リサへの依頼
近いうちにクロイツを始末しようと考えているドレア。
その思いがあるのは事実だが、実はリーナのスキルである<傀儡>の影響を大きく受けているとは気が付かないままに行動する。
“白套のリサ”がクロイツ側の戦力になる事だけは避けたかったので、自国の安全を確保するついでに始末できれば良いと考えていた。
クロイツに対しては赤の紋章が十分に準備できていないので、できる事をやるしかないと、この作戦……リサをポイズナック討伐に向かわせる作戦を実行する事にする。
この考えには、目の上の瘤を始末できる可能性が高いとミーシャも乗る。
「さすがはドレア様です。私も微力ながらお手伝いさせていただきますわ。ハロルド、あなたも当然来るでしょう?ポイズナックは良いから、“白套のリサ”と戦れるのよ?」
「……良いだろう」
最強Aランカーを相手にできると聞いて再び戦闘狂の魂に火が付いたハロルドを見て、満足そうに頷くドレアだ。
王城でこのようなやり取りがあった後の冒険者ギルドでは……
「何をバカな事を言っていやがる!お前ら騎士様はAランカー、Bランカー相当の実力があるんだろうが?口だけか?今迄に何か実力を証明できる結果を持ってきた事があるのかよ?ふざけんじゃねーぞ!!」
ギルトで、とある騎士に怒り狂っている冒険者達。
「カスどもが……良いか、よく聞け!これは王命だ!我らは国家を、王族を守護する誇り高き騎士だ。魔獣程度の下賤な相手に出向く事はない。たかが獣程度が恐ろしいのか?自らの実力不足を認めるのであれば、Aランカーがいるのだろう?リサとか言ったか?その者に泣きつけば良いだろう?」
ギルドに王命としてポイズナック討伐の命令書を持ってきたのは、近衛騎士であるベータとガンマだ。
「俺達は、テメーらの尻拭いをする便利屋じゃねーんだよ!今回の騒動も、あのハロルドが深淵の森で暴れたせいじゃねーか!」
「そうだぜ。あの“爆炎のハロルド”も王族お抱えAランカーらしいな。他国には“深淵の森”対策として“血飛沫のミーシャ”も専属にしたと公言しているそうだな。公言通りに二人にやらせりゃー良いだろう!テメーのケツはテメーで拭け!」
王命と聞いても一切受注するそぶりを見せない冒険者達を見て騎士であるベータとガンマは青筋を立てているが、この時点である程度真実を掴まれている事には少なからず驚愕している。
さすがは冒険者の情報網と言った所だが、騎士としては王命である以上ここで引くわけにはいかない。
「下賤な者が、立場が分かっているのか?重ねて言うが王命だぞ!それを検討する事もなく無下に断る……ナスカ王国での生活ができなくなると思え!当然貴様らの家族も同様だ!」
最大限の脅しをかけるベータ。
「はっ、望む所だぜ。お前らが大切に抱えている新国王だか何だか知らねーが、ドレアと言ったか?とんだ無能だったな。まぁ俺達は無能王子の掌で転がされて、有能なクロイツ王子を結果的に追い出した。その贖罪もあって今迄我慢しちゃーいたが、その根本の原因であるテメーらが変わらないんじゃ、意味ねーな」
「クッ……貴様ら、不敬罪でこの場で始末しても良いのだぞ!」
思わず剣に手が伸びるベータとガンマ。
「クカカカ、おもしれーな。ようやく自称Bランカー相当の実力を拝めるのかよ。良いぜ。相手になってやるよ!」
「おいおい、俺も混ぜろよ。これで一対一だな」
ここまで脅しても一切怯む事がないばかりか、逆に好戦的に対応されてしまった以上は引けない騎士二人。
……ギィー……
その喧噪など知った事かと言わんばかりに、空気など一切読まずにギルドに入ってくる音がする。
その音を聞いたベータとガンマは、ギルドに入ってきた人物を見て少々安堵する。
「“白套のリサ”か。ちょうど良い!おい、Aランカーのリサにナスカ王国の王命を伝える。心して聞くよ……」
「邪魔!」
視界にリサが入ったベータがここぞとばかりにリサに王命を伝えようとしたのだが、ナスカ王国に対して良い印象がないリサはその言葉を切って捨てた。
この国の冒険者や一部の者達に限って言えば、ようやく師匠であるクロイツの優しい人柄を認識しつつも過去のクロイツに対する行いに反省をしているようなので、本当に多少ではあるが心を開いてはいるのだが、騎士はだめで、リサの敵という位置づけに一切変わりはない。
クロイツの故郷を本人の許可なしにボロボロにできないと言う、この一点だけで我慢している。
「……き、貴様!よく聞け、王命だ。貴様が発見したというポイズナックの始末だ。貴様が発見したSランク魔獣だぞ!王都に侵入される可能性がある以上、始末する必要がある。その程度の事位は、冒険者である貴様もわかるだろう?」
「マスター、いつもので!」
ベータの言葉を完全に無視して、リサはいつもの食事を頼み始めてしまった。
「プッ、クククク……まるで相手にされてねーよ」




