第五話 王都到着
レーザ達は別行動で、王都を目指す。門の前で落ち合うつもりだ。
私達は引き続き、王都を目指した。
「着いたな」
「ここが……ヴァルメア王国の、王都ヴァルメリー」
大きな石造りの城壁に、その向こうに見える白亜の城。白で統一された、鋭利な屋根の民家。
そこで半日待って、レーザ達と合流した。
日が傾く。オレンジの夕日に照らされて、王都も同じ色になる。
「検問があるね」
「ワシに任せろ」
エイブラムが馬車を降りる。
会話に聞き耳を立ててみる。
「お前、新入りか? ワシは昔、王都の銀狼隊で働いてたエイブラムだ。家族が田舎に暮らしたいと言うからな、ウィスパーブルックで今は仕えてるんだが」
「ぎ、銀狼隊!? あの、誰もが憧れる!?」
「あぁ。隊長のガルドン殿は、相変わらず元気か? 気の置けない中じゃった。昔はよう酒を奢ってもらったな」
「はい!!」
「そうか、そうか。でな、こいつらなんだが……今、王都で“陰影の監視局”から特別護送を願われた奴らでな。任務なのだ。お前、分かってくれるな?」
そういうと、微かに小銭の鳴る音がする。
「畏まりました!! お通しします!!」
「はっはっは、王都も先が明るいわ。お前ら、通っていいとのことだ」
「ありがとう」
馬車に乗ったまま、私達は門を通った。レーザ達も一緒に。
中に入ってから、エイブラムに問う。
「銀狼隊って何?」
「少し前、この国が戦争を今より盛んに行っていた頃の話だが。中でも精鋭としていた、百人の部隊があったんだ。俺はそこの元メンバーでな」
「凄い人だったんだね。陰影の監視局っていうのは? 何となく想像がつくけど」
「察しの通り、影の監視部隊だな」
「へぇ」
実はエイブラムは、力強い味方だったんだね。
「昔のツテで、宿は簡単に取れる。演説の場所は、そうだな……城下南にある、大きめの公園はどうだ? 人も集まりやすくて、警備も薄い」
「うん、いいね。そこは任せるよ」
「今日はもう宿に入るか。レーザと言ったか? お前達も来い。宿に入るぞ」
「……オレらは野宿でいーよ」
「……そうは言ってもな。アリア、どうする?」
「……エイブラムのお財布的には、大丈夫なの?」
「あぁ、金のことは気にするな。銀狼隊の頃の金が、たんまりある」
エイブラムは不敵に笑う。
「そう。ありがとう。……じゃあ、嫌じゃなければ、レーザ達も宿に入ろう」
「……わーった」
レーザは居心地悪そうに、首元をポリポリ掻いた。
盗賊四人、私達三人、計七人で宿に入った。
ドアベルが鳴ると、茶髪をひっつめたお母さんが、パタパタ走ってくる。
「サリッサ姐さん、久しぶりだな」
エイブラムは片手を上げる。
「あぁ! エイブラム! アンタ見ないうちに老けたねぇ!」
「はっはっは、そう言うな。サリッサ姐さんは相変わらずだな」
「まぁね。で、今日は七人かい?」
「あぁ。頼むよ、適当なとこでいい。四部屋頼む」
「あいよ!」
鍵を貰った。
「レーザ達は二部屋使え。俺とジュリオスが一部屋、アリアが一部屋だ」
「わーった」
「ありがとう」
角部屋に入る。
「おぉ、綺麗だ。流石、王都」
白い壁に、白いベット。お風呂とトイレ付きだな。
清潔感のある空間に、少しテンションが上がる。
荷物を置くと、ノックされる。
「晩飯だと」
「分かった、行こう」
王都の晩御飯、何が出るのだろう。
「おまちどう!たんとお食べ!」
「うわ、美味しそうだな!」
「うまそー……」
「ここの料理は絶品だぞ」
確かに、美味しそう。
「いただきます」
赤い豆と、ジャガイモのポーク煮込み料理。ローズマリーとニンニクで味付けされている。
こっちの緑色のパンは、野菜入りかな。多分、じゃがいもでボリュームアップしてる。
それから、チーズと豆のサラダ。ハーブで味付けされている。
デザートは、芋の甘露煮。
王都は豆とジャガイモの生産が盛んだ。野菜も少し作ってて、酪農は近辺の街に頼っている。
「芋の甘露煮は、サービスよ! エイブラムの、顔見知り価格で♡」
「ありがとなぁ!」
景気の良い事だ。エイブラムも、そんな笑みを浮かべている。
「いいのよ! エールも飲むんでしょ?」
「あぁ、貰うか!」
食卓には、サリッサさんも一緒に着いた。
「にしても、嬢ちゃん、珍しい髪色だねぇ?」
「はい。朝起きたら、突然こうなっていました」
「へぇ! そりゃ驚きだ。まるで、神様でも宿ったみたいだね」
「んぐっ、ん"、ん"ん」
思わず芋が詰まった。サリッサさん、鋭い。
「……ふふ、そうだといいですよね」
少し視線を逸らしてしまった。
「そうだねぇ。そうそう、エイブラム、昔さぁ、ガルドンが──────」
そこからは、サリッサさんとエイブラムが、過去の話に花を咲かせていた。
「オレ、こんなちゃんとしたメシ食うの、久しぶり……」
盗賊達が頷いている。各々、目尻を光らせて。
「オレ、こんな幸せなことしてていいのかァ……?」
「そんな悲しいこと、言わないでよ。私はレーザに、幸せになってほしいよ」
だって、既に仲間だから。
「そうかぁ、主……ありがとな」
主? 私の呼び方だろうか。……悪くない。
食後には、温かいハーブティーを。
温かくて美味しいご飯を食べられて、皆満足である。
“神よ、なぜ私を生み給うた”を使って精神的に疲労していたが、かなり回復した。
これからも、平和な神の国を作るという使命のために頑張らないと。
私は、気持ちを新たにした。




