Bランクへ(1)
クロイツとリサは、あの五人を気遣うためにいろいろな場所の特産物を購入しては、時折ダンジョンに届けている。
もちろん闇の奴隷商についての調査は継続しているが、二つ目の村をゼリア帝国の騎士諸共潰した後には、何の情報も得る事が出来ていない。
「リサ、あいつら、どこに潜っていると思う?」
「これだけ探しても影すら見えませんからね。各国の中枢、ギルドにすら情報網を持っていると考えられる以上は私達の情報なんて筒抜けでしょうから、当面大人しくしていると思いますよ」
「だがな、腐った根を潰さねーと、また生えるからな」
「その通りですね、師匠」
相変わらずテクテクと気配察知を行いながら歩いている二人だが、敢えて街道を外れた場所を歩いている。
この二人だから出来る芸当で、普通の冒険者であれば既にあの世に旅立っているだろう。
敢えて街道から外れているのは、どこに敵の拠点があるか分からない為に少しでも情報を得られる可能性が高くなるようにしている。
「……師匠!」
「あぁ、漸くあたりを引いたか?」
二人は、通常では叫び声すら聞こえない位置にいる人物が、街道から外れた場所で追いかけられている気配を察知した。
一応その周辺には魔獣はおらず、逃げている人物二人を別々に追っている四人、合計六人がいる。
クロイツとしては転移を使う程距離は離れていないし、移動中に追われている者に追い付かれる事はないと判断して、リサと走り出す。
今後リサが独り立ちしてこのような状況を発見した際の練習をさせようと思っていた。
「リサ、追われている者の特徴、追っている者の特徴、言ってみろ」
「はい。追われているのは……師匠の大好きな女性!追っているのは、弓、杖、盾、剣を持っている、ごくごく一般的な冒険者風の男ですね」
「……一応正解だ」
何故か余計な一言がついてはいたが、クロイツが問いかけた内容に対しては正確な回答が来ているので、気配察知についてはもう問題ないと判断したクロイツ。
「って、リサ。男ってのはそう言うモンだぞ?」
だが、やはりリサの一言に対して、思わず言い訳がましいことを言ってしまうクロイツ。
リサは“師匠大好き病”なので、クロイツが“彼女欲しい病”によって醸し出している雰囲気を余す事なく察知する事が出来るようになっていた。
これも一つの異能なのかもしれない。
クロイツの言い訳には返事をしないリサだが、間違いなく聞こえている事は分かるクロイツ。
この程度の移動時の雑音で言葉が聞こえない程能力が低いわけがないからだが、こうなると敢えて無視されているので、これ以上藪を突くのは止めにするクロイツ。
「一応、今回もリサに任せる。ひょっとしたら……ねーとは思うが、冒険者側が正義かもしれねーからな。そこんとこを考えて対処しろよ?」
「はい、師匠!」
やっぱり俺の声はキッチリと聞こえているじゃねーか!と思ったクロイツだが、口にはせずに気配を消す。
逃げている女性の二人は少しでも逃げ切れる可能性に賭けているようで、夫々が別の方向に逃げている。
その二人を、杖と弓、盾と剣のそれぞれの冒険者が追っている。
互いが結構離れているので、リサがこの状況に対してどのように対処するのかを観察するクロイツ。
リサは逃げている二人の女性の少々先と、追っている冒険者の行く手に向かって一瞬で遠当を行う。
単純にその拳を、狙いをつけている場所に突き出すだけに見えるこの遠当。
その勢いによって衝撃波が生まれて遠距離攻撃を行う技であり、クロイツとリサ以外には出来る人物は今の所存在しない。
逃げている女性達と追っている冒険者の目の前に、突然地面が爆発したような音を立てて土が壁のようにせりあがる。
全員が足を止めて未だ視界が確保できない状態で立ちすくんでいるのだが、その隙に先ずは女性を一纏めにして、その後即座に冒険者も一纏めにして見せたリサ。
何が何だか分からない内に女性二人、そして少々距離が離れた場所に冒険者四人がいる……と言う構図になった。
追う冒険者と逃げていた女性達は、リサによる強制的な移動時に明らかに第三者に捕まれた感覚が有ったのだが、余りの速度に反応する事が出来ずに気がついたらこの状況に陥っていた。
当然女性二人と冒険者四人は、最大限の警戒をしている。
その全員の視線の先には真っ白な外套を羽織り、フードで顔を隠しているリサがいた。
「えっと、一先ず事情を聞かせて頂けますか?」




