リサの冒険(クロイツの故郷ナスカ王国へ4)
誰が呟いたのか分からないが、最近のリサの活躍を目撃したことがある冒険者がこう噂を流していた。
“白套のリサ”は、戦闘時に小さな狼の魔獣を連れている事がある……と。
何故リサがこの場で狼の魔獣を出したのかは分からないが、取り敢えず良い方向には向かっていない事だけは分かるこの場の者達。
「で、そこの腰抜けの……誰でしたっけ?そこの貴方。私に色々教えて下さるのですよね?ですが、私に直接教える事が出来るのはどのような内容であったとしても師匠のみ。ですからその教え、私の友達であるロロが聞きますよ」
見かけ小さな可愛らしい狼の魔獣が、Bランカーのロゼッタの相手をすると言い切るリサ。
死を覚悟していたロゼッタは、ここに光を見出した。
「……二言はないな?“白套のリサ”!」
何故か突然強気になる。
なぜならば、リサが何をするか確信はないのだが、どうせあの小さな魔獣と戦わせると言うのだろうと判断していた。
流石にBランカーの自分があの小さな狼に見える魔獣に負けるわけはないと言う自信、自負があるので、リサさえ手を出してこなければどうとでもなると思っていた。
その態度に少々イライラしたリサは、多少の威圧を込める。
「二言?何を言っているのか……立場が分かっていないようですね。まぁ、良いでしょう。貴方も予想しているのでしょうが、貴方の相手はロロがします。私は一切手を出さないと約束しましょう。私が相手をした場合には、いくら手加減しても貴方程度では一瞬で致命傷になってしまいかねませんから」
「……良いだろう。で、どうすれば良い?」
冷や汗をダラダラ流しながらも、何とか言葉を紡ぐロゼッタ。
「どうせ貴方はその中途半端な強さに胡坐をかいているのでしょう?その無駄に高くなった鼻をポッキリとへし折ってすり潰してあげますよ。そこの受付の方!どこか適当に相手が出来る場所に連れて行ってください」
「は……はい!」
突然振られた受付は、慌てて立ち上がって小走りで移動する。
背後にリサ達がついて来ているか確認する心の余裕はないが、一方のリサは涼しい顔で後を追いながらも、ロロと普通に話をしている。
「ロロ、いつも面倒事を押し付けちゃってごめんね」
「キュン!」
ロロは何でもないよ!と言わんばかりに可愛らしい返事をしており、その姿を後方から見ているロゼッタは、漸く小ばかにされている事に怒りを感じ始めていた。
「舐めやがって、あんな子犬程度に負けるBランカーがいてたまるか!あいつの目の前ではらわた引き摺りだしてやる!」
こうして到着したのが、ギルドの裏にある大きな敷地。
時折ランクアップ時の戦力の確認を行う際に使用されていたり、冒険者が鍛錬するために使われていたりする場所だ。
「こ、こちらで宜しいでしょうか?リサ様」
「良いわよ。じゃあロロ、よろしくね!」
「キュン、キュン!」
ロロは楽しそうにトットットと、広場の中央付近に進んで行く。
「おい、“白套のリサ”。これは俺とあの犬っころの戦いで良いんだな?どうなっても責任は取れねーぜ?途中で、お前が手を出すなんて事はねーよな?」
「大丈夫ですよ。でも、逆の事が言えますよ?どれ程あなたが苦しもうと、私は止めるつもりはありませんから」
ロゼッタは、一応目の前のロロを痛めつけてもリサが出てこないように釘を刺したつもりだ。
流石にリサに勝てるなどとは思っていないので痛めつけたロロの為に反撃されては困るので、第三者が多数いるこの場で言質をとったつもりだったのだが、逆にこれ以上ないほど煽られる。
流石にリサと直接揉めるのは避けるべきと判断したロゼッタは、怒りながらもロロの近くに行きつつも抜剣する。
ロゼッタが抜剣した事で、ギルド職員は不安そうにリサを見ている。
見た目は非常に小さくて可愛いロロなので、おそらく手も足も出ずに惨殺されるのではないかと思っているからだ。
そうなると、どう考えてもリサの機嫌が非常に悪くなり、その矛先が自分達にも向かいかねないと危惧していた。
「じゃあ始めちゃって、ロロ!」
「キャンキャン!」
そんな不安をよそに、さっさと始めろと言わんばかりにリサはロロに指示を出す。
それに応える様に一鳴ききするロロだが、自分からは攻めない。
頭の良いロロは、自分から攻めて準備していない内に攻撃してきたと文句を言われる事を避けたのだ。




