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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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ダンジョンに住む者(3)

 ミュラ達の視界の先に広がっている森からは相当な力を持った者の気配を嫌でも感じるので、クロイツが言っていたSランクの魔獣だろうと理解する。


 Sランクなど御伽噺と少し前なら小ばかにできたが、あの白銀の毛並みを持つ魔獣を見てしまっては、もう否定する術を持っていなかったのだ。


 広大な土地の上には、何故か鍬がかなりの数置いてある。


「これで……耕せと言う事か。この騎士たるミュラが……」


 徐々に事情が呑み込め、クロイツの言っていた気配を察知できない監視について考え始めるミュラだが、気配を察知できなければ何もできる事はないのは子供でも分かる。


 いつ監視の魔獣によって攻撃を受けるか分からないので、悔しそうにのっそりと立ち上がると鍬を持ち、畑を耕し始めた。


「ミュラ……お前……」


 他の騎士はミュラのその姿を見て悲しそうな声を出すのだが、置かれた状況は変わらない。


 同じく立ち上がって鍬を手に取ると、現実逃避するようにひたすら畑を耕し始めたのだが、流石は腐っても騎士。


 普段体は一応鍛えていたので、広大な土地の一部ではあるが相当な面積を耕し終わった頃に漸く村人の意識が戻る。


 一塊になっていた村人が騒ぎ出した事で意識が戻った事に気が付いたミュラ達は、一旦作業の手を止めて全ての事情を話す。


 村人達も瞬間で意識を飛ばしたが、その原因であるポチの存在はかろうじて記憶に残っているので、止む無く全員が鍬を持って作業を開始した。


 疑似的な日も落ち始めた頃……


「はっ、ここも日が落ちるのか」


「キャン」


 自虐的に呟いたミュラの足元に、小ぶりの狼がいた。


 その足元には大量の種が入った袋と少々の食糧があり、そこにミュラが視線を落とすと狼は一瞬で消えた、


「あれが……監視だろうな。ここまで近接して気配を察知できない……見た目通りではないな」


 すっかり諦め、棘も抜け落ちてしまったミュラ一行。


「明日は、この種を撒く者と耕す者を分担するか」


 もう逃げられない事を受け入れたミュラは、少ない食料を全員に配布して明日に備えた。


 この作業によって得られる収穫物は五人の女性の所で消費されるのだが、残りはダンジョンで保管する事になっている。


 今後、他にも救出してきた人達がいた場合に与える為に……


 こうして地上では村人が全員忽然と消え、ゼリア帝国の騎士である四人も二度と地上で目撃される事は無かった。


 ゼリア帝国では、一部の(・・・)上層部も含めて赤い奴隷紋を持つ者の入手を心待ちにしていたのだが、一向にミュラが戻らない事から調査隊を組んで調査した結果、とある村でミュラが使用していた馬車が見つかり、それ以上の情報は一切得る事が出来ていなかった。


 因みにこの世界は奴隷が正当化されており、表立っては赤の紋章を持つ強制奴隷は違法とされているのだが、管理不要で雑に扱える事から黙認されている。


 彼らの言い分としては既に金銭を支払った財産となっているので、無暗に没収するわけにはいかない……と言う事らしい。


 当然問題になった際には、赤の紋章に対して強制性が有った事は知らなかったといけしゃあしゃあと宣っていたりする。


 当然クロイツやリサも公に赤の紋章を連れて歩いている人物を良く目撃しているのだが、今の所は非道な扱いは受けているようには見えていないので、自分達の足場をしっかりと固めてからそう言った人々も救出しようと考えている。


 その後クロイツとリサの二人は数日周辺を調査した上でギルドに戻ったのだが、ここではミュラ達の報告はせず、あくまで休暇を楽しめたと報告をしている。


 ギルドですら情報漏洩が有ったのだから、今後の事を考えたのだ。


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