第5話 国都の空
目の前に大きな壁が迫ってくる。
国都の城壁だ。
「おお! あれが国都かすごいな」
俺は御者台で驚愕の声を出す。
小太りに代わって手綱を握っている。
国都が見えてくると、捕まるのが嫌になった小太りが逃げようとしたのだ。
今は縛られ馬車の床で転がっている。
国都の門の前には人が並んでいた。
あそこで身分を確かめたり、目的を聞いたりするのだろう。
俺はその並びの横を通り、門番の兵に話しかける。
「盗賊を捕まえたんだが、このまま列に並べばいいのか? 」
「何、盗賊だと?」
兵士は幌の中を除き、拘束されている盗賊を確認した。
「少しここで待っていろ。連絡をしてくる」
そう言い横の小さな扉から中へ入って行った。
少しすると何人かの兵がやって来て、俺たちを門の隣にある部屋に連れて行った。
盗賊は別部屋みたいだ。
その部屋で更に待たされ、少し眠気が出てきた頃。
ドアが開き男が入ってきた。
「いやあ、すまんすまん! 待たせたな!」
爆音のような声。
短く刈り込まれた白髪に、鍛え抜かれた巨漢だ。
男は部屋を見回すと真っ直ぐに俺の前で足を止めた。
「お前が盗賊を倒したのか! 小さいのにやるじゃないか!」
「ど……どうも。」
「そう緊張せんでもよい! 手配されていた盗賊だと確認出来た! 簡単な質疑に答えたら街へ入ってよいぞ!」
その言葉に俺たちは安堵した。
いつまでもここで待たされるのではと心配していたからだ。
「で! 盗賊は何人でどこで戦ったのだ?」
「ここから五十キロくらいかな、そこに死体が三つあるはずです」
「ほう! 一人で七人と戦って四人目も生け捕りとは素晴らしいな!」
「小太りは戦ってないから六人です、それに危なかった」
「それでも素晴らしい事には変わりない! もしや学園の生徒か?」
「いえ、ここには学園の試験を受けに来たんです」
「まだ生徒ではなかったか! なら卒業したらここの兵士になるが良い! 一年勤めれば国が学費を免除してくれるぞ!」
「......考えておきます」
その後もいくつか質問が続き、ほかの三人の質疑も終わりようやく街へ入ることが出来た。
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石造りの高い建物。
屋台が様々な匂いを漂わせている。
祭りの時のような人だかり。
カラフルな服を着ている者もいれば、鎧を着た者もいる。
村では見かけない獣人も歩いている。
もう日も沈むのに街中は魔法灯で明るく照らされていた。
「ここが国都ソブリン・サマナか! すごい人だかりだ! 」
「ちょっとバル坊、田舎者丸出しじゃないかこっちが恥ずかしいからやめておくれ」
辺りをキョロキョロと見回す俺を通行人が少し笑って見ていた。
俺は急に恥ずかしくなり俯く。
「えっと、何からすればいいかな? 」
「まずは寝床だねえ、その後は屋台だよ」
「それカリーが食べたいだけじゃ」
「学園へ行くのは明日でもいいんだ、今日は食べて休むのが一番だよ」
「確かにそれもそうか」
俺は納得しまずは安い宿を探す。
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翌日。
起きた俺は国都にあるという学園を探す。
「えっと確か……」
「そこを曲がって左だよお馬鹿」
人に聞いた学園までの道を辿ると、大きな建物を見つける。
門には王立サマナ能力学園と書いていた。
俺は気分が高揚する、ここで学び仲間と共に修行するのかと。
まじまじと見ていた俺に誰かが声をかける。
「君......学園に何か用?」
振り返ると、そこには腰まで届く紫色の髪をなびかせた女性が立っていた。
知的な丸眼鏡の奥で、鋭い瞳が俺を観察している。
「あの、入学試験を受けたいのですが......」
「入学希望者ですか......試験は三日後よ。それまでに願書を提出するのをおすすめするわ」
「願書ですか?」
「なにも知らないのね......字は書ける? ついて来なさい」
彼女に案内され重厚な門をくぐる。
「ここに名前、ここには能力の概要、こっちは出身地、ここには……」
案内された部屋で彼女の指示に従い、さらさらと文字を書き進めていく。
勉強を叩き込んでくれた母さんに心の中で感謝する。
「これでおしまいよ......お疲れさま」
「ありがとうございます。助かりました」
「いいのよ。三日後の試験に受かったら......改めてお礼を言ってちょうだい」
彼女は門まで送ってくれると優雅に髪をかき上げた。
「あの……お名前は?」
「ヴィブラム・ドリシュティよ。あなたの名前は......合格してまた会えたら聞くわ。じゃあね」
彼女が去った後、胸元のカリーが緊張を解いたように呟いた。
「......強いわね。私に気づいていたわよ」
喋っている最中、胸元を一度だけ見つめた瞬間があった。
カリーの存在を悟った上で何も言わなかったのか。
「ああ、やっぱり学園に来て正解だったな」
国都に着いてまだ二日。
勝てるか分からない強者にもう二人も会えた。
ヴィブラム・ドリシュティと、白髪で大柄の兵士。
「父さん。 俺強くなって驚かせてみるよ」
「程々に頑張んなさい」
三日後の試験に向け、俺は体力を万全にする事にした。
今から楽しみで仕方ない。




