第18話 運命の分かれ道
次の日冷菓はスキルのことを聞こうとギルドを目指し走っていた。
「はあ、はあ、」
(昨日の職業によるステータス補正のおかげで走るの早くなった気がする。)
冷菓はようやくステータスが上がってる実感をつかむ。
走っていると、屋台のおっちゃんが話しかけてきた。
「よお!レイカちゃん!朝から急いでどうしたんだい?」
冷菓は少し立ち止まる。
「今からギルドへ少し調べ物をしに行くんです!」
「ほお、そうかい。勤勉だな!まあ、頑張れよ!」
おっちゃんは笑いながら手を振る。
「はい! ありがとうございます!」
冷菓も手を振り返す。
そして再びギルドへ向かって走り出した。冷菓の足取りは、昨日よりも軽かった。
ギルドまで後少しという所、路地裏で誰かが争っているのを見かけた。
大通りから少し外れた路地裏。そこから、何か騒がしい声が聞こえてきた。街の喧騒とは明らかに違う。
誰かが言い争っているような声。冷菓は眉をひそめる。
「ちょっとこっちに来い!!」
「いやあ!」
その大男は女の子の髪を引っ張っており、無理やり連れて行こうとしている。
「た、助けなきゃ!」
考えるより先に、冷菓は路地裏へ駆け込んだ。冷菓は拳を握りしめ男に向かって右ストレートを決める。
「その子から離れて!」
「ガっ!!」
冷菓の拳が男に当たり、男は大きくよろめく。男は意識を失い後ろに倒れ込んだ。
そして冷菓は女の子に駆け寄る。オレンジ色の髪の毛をした女の子だ。
少女は怯えたような表情を浮かべていた。
「あなた大丈夫?」
手を差し出した瞬間、突然その表情が大きく変わった。女の子が叫んだ。
「お姉ちゃん!危ない!!!!」
「え......」
冷菓には、一瞬何を言われたのか理解できなかった。
少女の視線が、冷菓の背後へ向いている。
冷菓もつられて振り返ろうとする。
ガンッ
その瞬間冷菓の頭からものすごい激痛が走った。それと同時に冷菓は床に倒れ込み、意識が急速に薄れていく。
(やばっ、しくじった....)
冷菓は意識が無くなる前にせめて犯人の顔だけでもと、横目で顔を見る。だがそいつは仮面を被っていた。
黒いローブに黒い骸骨の面不気味な声だった。まるで声を何かで変質させているような。そんな感じがした。そして仮面の奥からこちらを見つめる視線だけが、不気味なほど冷たく感じられた。
(覚え.....て.......おか........ないと.......)
しかし、限界だった。視界が暗くなっていく。少女の声も、遠く離れていく。
「お姉ちゃん!きゃあああ!!やめて!」
その声を最後に冷菓の意識は闇の中に落ちた。
これを最後にこの街で冷菓の姿を見たものはいない。
どれほどの時間が経ったのだろう。
1日?数日?もしかすると1週間?
それほど長い時間眠りについていた気がする。
夢を見ていたような気もする。けれど、どんな夢だったのかは思い出せない。
ただ、暗い。
何も見えない。
何も聞こえない。
自分がどこにいるのかも分からない、そんな感覚だけが残っていた。
身体を動かそうとしても、まるで自分の身体ではないかのように重い。
手を動かそうとしているのか、それとも動かそうと思っているだけなのか、それすら曖昧だった。
(ここは何処なの?目の前が暗すぎて何も見えない.....)
目を塞がれているわけでも、失明したわけでもない。
ただ何も見えない。
目を開けているはずなのに、視界には黒い闇しか広がっていなかった。
まるで、世界そのものが暗闇に包まれてしまったかのようだった。
(私今どういう状況なんだろう...もしかして死んだ?!いや、なら生き返るはずだよね?残機
2残ってたし。)
この世界に来てから知った、自分だけに与えられた奇妙な仕組み。
冷菓には最初、三つの「残機」があった。そのうち一つは、デスフォレストで失っている。
つまり、残っているのは二つ。もし今回の出来事で命を落としていたのなら、何らかの形で再び目を覚ますはずだ。
すると徐々に目が暗闇に慣れてくる。
目の前には鉄格子が見え、床は石レンガでできていた。
「.........鉄格子?」
冷菓はゆっくりと立ち上がる。まだ身体には少し力が入りにくい。
それでも、壁に手をつきながら何とか立ち上がった。
そして鉄格子へ近づいていく。
「なにこれ?」
太い鉄の棒が一定の間隔で並んでいる。
その向こう側にも、同じような暗い空間が続いている。
冷菓は牢屋だと認識する。そしてすぐさま扉を探すが何処にも見当たらない。
まるで最初から、誰かを閉じ込めるためだけに作られた空間のようだった。
「なに.....この牢屋.....私どうやって入ってきたの.....痛っ」
突然頭に激痛が走る。手で頭を触れてみると。
ベチャ
手が赤色に染まった。謎の男に殴られたときの怪我だ。
だが今は傷の手当ができない。
冷菓は【ストック】の中になにか無いか確認する。
持ち物リスト
・短剣
・水2L
・街の地図
・お金
ただこれだけだった。地球から持ってきたカバン等は宿に置きっぱである。
「これだけか.....」
冷菓はため息を付いた。
冷菓は諦めた様に壁に寄りかかり座り込んだ。
石造りの壁は冷たく、服越しでもその冷気が伝わってくる。
「どうしよう....」
入口のない牢屋、堅牢な床と壁、使える荷物がろくにない。
絶望するには十分すぎた。
「もし....私が.....このナイフで自殺したら、生き返る場所は牢屋の外になるのかな.....」
だがこの考えはすぐに否定される。
(待って。そんなことをして、本当に牢屋の外に戻れる保証なんてないじゃん)
残機があるからといって、どこへ戻るのかは分からない。
確かに死ねば元の世界へ一時的に避難できる。
だが、それはただのその場しのぎだ。根本的な解決になっていない。
冷菓は頭を伏せ目を閉じた。
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