リサの冒険(ドルドイとの出会い1)
リサは自らの冒険者レベルを上げるため、師匠の背中が見える位置まで実力を上げるべく日々冒険者稼業に勤しんでいた。
師匠の背中を見て育ったリサは、師匠が自分にしてくれたように弱者に優しくあるべきとの精神で日々活動をしているのだが、常に師匠から貰った白い外套と短剣のセットだけは身に着けているので、その風貌がかなり有名になっている。
各国を渡り歩いてその国のギルドで活動をして成果を出し続けているせいか、この大陸中にその名を轟かせ始めている。
その名も、その見かけとその強さから尊敬の念を込めて“白套のリサ”……と。
今のリサは、大陸中に数人しかいないAランカーにまで上り詰めている。
ギルドの規定ではその上に二つランクがあり、SランクとSSランクが存在する。
この二つのランクを得ている人物は少し前までは存在していなかったのだが、リサがAランカーになる前に、突然クロイツと言う名のSランカーが史上初めて認定されたと大きな噂になっていた。
当然リサは自分の師匠である事位は確認せずともわかっており、流石!と喜んだ。
そのクロイツは引きこもっている為に実質的な最強戦力は複数人いるAランカーであり、当然国家としAランカーを囲うためにあれこれ接触してくるのだが、リサは全ての申し出を検討する素振りすら見せずに断っている。
そんなリサ、今日もとある国家……グアトロ王国にあるダンジョンと言われる地下迷宮の素材入手依頼を受けている。
ダンジョンは不思議な空間で階層別に環境が一気に変わる様な場所であり、危険な魔獣も数多く生息している一方で、その危険な魔獣を仕留めて持ち帰れば素材として高額で取引できるし、ダンジョン内部にある希少な素材も冒険者として良い稼ぎになる。
今回リサが受けた依頼は、ダンジョン中層にあるとされている回復薬の原料である薬草の採取だ。
この依頼の適正受注ランクはAランク。
ハッキリ言って、普通の冒険者では達成不可能と言う依頼を受けている。
「リサ様。いつもありがとうございます。隣国のギルドからも感謝の言葉を伝える様に言われております」
「大した事じゃないですよ。師匠に比べれば、まだまだです」
国家を渡り歩いて超高難度の依頼を難なくこなしているリサは、国家別に存在しているギルドで情報共有がなされる程ギルドに貢献しているので、少し前に他国で受けた依頼に関して受付からお礼を言われているのだが、軽く流す。
ギルドの間では、必ず自らを師匠と比べてまだまだ足元にも及ばないと言うような事を言うリサの言葉を聞いて、どれ程師匠はリサに大きな影響を与えたのか気になっていた。
一度とある受付が、本当に軽い気持ちでその師匠との繋がりに関する情報を聞き出そうとした。
その結果、噂通りに唯一のSランカーであるクロイツだと言う事は確認できたのだが……
夜通し一切の休憩なしで、クロイツの素晴らしさを延々と熱く語られ続けたと言う逸話が残っており、この情報も全ギルドに共有されたために誰も師匠についてリサに問いかけるような事は無くなった。
「もう少しで目的の階層ですかねっと」
常に付き従っている狼の魔獣に話しかけながら、いつもの白い外套を羽織りつつ短剣を握って、一見無防備に歩いているリサ。
周囲には短剣で切り刻まれて生命活動を停止している魔獣が多数転がっているが、今回の依頼の対象ではないので目もくれずに進んでいる。
この魔獣を一体でも持ち帰れば少なくとも虹金貨数枚(数千万円)になる事は間違いないのだが、リサは依頼以外の品に興味はなかった。
リサは上位ランカーになった頃から自ら依頼を選択してギルドに受注処理をお願いするのではなく、ギルド側からの指名依頼が多くなった事に一時期困惑していた。
既にAランカーとしてその辺りにも慣れてきたリサだが、全ての依頼を受けている訳ではない。
国家闘争に係わる依頼や、きな臭い匂いがする依頼は全て容赦なく断っていた。
例え依頼達成時にSランカーとしての推薦を行うと言う餌をちらつかせていたとしても……だ。
そんなリサが今回の依頼を受けた理由は、目的の薬草が回復薬の原料だったから。
エクスポーションと呼ばれる最上級の回復薬の素材の一つであり、その薬品がある事で病や欠損で苦しむ人々が助けられると思ったから受注した。
リサも魔力を使った魔法が発動できないために、怪我をした際の回復は薬品頼りになるので、エクスポーションも数本収納袋に装備している。
その金額、一本虹金貨25枚(2憶5千万円)!
Aランカーのリサだから数本購入できる金額であり、そうそう市場にも出回らない超貴重品だ。
その素材の一つを入手できればエクスポーションが作成でき、更には希釈する事で効果は落ちるがハイポーションや通常のポーションにもなるので、市場に出て民が購入できるだろうと言う期待をしていた。
気配察知で周囲を警戒しつつも寄り道せずに順調に目的地に到着し、ブチブチと薬草を採取しているリサはポツリと呟いた。
「意外と、ダンジョン内部には冒険者がいるのですね」




