第7話 新たな生活 学園の始まり
二日後の昼。
俺は待ち合わせ場所へ向かって自然と早足になっていた。
合格発表、その言葉が頭を埋めつくし落ち着かない。
思ったより早く着くと、見覚えのある大きな体が見えた。
「よお早いな」
「グルーこそ。......やっぱり緊張してる?」
「そりゃお互い様だろ」
そう言い笑い合う。
グルーは大柄で顔も怖いがフレンドリーで優しいやつだ。
「じゃ、見に行こうぜ」
「うん、行こう」
今度は二人とも緊張で足取りが重くなっていた。
掲示板の前には人だかりができている。
俺達は祈るような気持ちで、貼られた番号を追っていく。
「七四、七四」
グルーは何度も呟いている。
俺も番号に目を通すと七三と書いていた。
その下には七四もハッキリと見える。
「やったなグルー! 二人とも合格だ!」
「まあ、俺が合格するのは分かってたけどな!」
二人で喜びあい。
その後はお昼ご飯を食べに行った。
何故か俺のおごりで、グルーは俺の倍食べていた。
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「どうでしたか皆さん。今回の受験者は」
ピンクの短髪の男が全員の顔を見ながら言う。
「今回は魔物と戦おうとする者が少なかったな! あれでは立派な兵士になれんぞ!」
白髪の大柄がそう叫ぶ。
「ヴィブラムの幻影はリアルだからね、しょうがないですよ。ヴィブラムは気になった受験者いないの?」
「七三番、かな……」
「ああ、確かバル君だったかな? 攻撃試験も学力試験も上位の子だね。」
手元の書類を見ながら言う。
「バルって言うんだ……あの子」
紫の長髪で丸眼鏡をかけた女はそう呟く。
「バル君……幻影に気づいてた」
「まさか! あの歳でかい?」
「多分……本物と戦ったことがあるんだと思うよ」
「ホブゴブリンやダードウルフもかい?」
「うん......」
ヴィブラムは肯定するように顔を動かす。
「なかなか素晴らしい子がいるのだな! 是非兵士になって欲しいものだ!」
こうして、最後の試験を見ていた者たちは受験者の話に花を咲かせる。
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十日後
俺とグルーは大きな荷物を抱え学園の前まで来ていた。
入学の日だ。
今日から俺たちはこの学園の寮で暮らす。
「舐めたやつがいたら一緒に殴ろうぜ」
グルーが物騒なことを言っている。
やはり見た目どおり怖いのかもしれない。
「まあ、正当防衛ならね」
案内されたのは二人の相部屋だった。
二段ベッドにテーブルと椅子など。
基本的な家具は揃っていた。
「思ったより広いじゃん! しかもバルと相部屋かよ!」
「受験番号順なのかもね。グルーと一緒で良かったよ」
俺たちは荷物を下ろし、上のベッドか下のベッドか決めるため腕相撲で勝負をした。
「俺の勝ち! 俺が上な!」
「グルー強いな。俺も結構鍛えてるのになあ」
「俺だって鍛えてるぜ!」
そんな事を喋りながら教室まで歩く。
クラスは三つに分かれていて、それぞれにあった授業をするらしい。
俺とグルーは戦闘能力の使い方を学ぶ、クラス一。
回復などの能力はクラス二。
物作りの能力はクラス三。
クラス一と二は一緒に授業や訓練をする事もあるみたいだ。
教室まで来た俺達はドアを開け中へ入る。
そこには七十人ほど集まっていた。
高そうな服に身をつつむ者。
眠りこけている者。
武器の手入れをしている者もいる。
これがみんな戦闘能力を持っていると思うと顔に笑みが浮かぶ。
「なんだ……また男か」
こちらを見ながらそう言う男がいる。
確か長い名前の……
「レギン・へシマ・アヴァディス・キファルメだ! 長い名前ではない!」
どうやら口から出てしまったらしい。
「よろしく、俺はバル」
「名字もないのか? ただのバルとはな」
「バル行こうぜ」
俺はムッときたが、グルーと一緒に空いている席に向かう。
「お貴族様はやなもんだよなー」
「みんな、ああなのかな」
「さぁな。あのレギンとか言うやつがやな奴なのはわかるがな」
レギンは周りに女子を集め話している。
レギンと同じような高級そうな服を着た者もいる。
「お貴族様と女のグループかよ。近づかないようにしようぜ」
「うん、それが良さそうだね」
そうして待っていると教室にピンクの短髪の男が入ってきた。
「全員席に着いて。まずは学園の説明をします」
そうして説明がはじまった。
まず学園には四つの段階があるみたいだ。
一つ星階
二つ星階
三つ星階
四つ星階
まずは一つ星、入学した者はまずはここかららしい。
「一つ星は一番下、一年学び卒業か次の階かを決めます!」
一つ星で卒業しても、兵や冒険者に引く手あまたらしい。
学園に入れるだけで最低限の能力があるからだ。
次が二つ星、卒業せず進級を選ぶと入れる。
「二つ星は卒業するにも、進級にも条件があります。国都にある低級ダンジョンの制覇です!」
二つ星卒業者は兵士になると出世が約束され、冒険者でもほとんどが成功するらしい。
「次が三つ星。卒業条件は上級ダンジョンの十五階踏破です!」
三つ星ともなると、貴族や騎士団からスカウトが来るらしい。
授業でもマナーを学ぶ事になるみたいだ。
「最後が四つ星! 条件は要らないがあまりオススメはしません、卒業条件が試験官の許可だからです」
四つ星は三つ星まで行けば一年で入れるみたいだが。
卒業が難しいみたいだ、ここで何年も卒業出来ないものもいるらしい。
「最後だけ条件が曖昧だな」
グルーがそう呟く、俺も同意だ。
それからも学費や食事の時間など、様々な説明がされた。
俺は忘れないようにメモを取りしまう。
「これで説明は終了です。授業は明日から始めます、遅刻はしないように!」
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俺とグルーは部屋で話をしていた。
「あのさグルー、話したいことがあるんだ」
「なんだ? 改まって?」
「驚かないで欲しいんだけど……」
「はじめまして。私もグルーって呼べばいいかい?」
俺の服の中から出てきたカリーがそう喋る。
「……まあ、喋るトカゲがいても不思議じゃないか」
グルーは最初は驚いてカリーを凝視して固まっていたが。
すぐにそう言っていつもの様子にもどった。
大した男だ、普通もっと驚くと思うんだけどな。
「相部屋だと隠すのは難しいからね。カリーがグルーには喋っても大丈夫だって」
「悪いやつじゃなさそうだからねえ」
「そりゃあどうも」
「まあ、お馬鹿なだけかもしれないけどねえ」
「なんだと!」
こうしてカリーも交えて三人で話をする。
その日は少し遅くまで喋ってしまった。
明日の授業は一体何をするんだろうか。
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バルとグルーが寝静まった頃、部屋で話す者がいた。
「よかったわ。いいお友達が出来たのね」
「少しお馬鹿さんだけどねえ」
バルの母とカリーだ。
母の動物と話す能力は離れていても会話ができる。
カリーがバルについて行った理由だ。
「そろそろ能力が限界だわ。またねカリー」
そう言い話は終わる。
バルがこの事を知るのはずっと後だった。




