↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディグニティ・ストライド  作者: 果報寝待


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/146

閑話 見定める目・二


「いやはや。話には聞いておりましたが、実際に聖獣せいじゅう様にお目にかかれるとは」

「やめておくれよ聖獣せいじゅう様なんて。カリーさん、でいいんだよ」

「うちの娘はお手数かけてないでしょうか……」

「ラロちゃんにはいつも助けられてるよ。なんたって、うちの男達はがさつだからねえ」


 ラロの両親は、聖獣せいじゅうカリーの話に聞き入っていた。

 二人は熱心な信徒しんとのため、神の使いとしょうされる聖獣せいじゅうを前にして恐縮している。

 そのすきをつき、チーヤーはさとられぬよう自然な動作で部屋を抜け出した。

 目配めくばせに気がついたバルも、少し遅れて部屋を出る。


「いいかい、よくお聞き。間違ってもご両親に無礼な真似をするんじゃないよ」

「えっと……ラロの両親はそんなに厳しい方なんですか?」


 廊下で声を落とし、ひそひそと話し合うバルとチーヤー。

 厳しいのかと問われたチーヤーは静かに首を振った。


「普段は温厚なお方さ。でもね……お嬢様じょうさまのこととなると途端とたんに厳しくてね。冒険者活動に良くない印象を持たれたら、最悪は教会へ連れていかれるよ」

「それは……失礼をするつもりはありませんが……みんなにも知らせておいた方が良さそうですね」


 バルの頭には、レギンとグルーの顔が浮かんでいた。

 悪人ではないが誤解されやすく、しかもそれを気にしない二人は、何かと問題を起こしやすい。

 事前に注意をしようとしたバルだったが、チーヤーがそれを止めた。


「やめときな。不自然な動きをして、ご両親にさっせられかねない。あんたと私で、それとなく対処するよ」

「了解です。俺がチームを、チーヤーさんがご両親の対応をお願いします」


 二人はひそかに手を組み、ラロの夢を守るために動き始める。



 ----------



 大きなかばんが机に置かれ、両親の二人はそそくさと中身を取り出し始めた。

 テーブルに並べられていくのは、見慣れない品々ばかりだ。


「私達は仕事柄、様々な辺境へんきょうおもむくのだがね。いつもこうして、その土地の名産品を買ってくるのだよ」

「今回はラロちゃんのお友達もいることだし、多めにお土産を買ってきたのよ! 遠慮しないで受け取ってちょうだい!」


 ずいっと押し付けるように差し出されたのは、木彫りの人形。

 色鮮やかな模様が描かれているものの、その造形は異様だ。

 人間の頭部に不釣り合いな二本の角が生え、目は縦に四つ刻まれ、足は山羊そのもの、両腕に獣の毛が植えつけられている。


「これは……まるで呪いの人──」

「ありがとうございます! 部屋に飾らせてもらいます。異国情緒いこくじょうちょを感じる品ですが、どういったものなんですか?」


 レギンの言葉をさっしたバルは、大声で礼を言い遮った。

 どんな物か分からないが、土産を呪いの人形などと言えば不興を買いかねないだろう。


「お、分かるかね。これは今回訪れた土地で、戦の神として恐れられている──」


 笑みを浮かべ、両親は旅先で得たであろう知識を語り始めた。

 話にラロが感心した素振りを見せると、両親の笑みは一段と深くなる。


 ひとまず最初の危機は脱したと、バルとチーヤーは内心で安堵の息を漏らす。

 視線を交わし、気を引き締め直すのだった。



 ----------



「そうかそうか! ラロがそんな活躍を!」

「ええ。ラロがいなければ、迷宮主の攻略は厳しいものになっていましたよ」

「ふふ。こうしてお友達の口から活躍を聞けるなんて感激だわ」


 チーヤーが話をうまく冒険譚ぼうけんたん誘導ゆうどうし、バルがそれに乗ってラロの活躍ぶりを語っていた。

 ラロは称賛しょうさんされ赤面しているが、愛娘まなむすめの活躍を聞けた両親は上機嫌だ。

 これで冒険者への印象も良くなるだろうと、チーヤーが安堵しかけたその時。


「いやぁ……あいつの攻撃はマジでヤバかったよな。今戦っても楽には勝てねえぜ」

「僕はまだ未挑戦ですが、しっかり準備して覚悟を決めて挑まなければなりませんね……」

「むむ、それほどまでに危険なものなのか……」


 両親の顔が曇り始める。

 強大な魔物を相手にしていると知り、娘の身を案じ始めたのだ。

 バルが焦りを顔ににじませ、見かねたチーヤーが助け舟を出した。


「お嬢様じょうさまは後方での回復ですから、危険は少ないかと。それにこの坊や達、なかなかの才能の持ち主でございます。お嬢様じょうさまの安全については、信頼して任せてよろしいかと」

「あら、あなたがそこまで評価するなんて珍しいわね。この子達のこと、よほど気に入っているのね」

「……素質そしつ率直そっちょくに評価しているだけに過ぎません」


 素直じゃないチーヤーの態度に、両親は相変わらずだなと顔を綻ばせる。

 そこから話題は、両親とチーヤーとの出会いの話へ移っていった。

 チーヤーは面白くなさそうに眉をひそめたが、バルは目配せで感謝を伝える。


 二人の暗躍が吉と出るか凶と出るか、それはまだ誰にも分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。