ブサ村(3)
「じゃ、早速この家から行くか。その後はちょっと転移で各家を回って回収して来るから待っていてくれ」
各家に侵入した後に地下に忍び込むのは面倒なので、短距離転移で直接地下に忍び込んで一気に片付けてしまおうと判断したクロイツは、ごっそりと各家にため込まれていた財宝を収納すると、程なくしてリサの元に戻ってきた。
以前とは違い、リサはクロイツと少し離れるだけで悲しい表情をする事がなくなっていた事も、この作戦を実行するのには丁度良かった。
「終わったぜ。取り敢えずぱっと見は闇の奴隷商本部に繋がる情報は何もなかった。当たり前だな。本部の連中がこの程度の連中しかいねー支部に情報を渡すわけはねーな。で、今後だが、リサは自分でけりをつけたい相手はいるか?」
この時点で、クロイツは明らかに捕縛済みの村長以外の運命は決まっていると告げていた。
「えっと、私の両親が誰かの手にかかっていたのであれば、そのケリは私の手で……」
冒険者稼業をしていると、盗賊等、人を相手にする事も求められる事を知っているクロイツは少々悩んだ。
リサの年齢的にはかなり早いが、遅かれ早かれ自立するためには対人戦闘経験を積ませる事も必要だと考えているクロイツは、リサの決断を尊重する。
「じゃあ、ちょっくら村長を出すぜ」
その直後、二人の目の前には未だにウネウネもがいている村長が出現する。
……ダン……
動き回る村長の頭を踏みつけて、クロイツはこう告げた。
「おい、テメーらが闇の奴隷商の支部だって事は分かっているんだよ。取り敢えず、俺の言う事に素直に応えりゃ、この場で始末する事は止めておいてやる」
そもそも依頼は村長の捕縛と言われているのでこの場で命をとられる事は無いはずなのだが、村長はその事は知らないので、まさかの裏稼業をあっさりと暴かれた事からも大人しくなり首を縦に必死で動かしている。
「猿轡だけ取ってやる。叫びたきゃ叫んでも良いぜ。その瞬間、テメーの首は胴体とおさらばだ」
少年ではあるが、獰猛な笑みを村長に向けつつ小刀を首筋にピタピタを当てつつ猿轡だけを外すクロイツ。
ここだけを見れば、どれだけ悪党だと思えるほどの名演技であり、まさかの元王族とは誰も思わないだろう。
「テメーはリサの両親を知っているな?」
黙って頷く村長。
「リサの両親を手にかけたのは誰だ?」
「あいつらは、奴隷紋があるのにこの村から逃亡しようとした。だから、紋章の力で死亡した。誰かが手をかけたわけじゃない!」
奴隷紋は、奴隷が主人に逆らわないように、特に攻撃をしてこないように縛る事を目的としている魔法の一種であり、奴隷とされた者の首の後ろに紋章が現れる。
一度奴隷となると、主人がいなくなって紋章の効果が無くなろうとも、一生消す事は出来ない悪魔の魔法だ。
その紋章から致死となる攻撃が発動されるのは主人となった人の命令に大きく逆らった時であり、普通は奴隷紋の当初の目的通り、主人に大きな害を与えそうになった時と設定され、逃亡程度では痛みがでて碌に逃げられなくなるのが一般的だ。
当然真面な奴隷契約などしていないこの組織では、逃亡イコール死だったようだ。
村長からの話を聞いて、本当に呆れた表情を隠せないクロイツ。
横にいるリサは今の所表情に変化はなく、黙って成り行きを見ている。
「じゃあよ、その奴隷紋を刻んだのは誰だ?それと、逃亡すれば死亡と設定した、当時の主人は誰だ?」
底冷えするようなクロイツの声に、村長は一切の嘘は通じないと覚悟して事実を告げる。
「お前が来た時に門番をしていた男が奴隷紋を刻んだ。そいつが主にこの村での奴隷契約の魔法を行っている。あの夫婦は本部が即買い取りに来る予定だったので、誰が主人かは分からない。知っていると思うが、主人になるには当人の血液だけがあれば事足りるからな。購入先の人物も、間もなく手に入る商品に逃げられないように、逃亡を重罪に設定するのは当ぜ……」
……ダン……
「グググ……」
聞くに堪えない妄言を続ける村長の口に、靴を履いたままケリを加えたクロイツによって言葉が続かない村長。
口から血を流したまま再びクロイツによって収納されこの場から消える。
「リサ、これ以上あいつに何を聞いても無駄だろう。取り敢えず、門番を連れて来るから待っていろ」
「はい、師匠」
当然思う所があるのだろう、心なしか元気がないリサを気にしつつも、転移で即門番の所に向かいって村長と同じ状態にして再び戻って来るクロイツ。
「モガガガガ……モガモガ……」
何を言っているのかは分からないが、恐らく罵声やら誤解だ!やら、その程度の事を言っていると判断して、クロイツは再び小刀を出現させて喚いている男に向ける。




