とある奴隷の開放(5)
「アハハハ、あれだけ偉そうな事をほざいて味方の攻撃をあっさりと食らうのかよ!だっさ!ま、リサがそうさせたんだけど、テメーら程度じゃ理解できねーだろうな。リサ、中々良い動きだったし、効率的な倒し方だ。敵の力を利用する。落ち着いて周囲を把握できている証拠だな。随分と成長したじゃねーか!」
「本当ですか?ありがとうございます、師匠!」
クロイツを見る目が巨大なハート形になっているリサだが、あれだけの動きをしてもフードはとれていないので、その表情を伺う事は出来ない。
「そんなわけがあるか!」
前衛の騎士がクロイツとリサの話を聞いて激昂しながらリサに突進すると同時に、流石に二度同じ轍を踏まない様に、リサと騎士との距離があるうちに再び雷魔法を発動するのだが……
……ドン…ドン…ドン……
連続で行使された雷魔法を、全て難なく躱して見せたリサ。
騎士はクロイツとリサの会話から推測できる通り、有り得ないとは思っているが雷魔法の軌道が見えている様な事があっても対処できるように、リサとその周辺に連続して魔法を叩き込んでいた。
その魔法を避けるために高速で移動しているので、突撃してきた騎士はリサを追い切れずに立ち尽くしている。
「……化け物」
この一言を何とか絞り出した直後、騎士は意識を手放す。
少々遠くからこの戦いを見ていた支援魔法と攻撃魔法を行っていた二人は、いつの間にか二人目の騎士も倒されてしまい、リサが近接してくる事に恐怖を覚えて過剰な魔法を行使している。
恐慌状態の魔法など当たる訳もなく、騎士二人は勝手に魔力欠乏症に陥って気絶する。
「ここまでだな。相当良い感じだと思うぜ?そんじゃ仕上げと行くか?」
クロイツに褒められて、フードの中で満面の笑みを漏らしているリサ。
騎士とは名ばかりで、まさかの闇の奴隷商の手先に成り下がっていたゼリア帝国の四人だが、既に二人はリサとの戦闘によって意識を失い、残りの二人も戦闘と言って良いのか大きく疑問が残る中、勝手に混乱して勝手に意識を失っていた。
「師匠、なんだかあの四人が纏めて自信満々にかかって来るので、正直言うと一瞬不安になっていました。でも、師匠の教えのおかげで本当に楽に勝つ事が出来ました!」
「リサの努力の成果だろ?誇っていいと思うぜ?だが、こっからが本番だ。場合によっては人質を取られての戦闘になるからな。気を引き締めて行けよ!」
「もちろんです、師匠!」
門番が村に戻って騒ぐのは止められたのだが、無駄に底上げされた雷魔法までぶっ放してきた騎士のせいで、その音を聞いていた村人が慌ただしく動いている事は気配察知で把握している二人。
荷物を慌てて纏めている者、武器を手に取ってこちらに向かっている者、余り動きの無い者達が集まっている場所、恐らく今回引き取られるはずだった奴隷達がいる場所に向かっている者、様々だ。
「リサならどうする?」
全てを把握している事を前提でリサに話しかけるクロイツ。
この場を独り立ちに必要な知識を得るための実践訓練とする事に決めたクロイツは、リサに全ての方針を任せようと思っていた。
「先ずは、あの場所に向かっている者達の排除です。間もなく到着しそうですので、行ってきても良いですか?」
リサが、クロイツが思う最善策を返してきたので、これならば完全に任せる事が可能だと判断する。
「正解だな。大丈夫だとは思うが、気を付けろよ。それと今回の件、リサの好きに動くと良い。サポートは……不要だとは思うが、何かあればサポートするから、安心しろ。あの場所に向かっている連中は、俺の方で適当に対処しておく」
「はい。ありがとうございます、師匠!」
すっかり体力もつき、外套によって体格ははっきりとは認識できないが、一般的な年齢相当の体格まで回復したリサは、クロイツに良い所を見せようと張り切って一瞬で移動する。
その目的地は、奴隷が集められている建屋。
今正に村の外れにあるその建屋に、数人の男が到着する直前だった。
「……なんだお前は?」
「お前が襲撃者か?」
男達と建屋の間に割り込むように突然現れた、全身を白い外套で包んでいるリサ。
門近辺で戦いが有った事を知っている村民達は、既に武器を構えて臨戦態勢になっている。
「こいつ、どうやって瞬間でここに来た?」
「それよりも、ミュラ達と戦っていたのではないのか?何故ここに来られる?」
ミュラを始めとした騎士達が敗北した事までは知らない男達は、今の状況を少しずつ正確に理解し始めているので、手にしている武器の切っ先が震えている。
「貴方達にかける情けはありません。覚悟して頂きます」
再び無防備に見える状態で一歩一歩村人に近づくリサ。




