ダンジョンに住む者(1)
闇の奴隷商に身内、同郷の者達を殺害、または同じ様に奴隷にされていた五人の女性達。
ある村で買い取り先への引き渡しの為に監禁されていたのだが、クロイツとリサによって救出された。
未だ何が現実だか受け止めきれないまま事態は進み、村で一晩過ごした後に移動すると言われていた。
その言葉通りに翌日にいつの間にかいなくなっていたクロイツが再び現れ、一晩自分達を保護してくれていた少女と共に簡易的な荷台を作ると、その上に乗るように指示される。
道中少々危険な場所を通るとの事で、安全は確保するが一応恐怖を与えないように視界を塞がせてくれと言われ、指示された通りに布団を頭からすっぽりと被る。
一瞬体がふわっと浮いて荷台ごと抱えられた事が分かるが、あの幼い少年少女がこれほどの力が有る事に驚く以外は、恐怖しかなかった。
ギュッと目を瞑り堪えていると、一分もしないうちに着いたとの声が聞こえて地面に下ろされる感覚があった。
これだけの短い時間でどこに移動したのか……そもそも、あの周囲にこの時間で移動できる距離に危険な場所なんてないのでは?と言う事と、その距離で安全な場所など有り得ないのではないかと言う不安はあるが、取り敢えず視界を確保するために布団を取る五人の女性達。
そこには……目の前には奇麗な小川。
視界には向こうが見える程度の小さな森があり、振り返ると大きな平原と整備済みの畑。
何故か既にいくつかは作物が植えられており、所々に果実の木も存在して、実をつけている。
実は果実のなる木や整備済みの畑はポチの力で作成したが、作物についてはクロイツが必死に転移で持ってきていた。
そもそも、このダンジョン内部で人が食べられる農作物がある畑は無かったため、ポチもどのような物を育成するのか分からずに準備できなかったのだ。
「こっちだ。来てくれ」
クロイツの声に、只々後を付いて行く五人の女性。
「ここが今日から君達の家だ。中に入ってみてくれ」
そこには、木と言って良いのか分からない程の巨大な樹木がそびえたっており、入り口にはまるで人工で作られたかのような扉がついている。
恐る恐る開けてみる一人の女性に続く残りの四人。
その中は大きなホールになっており、壁際には複数の扉がある。
その扉の開閉に影響のないように、大きな丸いホールを囲うような形で左右の壁に沿って階段が設置されており、二階にもいくつもの扉が見える。
「ここで好きに過ごすと良い。それと、君達の安全は確実に担保されている。そこは信じて欲しい。畑の作物、果実を好きに食べて、時折畑の世話をして体を動かすと良いだろう。肉は……」
「はい。こちらの狼さんが皆さんのサポートをします。かなり遠くから獲物を取ってきてくれるので、お肉が欲しい時にはリクエストしてみて下さい」
いつの間にかずらっと勢揃いしている、ポチによって準備された狼の魔獣。
五人に恐怖心を与えないように見かけだけはかなり小さく愛らしいが、戦闘力は折り紙付きだ。
そもそもこの階層には危険な物、者は一切存在しないのだが、何時イレギュラーが有っても良いように対処はしている。
「あの……何故ここまでして頂けるのでしょうか?」
最初に扉を開けた女性が、恐る恐るクロイツに問いかける。
「う~ん、上手く言えねーけど、敢えて言うならば俺の自己満足だな。ま、遠慮すんな!今まで辛かっただろ?これからは、ここでのんびり幸せに過ごしてくれ。っと、一つ聞いておきてーんだが、今後同じ環境の人をここに送り込んでも良いか?」
「はい。もちろんです」
「えっと、異性でも……か?」
「……同じ環境の方であれば、問題ありません」
一瞬のためらいの後に、決断する女性。
クロイツとしては念のために聞いただけなので、安心させるようにこう告げた。
「そうか。ただ、万が一がありそうなら、その狼に言ってくれ。今後来る連中にも同じ狼を付けるから、そもそも不埒な奴はその狼によって拘束されるから安心だけどな。それと、今後来る者と家族になる場合もあるだろう。そう言った事もその狼に伝えれば、これと似たような住処を個別に用意してやるぞ」
もう既に想像の遥か上の事態に飲み込まれているので、クロイツの言葉をそのまま受け取る女性達。
「では、今日からここでこの子達と生活してください。常にこの子達が皆さんをお守りしますので、安心してくださいね。そもそもここには危険はありませんが……私達も、時折顔を出します。問題があれば即駆け付けますので、ごゆっくり!」
最後はクロイツから事情を聞いているリサが笑顔で〆てこの場を後にする。
その後クロイツとリサの二人は少々離れた崖の上に転移して、ポチと共に彼女達の様子を観察している。
どうやら見た目可愛い狼の魔獣を与えたのは大正解だったようで、全員が笑顔でそれぞれに与えられた魔獣と触れ合い、既に笑顔が溢れている。




