音が、広い通路に響き渡る。

そして、その背に乗っている存在が完全に姿を現した。

黒く光る漆黒の鎧。手に握っている黒い大剣。剣からは禍々しいほどドス黒い魔力が放出されていた。


「.....なに、あれ......」


冷菓の声が震える。

大剣から放たれているもの。それは、ただの魔力ではなかった。

見るだけで嫌な予感を覚えるほど濃密な魔力が、剣の周囲からゆっくりと漏れ出している。

まるで黒い霧のような魔力が、刀身から周囲へ広がっていく。

冷菓は無意識に一歩後ろへ下がった。


「.....っ」


足が震える。さっきまで自分を囲んでいたゾンビたちが、いつの間にか攻撃をやめていた。

誰も冷菓を見ていない。全員が、目の前に現れた黒い騎士を見ている。


「「「「グラアアア!!!」」」」


大量のゾンビが一斉にデュラハンに襲いかかる。

その瞬間、ゾンビの上半身が消えた。


「えっ.........」


理由(わけ)がわからなかった。瞬きをした瞬間音もなく消えたのだ。

だが周りを見てみるとその残骸が残っていた。どうやら魔物が魔物を倒すと残骸が残るらしく、死体は消えない。壁は腐敗臭のするゾンビの肉片がこれでもかというほど付いていた。


(え??いつ攻撃したの??どうやって??ただ剣を振っただけ??)

デュラハンは剣を振った後の構えを取っていた。

冷菓はデュラハンから目を離せない。周囲にいたゾンビたちはデュラハンに怯え一目散に逃げていった。

デュラハンはこちらを見下ろしている。


(こいつがデュラハン....)


日記に書かれていた。

『遭遇してしまった。デュラハンだ。ゾンビホースに乗った首無しデュラハン。勝てるわけがない。』

あの冒険者が、恐怖のあまり日記に残した存在。


「勝てるわけ.......無いじゃん......」


冷菓の口から、自然と言葉が漏れた。さっきまで大量のゾンビに囲まれていた。

それだけでも、十分に危険だった。だが死ぬ気で動けば生き残れる可能性はあった。

だがこいつは違う。1種の災害にあったと錯覚するほどの恐怖。


(私、あれと戦うの.....)


冷菓の背中を、冷たい汗が伝う。そして冷菓の本能が叫んでいる。


『あれと戦ってはいけない』


と。戦えば、何かが取り返しのつかないことになる。デュラハンが、ゆっくりとこちらへ向き直った。


「ひっ!」

(に、逃げなきゃ!!)


冷菓は必死に体を動かす。強張った体を叩き動かす。

その間デュラハンはゆっくりと剣を構える。

死のカウントダウンが始まった気がした。


(10,9,8.....)


黒い魔力がデュラハンの剣に収束していく。自分の体が剣に吸い込まれてしまうんじゃないかというほど。


(あの曲がり角を曲がれば!!)


冷菓は必死に地面を這い曲がり角を目指す。


(7,6,5,4.....)


「もう....少し!!!」


冷菓は壁に手を伸ばし自身の身体を角へ滑り込ませる。


(3,2,1....)


(0)


その瞬間デュラハンの剣が静かに振り下ろされた。

地面に着弾したと同時に地面はえぐられ、衝撃波を発生させる。通路のはるかと多くまで届いており、その長さ約400m。


「ヒエ......」


思わず声が漏れた。あんなのに当たれば冷菓の体は一溜まりもない。

攻撃が止み曲がり角からチラリと覗く。デュラハンは冷菓を仕留めたと思ったのか振り返り馬を走らせ、去っていった。


「た、助かったアアア!!!!」


冷菓は地面に倒れ込み安堵の表情を浮かべる。


「ほんとに駄目かと思った......」


冷菓の目からは涙が流れていた。だがダンジョンはそんなのを待ってはくれない。

通路奥から先程逃げたゾンビ数体が戻ってきた。


「今度はやられないぞ.....」


冷菓は長剣を構え戦う。


と、思ったが逃げた。

ゾンビたちは急いで冷菓を追う。


(真正面から戦うのが駄目なんだ。なら.....)


冷菓は曲がり角を曲がる。ゾンビ達もそれを追いかけ曲がろうとした次の瞬間、


ザシュッ


冷菓が角から飛び出し、飛び出し際にゾンビにダメージを入れていた。


「ぐお!!」


「まともに戦うって考えが駄目だ。どんな姑息な手も使う!これに限る!!」


冷菓は自信満々に剣を掲げる。今の冷菓は、最初にこのダンジョンへ入った頃とは明らかに違っている。

強敵を前にすれば逃げ、地形を利用し、相手の隙を狙う。

そして、生き残るためなら戦い方にこだわらない。

それは卑怯なのではない。

この場所で生き残るために、冷菓が少しずつ身につけ始めた、

「生存戦略」だった。


「さあ!かかってこーい!!」


冷菓はそう言い切ると、すぐさまゾンビとの距離を取った。そしてゾンビが追ってくる。

その後ろから、さらに数体がこちらへ向かってきている。


「うわ、まだいる!」


冷菓は走りながら、ちらりと後ろを見る。

(数が多すぎる! しかもこいつら、さっきから全然疲れてないじゃん!)


身体能力が上がり足の早さも早くなっているはずなのに追ってくる。

(このままじゃ、また囲まれる.......)


冷菓は前方を見る。すると、少し先には別の曲がり角があった。

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