第21話 ある冒険者の日記
冷菓が棍棒を持ったスケルトンのコアを砕いた瞬間。スケルトンは崩れた。
ドロップ品として小瓶が出てきた。
「なにこれ?」
冷菓が小瓶を拾うともう一体のスケルトンが殴ってきた。
「痛っ、くない....なにすんの!!」
冷菓はそのまま剣を振り抜きコアを砕く。そのまま消滅したが。
何も出てこなかった。
「ふう、とりあえず小瓶はポッケに入れてっと。」
ドロップした小瓶をポッケに入れ、前を向く。
正面には突っ立っているスケルトンがいる。皮鎧を着ておりその上からローブを着ている。
「突然襲わないよね?!」
冷菓は剣を構えながら1歩、1歩近づく。
そして剣の射程圏内に入った瞬間剣を振り抜く。
「てい!」
スケルトンの胴体は服ごと引き裂かれ、床に倒れる。
だが骨が消滅せず、疑問に思う。すると服の胸ポケットに手帳と羽ペンが入っているのに気がついた。
「なにこれ?」
冷菓はポケットから手帳を取り出し開けてみる。するとそれは日記だった。
10月2日
今日からこのダンジョンの攻略を開始する。準備は万端だ。このダンジョンは通称監獄ダンジョンと言われているらしい。過去に罪人を捕らえるために使われていたらしいが、ある日突然ダンジョン化してしまったらしい。ギルドの資料によれば、出現する魔物はそれほど強くないらしい。中級冒険者の俺だ。大丈夫だろう。俺の妻と娘を待たせてはいけない。早めに帰らなければ。
10月3日
第1層を攻略した。1層目は廃墟のような景色だった。石レンガの壁に、木の根が張っている。昔ここが監獄だったという話も納得できる。出てきたモンスターはスライムや角ウサギとかの低級の魔物だった。
だが油断してはいけない、ここでは常識が通用しない。油断はせず進もうと思う。
10月5日
第4階層を攻略した。ここまで来ても、特に問題はない。このダンジョンはさほど広いわけでもないし魔物も対して強くない。スライム、角ウサギ、それからゴブリン。今のところ、危険らしい危険はなかった。むしろ拍子抜けしている。低級冒険者の練習場にできそうだ。ギルドに提案してみてもいいかもしれない。
10月7日
第6階層を攻略した。
危なかった。ボスの強さがいきなり跳ね上がった。同じダンジョンの魔物とは思えないほどだった。
今でも体が震えている。幸い、大きな怪我にはならなかったが、体の至る所に傷ができてしまった。
問題なのは、なぜ急に強くなったのかということだ。第1階層から第5階層までは、ほとんど危険がなかった。それなのに第6階層だけ、まるで別のダンジョンだった。この先は気をつけた方がいい。
10月8日
今日は休むことにした。昨日の戦いで思った以上に体力を消耗した。このダンジョンの最深部には何があるのだろうか。果たして俺はたどり着けるのだろうか。正直不安だ。
10月10日
嫌な夢を見た。何もない暗い場所に、一人で立っている夢だった。遠くから誰かが俺の名前を呼んでいた。声のする方へ歩いていくと、そこにはーー、いや。夢の話を書くのはやめよう。疲れているだけだ。明日は第7階層へ入る。
10月13日
危ない橋を渡りすぎて、日記を書くのを忘れてしまった。俺は今、第7階層にいる。ここは今までの階層とは全く違う。壁も床も、古い監獄のような造りになっている。牢屋がいくつも並んでいる。中には何もない牢屋もあれば、古い武器や防具が落ちている牢屋もある。そしてさっきから変な音が聞こえる。大型の魔物が徘徊するような音だ。警戒を高めないといけない。
10月14日
まずいかもしれない。閉じ込められた。7階層を攻略し、8階層に入った瞬間退路を絶たれてしまった。
このまま攻略するか、死ぬかになってしまった。もう逃げられない。
10月17日
まだ攻略できない。周囲にはアンデッドモンスターが大量に徘徊している。
迂闊に行動できない。大型の魔物が徘徊するような音が近づいてくる。この音は下か?周囲の景色も変わらず古い監獄になっている。変わったことといえば光の量が徐々に少なくなっているということだろう。
10月19日
ようやく8階層を攻略した。ボスは、ボーンキマイラと言われるアンデットだった。複数の生き物の骨が結合された気味の悪いアンデッドであり攻撃パターンが個体によって変わるので苦労した。
少し休もうと思う。
10月20日
何なんだここは。頭がおかしくなる。9階層はモンスターの大群に、デバフを扱うチャイルド・リッチまでいる。さらに視界が悪く、通路がやけに広い。戦闘が難しくなってきた。体が重い。疲労が溜まってきたのだろう。
10月22日
遭遇してしまった。デュラハンだ。ゾンビホースに乗った首無しデュラハン。勝てるわけがない。
もしこの先このレベルの魔物がいるのなら、俺は死ぬだろう。
クソっ!この依頼を受けるんじゃなかった。
10月23日
無事デュラハンに遭遇すること無く階層を突破できた。ボス部屋にボスがいなかった。もしかしたらデュラハンは徘徊型ボスモンスターだったのかもしれない。少しホッとした。あんなやつと真正面から戦うなんて無理だ。あいつが帰ってくる前に次の階層へと下りる。
10月24日
暗すぎる。何百メートル歩いたところに松明が1本あるかないかぐらいだ。
だが不気味な事にモンスターの数が少ない。モンスターもスケルトンだけだ。不気味な階層だ。
10月25日
理解した。この階層は文字どうり監獄だ。上の階層には大量のモンスターとデュラハン。まるでここから出す気がないみたいだ。今まで、このダンジョンが監獄ダンジョンと呼ばれている理由を深く考えていなかった。昔ここが罪人を捕らえるための場所だったから。ただ、それだけだと思っていた。
違う。
このダンジョンそのものが、まるで誰かを閉じ込めるために作られている。先へ進めば、何が待っているか分からない。そして、この階層には無数の牢獄がある。昔の囚人たちは、ここに閉じ込められていたのだろうか。
10月26日
詰んだ。次の階層へ行くには鍵が必要みたいだ。だがその鍵はあのデュラハンが持っている。
デュラハンの鎧にはめ込まれていた。間違いない。だが、気づいたところでもう遅い。俺にはどうすることもできない。
10月30日
食料と水が尽きた。他に出口がないか必死に探したが駄目だった。
俺はここで死ぬ。だが次ここに誰かが来たときのために情報をここに書き記そうと決めた。
マッピングした地図はこの手帳の裏側に描かれている。役立ててほしい。
この日記が最後になるかもしれない。キャシー、レイすまない。
駄目な父親で。
すまない。
ここで日記が終わっており、冷菓は手帳を閉じた。
ブックマーク、評価お願いします!




