第四話 盗賊
余所行きの服、白い少し艶のある生地で出来たポンチョに、銅のボタンが付いたものを着る。
黒いブーツにも、銅の留め具。
神の恩恵賜った白髪白眼は、健在だ。今や、私の一種の拠り所でもあった。私が救世主である証。私の正しさの証。
玄関で待っている二人の元に行く。
二人はチェインメイルを着ている。
「行こう」
「あぁ」
私達は、馬車で王都へと向かった。
田舎道は舗装されておらず、よく揺れる。
「うぷ……」
「ジュリオス、大丈夫か?」
「あんまり馬車には乗りなれてなくってな……」
生憎、私の力に酔い止めはない。
「窓の外を見ていよう」
「あぁ……」
そうアドバイスするので精一杯である。
ジュリアスはぼーっと、外を見ていた。
「……ん?」
「どうしたの?」
「いや、今、銀色のナイフみたいなのが光ったように見えたんだが……」
「……まさかね」
「まさかだな」
嫌な予感に、私は冷や汗を垂らす。
ヒヒーン!!
突如、馬車が止まった。
「何事だっ!?」
エイブラムが御者に問う。
「と、盗賊です!!」
「なにッ」
もうすぐ王都なのに。
エイブラムはファルシオンを抜いた。
長い銀色の剣が、今にも盗賊を切らんと輝く。
「金目のものを出せェ!!!」
四人のうち、正面にいる、赤髪が跳ねた男が叫ぶ。
「私が行く」
私は馬車を静かに降りた。
「……俺もお供するぜ」
「ワシも行こう」
酔いは大丈夫なのか、冷めた顔をして、ジュリオスはハルバードを構えた。
お互いの圧がぶつかり合う。
私は静かに、しかし凛と話し出した。
「貴方達は、自分のした事を後悔したことはありますか?」
「……なんだァ? 急に」
赤髪はピクリと目尻を跳ねさせる。
思い当たる節があるのだろう。半歩後ろに下がっている。
「ないのならば、啓蒙を。あるのならば、また啓蒙を。神は貴方達を見放しません。正しい贖罪があれば、正しい光が注ぎます」
「さっきから、ゴチャゴチャうるせぇなぁ!!! テメェら!! 切っちまえ!」
赤髪の指示で、盗賊はこちらに剣を向ける。
今にも切りかからん、と飛び上がった時。
「“神よ、なぜ私を生み給うた”」
その声は、暴力より確かに、盗賊達の頭に響いた。
「っぐ、がァぁぁあああ!?!」
皆一斉に頭を抱え、もがきだす。
中でも赤髪のもがき方は凄まじかった。床に頭を擦り付け、髪を引っ張り、尋常ではない慟哭を上げている。
「あァぁぁあ……」
掠れた嘆きが漏れる。
暫くして、虚ろな顔で、息切れしながら、赤髪はこちらを見た。
「オレに……何をした?」
「奇跡を与えたんだよ。罪を自覚したなら、私に着いてきて。一緒に贖罪の旅に出よう」
「……オマエに着いていけば、この罪は償えるのか?」
「……うん。約束しよう」
約束という言葉が、随分簡単に口から出た。だが、叶える覚悟はある。
私は、少し放心していた。彼の苦しみ方に、彼の深い闇を見た気がしたのだ。それを思い起こさせた私は、酷い罪人な気がするのだ。
「貴方の名前は?」
「……レーザ」
「レーザ。いい名前だ。私と一緒に、神の国を作ろう。着いてきてくれる?」
手を差し出す。レーザは震えながら、その手を取った。
「……あぁ」
「うん、よろしくね、レーザ。一緒に血の流れない革命を起こそう」
「……あぁ!」
レーザは、目に涙を浮かばせて、力強く頷いた。




