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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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とある奴隷の開放(4)

 使い慣れている武器を使用しているおかげで支援魔法の威力も上昇したのか、前衛二人から湧き出る魔力の量が一気に増加している状態だ。


「リサ!見本にしてはかなり(・・・)力量不足だが、魔力を使える奴が上位の剣術スキルを使うとああなる。リサは魔力じゃなくて……」


「大気中のエネルギーですよね?師匠!」


 やはり魔力が使えないリサに対して魔力関連に関する話をするのは少々心苦しいクロイツだが、リサはいつも通りに明るい態度を崩さないので、ホッとしながら続けるクロイツ。


「そうだ。どうだ?大した鍛錬にはならねーが、リサが()ってみるか?」


「良いのですか?是非そうさせて下さい、師匠。複数との対人戦闘は初めてですからね。相手が剣術スキルを使いこなしているのであれば、きっと良い経験になります!」


 幼い師弟が好き勝手言っているその隙にクロイツに切りかかる前衛の二人だが、クロイツは既にその場におらず、リサの隣に移動していた。


「ガキ、相当身体強化の練度が高いようだな」


「師匠はガキではありませんよ。それに、あなた方程度では師匠が相手をするには力不足過ぎます。私の鍛錬に丁度良い程度ですから、ここからは私が相手をします」


 一歩一歩、普通の速度でミュラ達に近づくリサ。


 外套とフードでその姿は良く分からないが、声や背丈から少女である事だけは間違いないと判断している四人。


 しかし、何故か強者独特の雰囲気を曝け出して歩いているリサに対して攻撃を仕掛ける事が出来ないでいた。


 所謂、“吞まれている”状態に陥ってしまっていたのだ。


 リサの歩幅であと十歩程度進めば手が触れられる程度の距離まで移動したリサは、突然立ち止まる。


「では、師匠に代わり弟子の私リサがお相手します。そうそう、その馬車の中身、奴隷の購入資金ですか?それについては攫われた人々の為に有効活用して差し上げますので、ご心配なきよう!」


 大人であるミュラが少し踏み込めば剣の切っ先は十分に届く距離にいるリサだが、無防備にも視線を外して深く一礼している。


 その姿をアホのように茫然と見ているしかできない四人の騎士。


 そもそも何故か馬車の中身も確実に言い当てられている以上、スキルの気配察知を持っており、相当練度も高いと判断せざるを得ない。


 つまり、いくら視線を切った状態であったとしても騎士達からの攻撃も容易に察知されると言う事で、非情に戦い辛い相手である事だけは間違いない。


「ガキが……調子に乗るなよ!」


 漸く我に返ったミュラが魔力を漂わせた剣で一気にリサに肉薄すると同時に剣を上段から下段に振り下ろし、既に動きが体に染みついているのか、もう一人の騎士もリサの背後を取るような位置に素早く移動して、こちらは右から左に剣を振り切る。


 剣の軌道を前後で変える事に寄り、リサの逃げ道を塞いだのだ。


……キン……


 リサは、ミュラによる前面からの上下の斬撃だけは避け、視線をミュラに固定したまま背後からの斬撃を短剣で正確に受け切った。


「このガキ……」


 魔力を漂わせている剣であれば容易く普通の剣も纏めて一刀両断にできるのだが、今のリサは同じ様に大気のエネルギーを短剣に纏わせている。


 既にリサが気配察知を持っている事は把握している騎士達だが、まさかこれほどまでに正確に対応されるとは思っておらず、想像の遥か上を行かれていた。


 だが今のリサの状態は背後の斬撃を短剣で受けている状態で硬直しており、すかさず正面のミュラが連続して下段から上段に切り上げる姿勢に入る。


 実はリサ、身体強化の熟練度が支援魔法で強化されている騎士よりも遥かに高いので、本気を出せばここまで鍔迫り合いに持ち込まれる事はないのだが、敢えて鍛錬を続けるためにこうしている。


 そこに、同じく支援魔法で能力が底上げされている後衛の一人が高位の魔法である雷魔法を使って来た。


 確実に仕留めたと四人の騎士が思ったのだが、リサは慌てずに下段から振り上げているミュラの剣の持ち手を軽く蹴り上げる。


 結果片足になっているのだが、それでも鍔迫り合いの状態を維持できているリサ。


 この刹那の時、リサに攻撃する予定だった雷魔法がリサの蹴りによって想定以上に振り上げさせられる事になったミュラの剣の先端に着弾し、剣を伝ってミュラに落ちる。


……ドドン……


「ば、ばかな!!」


 特殊な杖と、その杖を持った状態で行使された支援魔法を受けた状態でようやく発動できるほどの高位魔法である雷魔法。


 速度はまさしく光の速さであるのだが、難なくその速さに対応したリサ。


 背後から攻撃して硬直状態になっている騎士としては雷魔法の軌道など見えるわけもなく、魔法を行使した味方の騎士のミスだと判断して驚いている。


 騎士達の動揺を一切気にせず、既に目の前で力なく倒れているミュラを踏みつけながらも事も無げに一旦離脱するリサ。


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