閑話 グルーの塩害
今回はちょっとした閑話となっております!
本編のストーリー進行には影響しませんので、息抜きとしてお気軽に楽しんでいただくか、お好みに合わない場合は読み飛ばしていただいても全く問題ありません!
俺は部屋の椅子に座り、鼻をひくつかせながらグルーを待っていた。
先日レギンの屋敷でご馳走になった子羊の塩釜焼きが忘れられないらしく、グルーがその再現に挑んでいる。
ちょうど腹を空かせていた俺とカリーも相伴にあずかることにした。
「グルー坊が料理をねえ。……まともな物が出てくるといいけどねえ」
「本人は自信満々だったから大丈夫だよ。たぶん」
「待たせたな、出来たぜー」
不安と期待が入り混じる中、調理場から戻ってきたグルーが重々しくフライパンをテーブルに置いた。
そこにあったのは料理というよりは発掘現場だった。
フライパンを埋め尽くす塩の山。
その裂け目からは丸ごとのニンニクが十数個。
部屋には涙が出るほどの刺激臭が立ち込めた。
「ぐ、グルー……これは?」
「おう、塩釜焼きってやつだ! 塩をあるだけぶち込んでみたぜ!」
「……グルー坊。塩釜焼きはね、塩で包んで蒸し焼きにする物でねえ。塩と一緒に炒める物じゃないんだよ……」
カリーの真っ当な指摘もグルーの耳には届かない。
「細かいことはいいんだよ! 冷めないうちに食おうぜ」
そう言って、グルーは皿に取り分けた塩まみれの肉を豪快に口へ放り込んだ。
「──うん、うめえ。ガツンとくるぜ!」
幸せそうに食べるグルーを見て、俺達は小声で緊急会議を始めた。
「……美味しいみたいだけど、食べる?」
「馬鹿お言い。あんなの口にしたらトカゲの干物になっちまうよ」
「と、とりあえず俺が毒味……いや、先に食べてみるね……」
俺は覚悟を決めフォークを握った。
恐る恐る、塩に埋まっていた肉片を口へ運ぶ。
(ぐっ!? こ、これは……肉を食べてる気がしない。喉が焼けるみたいだ、噛む度にジャリジャリ鳴って飲み込めないぞ!)
「ど、どうだいバル坊?」
「み……水! 水ちょうだい!」
俺はコップの水を一気に飲み干したが、舌の痺れは全く引かない。
「どうかしたのか?」
「こんなの食べ物じゃないよグルー! 脳が震えるほどしょっぱいんだよ! ニンニクの臭いで鼻の奥が焼けそうだし!」
「な、なんだと! たしかに少ししょっぺえが、これくらいパンチがねえと!」
「……グルー坊。食べおわったらそこにお座り。 お説教だよ」
結局、その塩の塊は最後まで「美味い、美味い」と言い張ったグルーが完食した。
本人の舌が強靭すぎるのか、それとも単に頑固なだけだったのかは分からない。
その晩カリーの数時間に及ぶ、料理についてのお説教を食らったグルー。
それ以降、人に料理を振る舞うことは二度となかった。
俺達の健康のためには、それが一番の正解なのかもしれない。




