第6話 試される資質
ついに試験の当日だ。
体調は万全、疲れは無い。
「早く試験の時間にならないかな……」
「ちょっとバル坊。まだ日も登ってないんだよ、早く起きすぎだよ」
確かに、楽しみで早く起きすぎてしまったかもしれない。
「ごめん起こしちゃった?」
「鱗が荒れるでしょ。まだ寝かせてちょうだい」
そう言いカリーは再び眠りについた。
国都で買った本でもよむか……
日が登り、学園へ向かうとそこは既に人だかりが出来ていた。
学園には試験に合格すれば十歳から入学することができ、二十までは学費は後払いでいい。
試験を待っている人の中には父さんより年上もいた。
素振りをしている人、紙を見ながら何かを呟いている人、黙って座っている人。
俺は黙って地面に座ることにした。
地面に座り集中力を高めていると大きな声が聞こえてきた。
「お待たせしました! 試験希望者はこちらに並んで番号札をつけてもらいます! 願書を提出していない方はまずあちらへ!」
受付の人がそう叫ぶと我先にと並び始める。
俺は後ろの方でいいかな。
「バル様ですね、願書は確認出来ました。こちらの番号を胸につけて広場でお待ちください」
俺は七三番の札を胸につけ、言われた広場に歩き出す。
広場にはカカシのような物が何体も置かれていた。
何をするのか想像ができる。
「そこにあるカカシに好きに攻撃していい! 番号順だ!」
試験官がそう叫び受験者は並ぶ。
革鎧を着たカカシに向かって様々な攻撃が飛ぶ。
火を吹く者、氷漬けにする者、斧で切りつける者。
中には大きくなり踏みつける者もいた。
「色んな能力があるんだな」
知ってはいたがようやくその実感が湧いた。
村ではほとんどの人が作物を育てる能力だったからだ。
「次、七三、七四、七五!」
ようやく番号を呼ばれた。
俺の前に革鎧を着たカカシが立っている。
大人の男ほどの大きさだ。
軽く息を吐き手を伸ばす。
俺の能力、己力投写を腕に使い押した。
「おぉ!」
カカシは吹き飛び壁に激突した。
周りから感心したような声が聞こえる。
だがまだだ、試験に確実に合格するために俺は足元の石を拾いカカシ目掛けて投げた。
メギ!
と音を立てカカシに石が突き刺さる。
「よし!攻撃はもういいぞ!」
試験官からそう言われ、俺は石を捨てる。
隣を見てみると大剣でカカシをめった打ちにしている者がいた。
「よお、お前すごいな。あの石、矢より速かったぜ」
大剣を担いだ赤毛の大柄な男が気さくに話しかけてきた。
「君こそ凄いよ、能力使わないでそれなんて」
「あれバレてる?」
「体が光ってないしね」
そう言うと大柄の男は恥ずかしそうに頬をかく。
能力を使うとその効果がある物は微かに光を放つのは常識だ。
「俺はグガル・イフナイルだ。グルーって呼んでくれ」
そう言い握手を求めてくる。
「俺はバル。よろしく!」
次の試験を待つ間グルーと話をしていると同い年なのがわかった。
「合格出来たら仲良くしようぜ、俺知り合いいなくてよ」
「俺もだよ。田舎から出てきたんだ」
そんな話をしていると、試験官の声が聞こえてきた。
「今から言う番号は私についてこい!では番号を言う──」
俺もグルーも番号を呼ばれ安堵の息をついた。
どうやら次は勉学試験らしい、案内された部屋にはすでに何人も座っていた。
「攻撃出来ない能力の人達かな?」
「それにお貴族様だな、何人か服が豪華な奴らがいるだろ」
独り言だったがグルーがそう返事をした。
「では好きに席につけ!三十分でできる所まで書いてもらう!」
幸い簡単な問題ばかりだった。
勉強を教えてくれた母さんには感謝してもしきれない。
「俺……ぜんぜんダメだったわ。バルは?」
「俺は何とか全部書けたよ。落ち込むことないって、これで合否が決まるわけじゃないんだから」
「そうだといいけどよ……」
試験が終わった俺たちは次の場所に案内されていた。
「次はここでの戦闘だ!誠心誠意、励むように!」
広い中庭でそう言うと試験官は去っていった。
「戦闘って相手は?」
受験生たちがざわつき始めた時、一人の受験者が声を上げる。
「きゃあ!ゴブリンよ!」
声の方向を見る。
確かにゴブリンが何体も歩いて来ていた。
「戦闘ってあいつらとかよ」
そう笑っていた受験者は、ゴブリンの後ろの影に気づき言葉を失う。
「ホブゴブリンだ!」
「ダードウルフもいるぞ! なんだよこれ試験の域を超えてるだろ!」
次々湧いてくる魔物に、叫ぶ者、怯える者、武器を構える者。
受験者は様々な反応を示す。
俺は違和感を覚えた。
魔物を見据えつつ視線を周囲に走らせる。
(試験官がどこにもいない。それにこの魔物どこか……)
「君たち、もう大丈夫だ! このレギン・へシマ・アヴァディス・キファルメが魔物と戦おう!」
同い年くらいだろうか。
高そうな服を着た金髪のオールバックの男が前に出る。
すると女性の黄色い声が響いた。
有名人なのだろうか?
「戦えない奴は後ろに下がれ!」
グルーが大剣を構えている。
俺も剣を握りしめ前に出る。
戦えない者を下がらせ戦える者は前に出て、魔物と戦おうとした時。
全ての魔物が煙のように消え去った。
(やっぱりか。最初から殺気が薄かった)
「はい、そこまで! 武器を収めてください」
何事もなかったかのように試験官がメモを片手に現れた。
「......え?」
「これで全試験は終了です。 二日後に合格発表を行いますので、掲示板を確認しに来るように」
唖然となり誰もが喋れない。
「どうしました?試験は終了です、解散してください」
試験官の声でようやく騒がしくなる。
「な……なんだったんだ?」
「さぁ、俺にもわからない」
おそらくは、土壇場での判断と勇気を見られていたのだろうか。
俺はグルーと二日後に待ち合わせをし、別れた。
宿に戻りベッドに倒れ込む。
二日後。
俺の人生が決まる日だ。




