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ディグニティ・ストライド  作者: 果報寝待


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第19話 足りない手数

 

 ポラちゃんは村に残し、俺達は国都へ帰る途中だ。 

 俺とグルーは馬車に揺られながら言い争っている。


「だからよ、俺の方がでかいし力も強えんだ。俺が兄貴に決まってんだろ」

「生まれが先なのは俺なんだ。兄は筋肉じゃなくて年功序列で決まるもんだろ?」

「よしこうなったらよ、学園に戻ったら模擬戦だ。勝った方が兄貴な」

「受けて立つよ。ただし能力は無し、純粋な技量で勝負だよ」

「どうでもいい事で争うんだねえ」


 呆れ顔のカリーは溜息をついている。


「カリーどうでも良くないよ」

「そうだぜカリー。かなり重要だ」


 言い争いを続ける俺達にカリーはさらに深い溜息を重ねた。


 ----------


 学園に戻り友人に挨拶をしたあと。

 俺達はさっそく訓練所に陣取り、まだ言い争っていた。


「今のは俺の剣が先に届いてただろ!」

「いや俺の方が速かったよ! ……あ、ラロ久しぶり!」

「ふ、二人とも久しぶり……何を言い争ってるの?」


 久しぶりに再会したラロに俺達は同時に詰め寄った。


「ちょうどいいところに。ラロ、決めてほしいことがあるんだ。……実は俺達、家族になったんだ」

「……え、えええっ!?」


 ラロの悲鳴が訓練所に響き渡った。


 ----------


 俺はグルーと妹が養子になった事を説明した。


「か、家族って義兄弟の事だったんだね。よかった、私てっきり……」

「それ以外に何があるんだよ。……で、どっちが兄貴に見える?」

「うーん、グルー君かなぁ……」

「よっしゃあ! 見たかバル!」

「……ラロなんでだよ」

「グルー君の方が背が高くてお兄ちゃんっぽく見えるからかな?」


 ラロの意見が決定打になり、俺が弟に決まってしまった。


「それにしても、二人がかりでも掠りもしないお父さんかぁ……」

「片腕であれだぜ? 正直村にいるのが勿体ねえよ」

「恩返しのために村で害獣を狩ってるらしいんだ」

「つ、次の休みは私も一緒に行っていいかな……?」

「もちろんだよ、賑やかだと喜ぶしな。父さんの稽古めちゃくちゃタメになるんだよ」

「でもよ、ラロは家族に会わなくていいのかよ?」

「う、うん。私の両親は国都に住んでるからいつでも会えるんだ」


 こうして、次の休暇にはラロもガーウブ村へ招待することが決まった。


 ----------


 進級した二ツ星の授業は週三回。

 座学よりも実戦が重視されるようになる。

 三ツ星への昇進、卒業の条件は「低級ダンジョンの制覇」。

 俺達は迷宮制覇を目指して第七階層へと足を踏み入れていた。


「前方にゴブリン四、スライム二、シーンフロッグ二、だねえ」


 第七階層からはゴブリンに加え、不定形のスライム、角を持つ大蛙『シーンフロッグ』が姿を現す。

 乱戦の難易度が今までとは比べ物にならない。


「多いぜ、迂回するか?」

「いやスライムは遅い。ゴブリンは投擲で二体なら確実に減らせるし。今の俺たちなら倒せるよ」

「わ、私が残ったゴブリンの動きを止めるね」


 ラロが杖を握りしめている。

 今のラロは、二体まで同時に光で包む事ができる。


「その隙にシーンフロッグは手早く倒そう」

「わかったぜ」


 作戦が決まり俺たちは位置について動き出す。

 仄暗い通路、あくびをしていた弓兵ゴブリンの眉間に俺の放った石が突き刺さる。


「ギェ!」

「ギャギャ!?」

「もう一つっ」


 手の石に己力投写こりょくとうしゃを込め投擲する。

 石は風を切る鋭い音を上げ、ゴブリンが反応する前に頭を抉る。

 能力の切り替え速度が上がったことで、次弾を投げるのも速くなっていた。


「シーンフロッグが来るよ!」


 カリーが叫んだ。


是正宣光(ぜせいせんこう)!」


 ラロがこちらに向かって来るゴブリンの視界と動きを奪う。

 俺は片手剣を抜き、イノシシほどもあるシーンフロッグと対峙した。

 粘つく舌を出しネチャリと音を立てながらこちらを向く。 


「ゴゴッ!」


 濁った目が俺を捉え、鋭い角を突き出して跳躍してくる。


「ハァッ!」


 踏み込んだ足から即座に剣へと能力を切り替える。

 横に躱すと同時に剣を振り抜いた。 


「ゴゲギャッ!」


 抵抗を感じることなくシーンフロッグの胴を切り裂いた。

 俺は周りの様子を見る。


 グルーは大剣で角を防ぎ、その怪力でシーンフロッグを吹き飛ばす。


「どぉりゃあ!」


 吹き飛びひっくり返ったシーンフロッグの腹に大剣を叩き込んだ。


「ゴゲボッ!」


 通路の床にシーンフロッグの血が飛び散った。


「やあっ!」


 ラロは、光を嫌がり藻掻くゴブリンに杖の槍を突き刺し倒していた。

 俺達との訓練の成果が出ている。


 残りはスライム二体だ。

 俺はこちらに向かってくるスライムに能力を込め投擲する。

 ビシャッ

 と音を立ててスライムは弾け飛んだ。

 だがその直後。


「グルー坊後ろだよ!」


 カリーの叫び。

 グルーを見るとスライムが背後に迫っていた。


「うおっ!」


 振り向いたグルーの腕にスライムがべっとりと絡みつく。

 ジュワ、と肉が焼ける音がした。

 鼻を突く酸の臭いが広がる。


「ぐあぁっっ!!」

「グルー!」


 悶絶するグルー。

 俺は己力投写こりょくとうしゃを片手剣に込め、スライムの核へと突き立てる。

 どろりとスライムが溶けグルーの腕から落ちる。


「大丈夫かグルー!」

「今回復を!」

「……っ、痛ぇ……!」

 装備を外し水で洗う。

 ラロがグルーの爛れてしまった腕を光で包み込む。


「済まないグルー、気がつくのが遅れた……」

「お前のせいじゃねえよ。俺が周り見えてなかったんだ」

「わ、私も、もう少し注意すべきだったよ」


 俺達は戦いの反省をしながら休憩をする。


「これだけ敵が増えると、やっぱり三人じゃ手が足りないな」

「俺達に付いてこれる奴か。もうチーム組んでると思うけどなあ」

「信用出来る奴じゃないと私も喋れないしねえ」

「わ、私もクラスで探してみるね」


 成長は感じているが、まだまだ課題がある。

 そう認識した俺達は、新たな仲間を探すことにした。

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