リサとリージョ(1)
「ロロ、もうこの国は良いですかね?師匠の故郷なので少しだけ期待していたのですが、やはり優秀な逸材を追い出すような人の集まりであったと確信できただけだったのが残念ですね」
「キャン!」
騒動の中心に巻き込まれそうになっているので、ナスカ王国を出国する事を決意するリサ。
特に誰かに挨拶をするわけでもなく即実行して出国するが、もちろん正規の出国であるために王城やギルド方面にもリサが出国したとの報告が入る。
貴重な戦力であるAランカー故の対応なのだが、その一報を聞いた冒険者達は続々と家族を引き連れて出国し、その流れに沿うように民もナスカ王国を後にする流れは止める事が出来なかった。
「も~、せっかく食事を注文したのに、台無しになっちゃいましたよ」
ナスカ王国衰退の最後の一押しをした自覚が一切ないリサは、ロロに愚痴を零しながら真夜中の街道をテクテク歩いている。
「で、あなたはいつまでついてくるのですか?」
歩いたまま背後を振り返らずにこう告げるリサに対し、まるで闇から生まれたかのように徐々に姿を現す男。
「いつから気が付いていた?」
「いつでも良いじゃありませんか。何の用ですか?最後のAランカー、“無音のリージョ”さんでしたっけ?」
ここでようやく立ち止まって、振り向きながら話しかけるリサ。
ミーシャ、ハロルド、リサと同格である最後のAランカーであるリージョは、どのように攻撃するのか、何が得意なのか一切不明であり、その姿は真っ黒なフード付きの外套を羽織っており素顔は良く見えない。
「実は聞きたい事がある。話すのは苦手なので直接的な表現になるが、お前はSランカーのクロイツと共に赤の紋章を大量購入していると聞いた。お前達は闇の奴隷商の手先なのか?」
剣呑な雰囲気を出しながら問い詰めてくるリージョだが、不思議と嫌悪感はわかないリサは少しだけ真実を話す。
「いいえ、逆ですね。私は……私の両親は闇の奴隷商のせいで命を落としたと聞いています。幸い私自身は師匠に助けて頂いて赤の紋章もつけられていませんが、そんな境遇の人を助けたかったのです。信じて頂けるかはわかりませんが……その人達はとある場所で幸せに暮らしていますよ」
「……つまり、闇の奴隷商を潰そうとしている。で合っているか?」
「そうですね。最終的には私怨になりますが、両親を拉致した者を含めて罪を償っていただきたいですね」
「やはりそうか。お前達が動いてから闇の奴隷商の動きが一切掴めなくなった。お前達の実力を正しく脅威と判断したが故だろうが。ナスカ王国ではまさかのハロルドが赤の紋章になってはいたが、あれは特殊事例だからな。あいつの周辺を嗅ぎまわるのも少々骨が折れるので、今回は……」
「あの、リージョさんも私達と志を同じにしていると言う事で良いですか?」
「……それこそ信じてもらえないかもしれないが、その通りだ」
「そうですか!!じゃあ同士ですね。Aランカーの同士!!フフフ、良いですね。はじめましてのお食事はいかがですか?」
ロロも全く警戒感を出していないし自分の直感も信頼できる人物と判断しているので、突然ではあるが話を強引に切り上げて食事に誘うリサ。
ギルドで食事をする事が出来なかったので、この場で収納袋にしまってある食事を共にとろうと提案する。
「リージョさんも、ギルドにいるときから何も口にしていませんよね?」
遠慮させないように伝えたつもりだったのだが、リージョにしてみれば姿を隠していた自分の姿を完全に認識されていた事実を告げられている事になっている。
「やはり、Aランカー最強の名は伊達ではないと言う事か。フッ、流石だな……せっかくのお誘いだ。いただこうか」
リージョが話している最中にもテキパキと準備をしているリサを見て、断るのも申し訳ない気持ちになり申し出を受けることにした。
普通ではありえない暗闇の中での夕食なのだが、Aランカー二人の存在を目ざとく感じ取った魔獣達は彼らの強さを正確に感じ取り襲い掛かるような事はなかった。
「おっ……これは、美味い!」
「フフ、ありがとうございます。師匠直伝の一品です!」
リサは、師匠以外にこれだけ安心できるのは珍しい人物だと思いつつも、おいしそうに料理を食べてくれるリージョを優しく見つめている。
「……少し聞きたい。見た所、噂通りにAランク最強の力は間違いなく持っているだろう。それほどの力、その年でどのように手に入れたのだ?俺も、今後の活動のために更に力を得る必要があるのだ」
リサはいくら信頼できると判断しているとは言え、師匠の力によって得た力を説明するつもりはなかった。
秘匿している能力もあるので、単純に師匠の教えで強くなったとだけ告げる。
「……なるほど。噂通りに素晴らしいお方のようだ。すでに気が付いているだろうが、その師匠とはナスカ王国の元第一王子でありクロイツ様で……」
リージョは何の気なしにクロイツを褒めたのだが、これがリサのスイッチを入れた。




