Aランカー、ミーシャ(1)
私は大体のギルドで最強ともてはやされるBランカーを凌駕する、Aランカーのミーシャよ。
出身はとっても小さい国だけれど、生活に不自由した事は無かったわね。
強さこそ全てのような国だったおかげかしら?
何時だったか忘れたけれど、初めて生き物をこの手にかけたのは何となく握ったレイピアがとても良く手に馴染んで、急に試したくなったから適当に辺りにいる犬を刺したのが最初ね。
その後はレイピアで魔獣を始末してお金が稼げる冒険者になって、気がついたらAランカーになっていたのよ。
Aランカーになるまではパーティーを組んでいた事も有って、私の戦い方は結構広まっているの。
レイピアで急所を貫くとそこから血飛沫が上がる事から、“血飛沫のミーシャ”なんて言う、余りありがたくない二つ名を貰っちゃった。
きっと未だに結婚できないのは、この物騒な二つ名のせいよね。
こう見えて、私は罪人以外を手にかけた事はただの一度としてないわよ。
私と違って他のAランカーの一人である“爆炎のハロルド”と言われている男なんて、一時期とある町に魔獣が大量に押し寄せた対処の依頼を受けた時に味方も纏めて燃やしちゃったりしたから、それ以降誰一人として一緒に依頼を受けてくれる人がいなくなっているのは当然よね。
まっ、私達Aランカーと共に依頼を受けるほどの力が有る人がいないので、逆に足手纏いがいなくなるから良いのだけど。
もう一人のAランカーの男は“無音のリージョ”なんて言われているけれど殆ど何も話さない上に気配は常に抑えているし、一度だけ魔獣を始末している所を見たけれど、音もなく忍び寄って一撃。
きっと、気配察知を極めているのではないかしら?
そんな三人が大陸の頂点だったのに、いつの間にか突然Aランカーがもう一人出てきたのよ……それも、二つ名が何となく格好良いのが気に入らないわ。
その名も、“白套のリサ”。
まったく、私と比べて雲泥の差じゃないかしら?
当の本人は恥ずかしがり屋さんなのかしら?いつの間にか頭角を現しているのだけれど、私が掴んでいる情報では幼い女の子。
殆どフードを被ってあまり素顔は見せていない上に、時折子犬の様な動物を連れて行動していると言う事。
今までリサが魔法を使ったと言う情報はないから、きっと魔法適性がない、魔力がそれほど無い子なのね。
そんな少女がいつの間にか私達を差し置いて最強Aランカーなんて言われている情報が入ってきた時には、流石の私も初めて罪もない人を串刺しにしてやろうかと思ったわ。
って、落ち着かなきゃ。
こんな事じゃ、あの物騒な二つ名は消えないわよ。
そんな時、ナスカ王国で適当に依頼を行っていたら王城から呼び出しがかかったの。
本当はかなり面倒臭かったけど、王城からの誘いを断る手はないので王城に向かったら、実質国王として活動している第二王子ドレア・ナスカ様と直接面会をする事になったのよ。
これは思わぬタナボタかしら?
彼の背後には二人の騎士がいて、一人はベータ、もう一人はガンマと名乗っていたわね。
「Aランカーのミーシャよ。ナスカ王国で依頼を受けているから知っているだろうが、最近深淵の森からの魔獣対処が少々後手に回っている。ミーシャがいるおかげで王都にまで被害はないが、万が一にもこの状態で君に抜けられると国家として非常に痛手だ。どうだ?流れの冒険者など止めて、ナスカ王国の専属とならないか?」
冒険者は自由業だけれど、今回の様にどこかの専属になる場合もあるわね。
その契約先によっては今迄よりも遥かに高い固定給、長い休み、良い事だらけになる場合が殆どよ。
冒険者なんて命を対価に大金を得ているようなもので、年を重ねると戦力は下がり、結果的に得られる報酬も少なくなるはず。
そこを保証される立場になれば万々歳よね?
当然声をかけてくれた相手が王族であれば、もう安定生活を手に入れた事は間違いないわ。
その行きつく最終到着地点は……貴族や王族と結婚して……ムフフフ。
そろそろ魔獣の始末にも飽きてきた事もあるし、丁度良いわね。




