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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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ダンジョンに住む者(2)

 暫く五人の様子を確認していると、彼女達は一階の扉を開けて、風呂、洗面所、トイレ、台所に感動し、次は二階に上がる。


 二階は全て個室になっており、全ての部屋が同じつくりをしており、豪華なベッドと布団、机と椅子まで付いている。


 リサが必死で村の備品を収納していたのは正直無駄になったが、実はこれ、クロイツが転移で少々遠くの大きな町に赴き、例のお金を使って揃えた物だ。


 今後この場所に住む人が増えるであろう事も想定し、全ての部屋に同じ家具を設置済み。


 出来る時に出来る事をしてしまおうと、嬉々として動いた結果だ。


 五人の女性達は各自で部屋を決めて再び一階に降りると、大きなホールの机の上には、何かの種が置いてあるのに気が付く。


これは、周辺の畑にまくようにクロイツが準備していた物で、その種を持って五人は外に出る。


 既にその目で一応は見ていたが、作物がなっている畑や、耕しているだけの畑、果実がなっている木々、奇麗な小川が存在しており、正に理想的なスローライフを送れそうな環境になっている。


 疑似的な太陽も温かな日差しを与えており、吹く風は爽やかだ。


 かなり贅沢な環境と言えなくもないが、心を深く傷つけられている彼女達にはこのレベルで丁度良い。


「あの方達は、神なのでしょうか?」


「そうかもしれないですね」


 全員が、今は各自の足元で行儀よく座って尻尾を振っている狼の魔獣を従えながら、目を瞑り頭を下げてクロイツとリサに感謝するのだった。


 一方、人として、騎士としてあるまじき行動に加担していたミュラ。


 取り敢えずクロイツの収納魔法によって、仲間の騎士と奴隷を一時的に管理していた村人達と共に収納されているのだが、今何も見えずに何も聞こえない状態が収納魔法によるものであるとは誰も分からない。


 その状態で突然周囲が若干明るくなると、リサを崖の上に残したまま移動していたクロイツと相対する。


 最早クロイツには敵わないと心底学習しているので、一切の抵抗はしないミュラとその一行。


 そのクロイツの横には、見た事もないような大きさの白銀の毛をたなびかせた狼の魔獣がおり、その銀の目で見られているだけで呼吸すら忘れるほど意識を持っていかれる。


 村人達は漏れなく意識を失い、騎士の四人も真っ青な顔をして汗を拭きだしている。


「ポチ、ちょっと向こうに行ってろ。こいつら、お前の前じゃ口も開けやしねー」


 このあり得ない魔獣が、目の前の男クロイツの命令にあっさり従ってテクテクと去って行く。


「ぷはぁ~……」


 一気に緊張から解放されて座り込む四人だが、クロイツが見逃してくれたわけではない。


「お前らは、情報源としても人質としての価値も何もない事位は分かるよな?だが、そんな連中に態々俺が手を下すのも憚られる。で、リサと相談して出した結論だが、って、リサってのはテメーらをボコボコにした俺の弟子だが、その結果、ここで働いてもらおうと思ったんだよ。俺達って優しいよな?」


 ここと言われても、ここがどこだかわからない。

 働くと言われても、何をするのかわからない。


 意識のある四人の騎士達は、黙ってクロイツの話の続きを聞こうと真剣に耳を傾ける。


「言っても信じねーとは思うが、ここはダンジョンの下層。あいつは、最下層の番人だ。そんでよ、テメーらの仕事はこの少し上にある階層で畑仕事をしてもらおうと思ってよ。収穫物はテメー等がギリギリ死なねー程度に食わせてやるよ。どうだ?」


 近くにいるだけで息が出来なくなるほどの存在感があった魔獣をその身で感じた以上、ここが例え最下層と言われても納得してしまうミュラ。


 そもそも“どうだ?”と言われて、否など言える訳もないので、力なくただ頷く。


「だよな。当然だな。だがよ?甘い考えをするんじゃねーぞ。生かしてやるのは最低限の温情だ。さっきも言ったが、飯は死なねー程度に最低限。他は最低限の睡眠以外は常に労働だ。当然テメーら程度では見つける事の出来ない魔獣による監視を付ける。そうそう、逃げ出したきゃしても良いぞ。畑周辺から離れれば、Sランクの魔獣がいるけどな」


 村人達は気絶していたので、クロイツのこの言葉をこの場で理解する必要がなかったのは唯一の救いだろうか。


 騎士達は、今のクロイツの言葉から二度と地上の光は拝めない事を悟った。


 正に自分達が強制的に攫って来た奴隷と同等の対応を受けるだけなのだが、やられる方の痛みを知らない者にとっては相当なショックになる。


「何をしょげていやがる?テメーらのせいで生活が一変し、中には死んだ人もいるだろうが?あぁ?それに比べりゃ、テメーらは自業自得だ!」


 正論を突きつけられて更に何も言えない騎士達は、突然視界が暗転して周辺の景色だけが変わった事に気が付く。


「ここがテメーらの作業場兼墓場だ。寝る時には、適当にその辺の草の上で寝とけ。あばよ!」


 ミュラ達騎士はクロイツの言葉を完全に呑み込めない内に置き去りにされるが、目の前には広大な土地があり、周辺は森に囲まれているのが分かる。


 絶望の淵に落とされているミュラ達は、暫くそこから動く事が出来なかった。


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