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ディグニティ・ストライド  作者: 果報寝待


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閑話 手に握る理由

いつも読んでいただきありがとうございます!

今回は閑話をお届けします。

バル達の日常回なのでストーリーの進行には影響ありませんが、本編では描かれない意外な一面が見られるはずです。

閑話を4話更新したのち、本編に戻ります。

楽しんでいただけると嬉しいです!


 第一訓練所

 

 広い訓練所で、俺は木剣を握りしめていた。

 対峙するのはクラスの同級生、シハラ。

 その手には、長い一本の木槍が握られている。

 

「いくぞシハラ!」

「いつでもこい、バル!」

 

 声を合図に、俺は距離を詰めようと踏み込んだ。

 だが小刻みに動かされる槍の穂先が行く手を阻み、俺の接近を許さない。

 じりじりと円を描くように回り込んで隙をうかがうが、間合いに入れそうにない。

 

「うりゃぁッ!」

 

 シハラが踏み込みと共に槍を突き出してきた。

 放たれた一撃は見切って躱せたが、次々に繰り出される怒涛の突き。

 俺は反撃に転じる隙を見いだせず、防戦一方で追い込まれていく。

 

「『己力投写こりょくとうしゃ』ッ!」

 

 このままでは負ける。

 俺は突き出された槍の柄を狙い、能力を込めた木剣を全力で叩きつけた。

 

 ドンッ!

 

 凄まじい衝撃にシハラの槍が大きく弾かれる。

 強引に作った好機、俺は懐へ潜り込むため踏み込む。

 

「甘いな!」

 

 シハラは慌てなかった。

 瞬時に槍を短く手繰り寄せると、至近距離からの突きを放ってくる。

 

「グッ……!」

 

 訓練用に先端を丸くしてある木製の槍だ。

 それでも腹部へめり込んだ衝撃は凄まじく、俺はドサリと膝をついた。

 

「うーむ。やはり剣にとって、槍の間合いは厄介だな」

「だな。突きに薙ぎ払い、武器が抑え込まれたりもする。間合いをどうにかしねえと、剣じゃ厳しいぜ」

 

 俺達の手合わせを観戦していたレギンとグルーが、口々に感想を述べる。

 シハラの実家は国都でも有名な武器屋で、幼い頃から数多の武器に触れて育ってきたため扱いを熟知している。

 こうしてよく集まっては訓練をしたり、迷宮の情報を共有したりしている。

 

「弾くんじゃなくて、抑え込んで剣を滑らせるべきだったな……」

 

 痛む腹を擦りながら、俺は立ち上がる。

 

「あとは石突にも気をつけた方がいいぜ。穂先ばかりに集中してると、痛い目を見ることになるからな」

 

 シハラの実感のこもった言葉。

 俺は今の戦いを思い出しながら、頭の中で槍への対処法を考える。 

 するとシハラは槍を肩に担ぎ直し言った。

 

「つーかさバル。お前、剣より槍に転向した方がいいんじゃねえか? お前の『押す能力』なら、突きの威力も速度も上げれるし、払いも強力になるぜ。絶対に相性がいいって」

 

 確かに言う通りだ。

 俺の能力の特性を考えれば、リーチが長く、一点への破壊力がある槍はベストな武器だろう。

 だが──

 

「槍の有用性は、俺も考えたことあるんだけどさ……剣が好きなんだ。父さんが使ってて、憧れなんだよ」

 

 俺は頬を掻きながら本音を漏らす。

 それを聞いた三人から笑い声が吹き出した。

 

「ハハハ! なんだよそれ、そんな理由かよ!」


 俺は照れ隠しに「うるさいな」と返し、グルーは大きく頷く。

 

「まあ、タカトさんはめちゃくちゃ格好いいしな! 憧れる気持ちはよくわかるぜバル」

「我は逆に、先祖の英雄のように槍を扱いたかったのだがな。能力との兼ね合い上、どうしても細剣を選ばざるを得なかったのだよ」

 

 レギンが肩をすくめる。

 ちなみにグルーは大剣を使っているが、これは能力に頼らず破壊力を出すため、という理由らしい。

 

(皆いま使っている武器を選んだのには、それぞれ理由があるんだなあ)

 

 俺達はその日の訓練を終えると、夕暮れの訓練所で遅くまで武器談義に花を咲かせた。

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