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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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リサとAランカー達

「ロロ、あの人(リージョ)は無事に師匠の所に着いたかな?」


「キャン!キャン!!」


 “はい”か“いいえ”程度であれば明確な意思疎通が図れるので、今の鳴き声によれば同じAランカー“無音のリージョ”は無事に師匠であるクロイツが拠点にしているダンジョンに着いていると理解できたリサは、ホッと胸をなでおろす。


「う~ん、早く師匠に会うために昇格したいですけれど、闇雲に依頼を受けるのも違いますし、この程度では実績にはなりそうにないのがつらい所ですね」


 周辺には、盗賊に襲われないように同じ格好をしている人がたくさんいる中で、明らかに“白套のリサ”を狙っている人物が複数人いる。


「どうしましょうかね~。とりあえず、ブサ村のあったリベラ王国に戻りますかね?ミューテルさんにも近況報告をしたいですし!」


 ミューテルの本当の姿を知らないリサは、クロイツと共に行動をし始めた時に世話を焼いてくれていた彼女に良い印象を持っていたので、嬉しそうに追手を振り切れる速度でズンズン進んでいった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ……既に冒険者や民、ギルド職員ですら多数出国してしまっているナスカ王国では、“深淵の森”で発見されているSランク魔獣のポイズナックの対応に追われている。


 今の所王都に被害はないのだが明らかに森がざわついており、その雰囲気が王都方面に近づいている。


「……と言う状況でございます」


「状況はわかったと言っているだろう!どう対応するのかを聞いているんだ!」


 国王の執務室で、ドレアが騎士からの報告に対して顔色を変えて怒鳴り散らしているのは、Sランクの魔獣に対して何も対処するそぶりを見せないからだ。


 ただでさえ人材が流出してしまっているのに“深淵の森”の情報が出回ってからは加速度的に流出が止まらず、既に諸外国からの商人の入国すら一気に無くなっている。


 このままでは国家として成り立たなくなるのは明白で、半ば強制的にAランカー二人、そして近衛騎士の四人、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ総動員で討伐に向かわせる事になった。


 すっかり予定は外れ、まさかの超危険地帯に派遣される事になってしまったAランカーの一人“血飛沫のミーシャ”は、いざとなったら契約には反するが、さっさと出国して身を隠そうと決意する。


「楽しみだぜ。Sランクなんざ、お目にかかれる獲物じゃないからな。最初の一撃は俺がもうぜ?」


 唯一この遠征を楽しみにしているのは“爆炎のハロルド”で、ポイズナックに対して持っていた恐怖がリサと対峙した時の恐怖で上書きされて無くなっており、好戦的になっている。


 同行する者達からは厄介者扱いされているが、こう言った時だけは非常に頼もしく見えるハロルド。


「わかった。貴殿に初撃は譲ろう。我らは若干後方で待機する事にしようぞ」


「話が分かるな!さすがは近衛騎士の筆頭……なのか?まぁ、とにかく頼んだぜ!」


 本来は国王の護衛に就くべき立場のアルファだが、国家の危機と言う事で既に全ての権力を掌握しているドレアの命令でポイズナック討伐に駆り出されている。


 アルファがハロルドの意をくみ取ったような言い回しになっているが、実際アルファもSランク魔獣と聞いて腰が引けまくっているので、これ幸いと譲る体で後方に下がることにしている。


……ガサガサ……


 “深淵の森”に入り奥に進む六人。


「やっぱり、相当異常ね。ここまで魔獣がいないなんて……どう見てもポイズナックから逃げたか、すでに狩られたか……何れにしても、近いわよ」


 ミーシャの言葉でこの場に緊張が走る。


……ゴゥ……パチパチパチ……


 突然ハロルドが炎魔法を行使して周囲を焼き始める。


「敵襲か?」


「焦んなよ。今回の敵は、姿が見えないんだぞ?だったら、他の手で姿を確認できるようにするのは必須だろ?」


 ベータが慌てて戦闘態勢をとるのだが、ハロルドは落ち着いて魔法を行使した理由を話す。


 敵の情報を戦闘前に得られるだけ得ておく姿勢はAランクに上り詰めても変わらないし、実際に戦闘経験があるので対策を練った上で今回の討伐に臨んでいる。


「お前らも周囲を確認しろ。炎に揺らぎがあればそこに敵がいる。頭上は……こんだけ狭い範囲なら、風魔法で何とかなるだろ」


 二つの魔法を同時に行使するハロルドだが風魔法はあまり得意ではないので、狭い範囲だけの行使にとどめている。


「っと、おいでなすったぜ。手~出すなよ!」


 ポイズナックは頭上に回り込むことなく、正面からハロルドの炎魔法を嫌がる素振りも見せずに姿を隠さない状態で突っ込んできた。


「これがSランクの魔獣なのか?」


 騎士の誰が言ったのかはわからないが、思った以上に強くは見えなかったので多少安堵しているように聞こえる。


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