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ディグニティ・ストライド  作者: 果報寝待


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第3話 決意で進む道

 

 剣を握りしめ、体の動きに集中して振り下ろす。

 無闇に振っても意味が無いと気がついたのは一年前だった。


「速くなったな」


 横から声がかかる。

 父さんだ。

 いつの間に帰ってきたのか腕を組んで俺の動きを見ている。


「もう巡回は終わったの?」

「ああ、最近は誰かさんが害獣も魔物も倒してくれるからな」

「……こっそり森へ行ったのは謝ったじゃん。いい加減許してよ父さん」


 俺は十二になり、背も伸び力も増していた。

 数ヶ月前に修行の成果を試すために森へ狩りに行っていたのがばれて父さんと母さんにはこっぴどく怒られた。


「今日は話がある。そのくらいにして帰るぞ」

「......話?」


 新しい修行を教えてくれるのだろうか。

 俺は急いで修行道具を片付けて家へ向かう。


 ----------


 道具を片付け、汗を拭き。

 家に帰ると、父さんと母さんが真剣な顔で待っていた。


「おかえりなさいバル」

「えっと……怒られるんじゃないよね?」

「怒られる事をしたのか?」

「まさか!」


 俺は慌てて否定する。


「まあいい……話というのはなバル、村を出て学園に行かないか?」

「え、学園って……大きな街にあるあの学園のこと!?」

「国都にある、王立学園よ」

「でも、お金が……」

「それなら心配するな、試験に合格さえすれば学費は後払いですむ。それまでに金を貯めるさ」

「……だけど村の警備のこともあるし」


 盗賊の事件で村にいた兵のほとんどが死んだ。

 代わりの兵士は国から来たが、こんな平和な村じゃ数も多くなく質も高くない。

 俺が残ったほうが戦力になるはずだ。


「村の事は気にするなとは言わないが、父さんが守るから安心しろ」

「そんなの急に言われても決められないよ!」


 村の人は皆、あの日からどこか怯えている。

 父さんが森の見回りの時は俺が守らなきゃいけない。


「父さんもな、お前が力だけの馬鹿なら学園へ行けなんて言わないさ。でもお前は母さんに教えられて勉強も出来る」

「私達はあなたに広い世界を見て欲しいの」 

「俺が教えられる事も、もう無いしな」


 父さんはそう言って、頬の真新しい傷を撫でる。

 修行の時に初めて当てられた時の傷だ。

 だけど父さんは能力を使っていないんだ。

 俺なんてまだまだで……


「馬車が来るのは十五日後だ、それまでに決めて準備しておけ。父さん達はどんな選択でもお前を応援してやる」

「父さん……母さん……」


 その日は悩んであまり眠れなかった。


 ----------


 俺は考えながら村をぐるぐると散歩している。

 歩いていると声をかけられる。


「あれ? バルくんが修行してないなんて珍しー」

「バルー、さては腹でも壊したか?」


 エマとアランだ。


「考え事してたんだよ……」

「えー、何悩んでたの?」

「……父さんと母さんが、学園へ行かないかって」

「まじかよすげぇじゃん! そういえば村に来た能力編纂官にもスカウトされてたもんなー」


 能力編纂官。

 教会から派遣され、能力の命名や記録する役人だ。 

 うちの村には二年に一度やってくる。

 そこで俺の能力を見てぜひ兵士へと言われていた。


「でも俺が居なくなったら……村が守れなく……」

「バルさ、お前はどうしたいんだよ?」

「……正直……行ってみたい」

「なら行けよ」

「だから村の警備が」

「お前、みんなを馬鹿にしてんのか?」


 アランが真剣な表情でそう言ってきた。


「俺達の村なんだから俺達が守るんだよ。お前がいなくたって俺が守るっての」

「そーそー、知ってた? アランねタカトさんに稽古してもらってるのよ?」

「父さんに?」

「お前!なんで言うんだよ!」

「あはは! うちもね、地下に隠し部屋作ったんだー。ていうかほとんどの家が作ったんだよ」


 そんなことぜんぜん知らなかった。


「バルくん、修行ばかりで村をちゃんと見てないでしょー。みんな色々準備してるんだよ?」

「今度盗賊や魔物が来たって自分達で何とかするからよ…… 行けよな学園」


 俺は自分の目頭が熱くなっていくのを感じた。

 それを誤魔化すように叫ぶ。


「俺……行くよ学園!」

「帰ってくる時は、お土産よこせよ?」

「旅の荷物はうちで買っていってよ!」


 俺は覚悟を決めて走り出す。


 その日の晩。

 俺は学園へ行く決意を伝えた。


「そうか。覚悟を決めたか!」

「寂しくなっちゃうわね……」

「にーちゃん、どこかいくの?」


 弟のローゾが心配そうにこちらを見る。


「お兄ちゃんは学園へいくのよ」

「ぼくもいきたい!」

「ははは! ローゾにはまだ早いかな」


 俺は行って欲しくなさそうな弟に覚悟がゆらぐ。


「ごめんなローゾ。帰ってくる時はお土産いっぱい買ってくるから」

「やくそくだよ……」


 俺たちのやり取りを父さんと母さんは温かい目で見守っている。


「でも、一人旅だと心配よね」

「男にはそれも経験になる。あまり心配はするな」

「そうだわ! カリーが着いて行くのはどうかしら?」


 母さんは少し棒読みでそう言う。


「母さん……俺なら一人でも平気だよ」

「絶対に連れて行ったほうがいいわ!」

「いやだから……」 

「バル坊は私が嫌なのかい?」


 テーブルの上から声がする。

 トカゲのカリーだ。


 カリーは、人のように喋ったり考えたりする能力を持ったトカゲだ。

 俺が産まれる前から家に居る。

 姉のような存在だ。

 正直苦手意識を持ってしまっている。


「色々教えて助けてやってたのに……私は悲しいよ」

「いや、別に嫌なわけじゃ......」

「じゃあ決定だねえ。私も着いていくよ」


 やはりこうなってしまったか。

 カリーには口で勝てたことがない。


「よかったわ! カリーがいるなら騙される心配はないわね」

「母さん心配しすぎだ、バルだって……」


 母さんとカリー、二人に睨まれて父さんは黙った。

 父さん……普段はかっこいいのに。


 カリーとの二人旅が決定した。

 まあ、少しだけ心強かったのは内緒だ。


 こうして俺の旅は始まる。

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