第14話 別れ
「そんじゃ、これで俺等のお役目もおしまいかな。」
ガインは頭をかきながらそう告げた。
(あ、そうか、案内だけだったもんな。)
森の中で出会ってから、まだそれほど長い時間は経っていない。
それでも、一緒に危険な森を抜けてきたせいか、不思議と名残惜しさを感じる。
「短い間だったけどありがとうございました!」
冷菓は深々と頭を下げる。
「良いのよ。またいつか一緒に冒険しましょ。」
エミリーが笑顔で手を振る。
「あの時は本当に助かった。ありがとう。」
ミナも優しく声をかける。
「またいつか!」
レインも手を振る。
「みなさんも気をつけて!」
(やっぱり別れとなると、寂しいな。)
こうしてガイン、エミリー、レイン、ミナ、4人の冒険者はギルドを去っていった。
冷菓は人混みの中4人の後ろ姿が消えるまで見送った。
(行っちゃった、)
冷菓はしみじみとした顔をしながら人混みを見続けた。
「よし!それじゃ、せっかくギルドに入った事だし依頼でも受けてみようかな。時間もまだお昼ごろだし。」
冷菓は依頼板の方へ歩きなんの依頼があるか観察する。
Gランクボード
配達依頼
銀貨15枚
ドブさらい
銀貨30枚
ホーンラビットの討伐
1体につき銀貨20枚
薬草採取
採取した薬草により値段が変わります。
「こんなとこかな?どれも安全そうな依頼しかない。それもそうか、駆け出しだもんな。」
(まあ、あんな死ぬようなこと、二度としたくない。)
「じゃあ、まずは配達依頼にしようかな?」
(足速いし、私)
冷菓は依頼書の中から「配達依頼」と書かれた紙を一枚手に取った。依頼内容は、プリスムの中にある商店から別の店へ荷物を届けるというものだった。
報酬は銀貨15枚。
(うん。これなら簡単そう!)
冷菓は依頼書を持ったまま、受付カウンターへ向かう。受付には、数人の冒険者が並んでいた。
(これが冒険者ギルドの受付かぁ……。)
ゲームや漫画では何度も見た光景だったが、実際に目の前にすると妙に緊張する。自分の番が来るまで、冷菓は周囲を見回していた。
「次の方どうぞ!」
「はい!」
冷菓は元気よく返事をする。
冷菓は配達依頼の紙を渡す。
「配達依頼ですね。地図を持ってくるので少々お待ちください。」
2分後
「おまたせしました。こちら地図と依頼達成時にサインを貰ってきてください。頑張ってください!」
「ありがとうございます!」
冷菓は地図と紙を受け取りカバンの中に入れる。
ギルドの扉を開け地図を見る。
「これまずどっちだろまずここをこう行って、ああ行って......」
冷菓は地図を見ながら小走りで走り始めた。周りには屋台が並んでおり、様々ないい匂いがする。
「やばい、めっちゃお腹空いてきた。」
冷菓は今お腹が空いているが一文無しである。
走っていると目的地らしき建物が見えた。その店はこじんまりとしたボロい店だった。
「え、本当にここ?」
冷菓は場所があっているのか3度見する。
「合ってるよね?」
冷菓は店の扉を開ける。すると店のカウンターには怪しげな格好をしたおばさんがいた。見た目80代ぐらいの老人であり、魔女のような見た目をしている。
「すいませ〜ん。配達依頼できたんですけど、ここで合ってますか?」
「ケッケッケッ、来たか。意外と早かったねえ、合ってるよ。ほれ、これが依頼した品さ。お願いね。」
「わかりました。」
冷菓は荷物を受け取り店から出ていく。再度小走りで荷物を届けに行く。
冷菓は荷物を受け取り店から出ていく。
「よし、次はここに届ければいいんだよね。」
冷菓はカバンから地図を取り出し、目的地を確認する。
(えーっと……この通りをまっすぐ行って、二つ目の角を右。それから……。)
地図と周囲の景色を見比べながら、冷菓は再び小走りで進んでいく。
すると、
「おお……!」
道の両脇には、先ほどよりも多くの屋台が並んでいた。
焼いた肉の香ばしい匂いや、甘いお菓子の匂い、何かのスープから漂ってくる温かな香り。冷菓の足がぴたりと止まる。
(お腹空いた〜。)
ぐぅ~~~~。
冷菓は無言でお腹を押さえる。
(まずい。これはかなりまずい。)
異世界に来てからまともに食事をしていない。昨日は森の中でみんなとスープを食べたものの、今日は朝食を食べただけ。
「財布、空っぽ。トホホ、」
冷菓は遠い目をした。
(銀貨十五枚……。配達が終わればもらえる。)
屋台を横目に見ながら、冷菓は自分に言い聞かせる。
(今は我慢! 依頼を終わらせればお金が手に入る!早くしないと力が出なくなる。かの有名なアンパンヒーロみたいに。)
「……よし!」
気合いを入れ直し、再び走り出す。
しばらくすると、地図に書かれていた場所が見えてきた。
「ここかな?」
そこには、木造の大きな建物が建っていた。入口には小さな看板が掛けられており、冷菓は看板と依頼書を交互に確認する。
「うん。たぶんここ!」
冷菓は扉を開ける。
カランカラン――。
店内に小さな鐘の音が響いた。
「いらっしゃいませ……って、あなたは?」
カウンターの奥から、若い男性が顔を出す。
「あ、すみません! 配達依頼の荷物を持ってきました!」
冷菓は荷物を両手で持ち上げる。
「配達?」
男性は少し驚いた顔をしたあと、冷菓の持っている依頼書を確認する。
「……ああ、これか。確かに俺が頼んだものだ。」
「よかった!」
冷菓はほっと胸を撫で下ろす。男性は荷物を受け取ると、中身を確認する。
「うん、間違いない。」
そして依頼書に何かを書き込んだ。
「これでいいかな?」
「はい!」
冷菓は依頼書を受け取る。
(よし! これで依頼達成!)
冷菓は満面の笑みを浮かべる。
「ありがとうございました!」
「こちらこそ。……それにしても、随分早かったな。」
「そうですか?」
「普通ならもう少しかかると思うんだが。」
「まあ、ちょっと急いでたので!」
(お腹が空いてるからね!)
「じゃあ、私はこれで!」
「ああ。気をつけてな。」
「はい!」
冷菓は店を出る。
「よっしゃあああ!!」
思わず小さくガッツポーズをする。だが、まだ終わりではない。
(あとはギルドに戻って、このサインを渡せば報酬がもらえる!)
冷菓は勢いよく振り返り、屋台の方を見る。そこから漂ってくる食欲を刺激する匂い。
「ご飯……!」
冷菓の目が輝く。
(銀貨十五枚を手に入れたら、まず何か食べよう。)
冷菓はギルドへ向かって駆け出した。
「はやく報酬もらわないと!!」
冷菓の初めての依頼はなんとも面白いことになった。
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