ブサ村(2)
ブサ村としては周囲に危険な魔獣の存在は一切なくなっているので、今まで通りに鍬を持たせた門番を立たせるだけに留めて平常通りの生活をしている。
但し、暫くは城下町での羽を伸ばす行為だけは流石に自重する事になっていた。
この状態で数日経過しただけなのだが、村民の不満は一気に溜る。
そもそも奴隷商の支部としての活動も少々控えているので、今迄販売前までかくまっていた奴隷達に行わせていた当たり前の事、普段の生活に必要な家事や農業を自分達でする事になっており、それすら苦痛に感じていた。
「何も城下町はリベラ王国の王都だけじゃない。隣国に行けば良いだろう?」
「それもそうだな。金はあるんだ。明日あたり、取り敢えずいつもの城下町に行って、そこから馬車で出張るか?」
短い期間すら我慢すると言う事が出来なくなっている連中には、背後から死神が近づいている事は分からない。
ほぼ全ての村人が同じ様な事を考えており、数日後の豪遊を思い浮かべて楽しそうに就寝するのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「師匠、見えました!」
依頼受託後数日後の真夜中に、ブサ村が見える位置まで到着したクロイツとリサ。
もちろん二人共に気配遮断を使用した上で、身体強化による遠視と環境適応によってブサ村を視認しているので、村民の誰一人として二人が近づいている事に気が付ける者はいない。
「気配察知を使ってみろ。全員の居場所がここからわかるか?」
「……はい。ギリギリですが、わかります。誰一人として活動しておらず、寝ているようです。村民以外の気配、奴隷の様な存在はありません」
ギリギリとは言ってはいるが、この距離からしっかりと気配を察知して見せたリサ。
「正解だ。あの腐れ村長は先行してとっ捕まえる、その後はそこで改めてどうするかを検討するか」
「わかりました、師匠!」
この短い時間ですっかりスキルをモノにした上で熟練度も上げて見せたリサを見て、良い弟子だと微笑むクロイツ。
実際に他人に育成を使用したのはリサが初めてだったので比較対象がないのだが、これ程ポンポンとスキルを得た上で使いこなせている以上、相当優秀に見える。
真実はクロイツのぶっ壊れスキルのおかげなのだが、初めてできた弟子であり可愛い妹補正がかかっているクロイツにとっては、とても優秀な人材に映るのだ。
「じゃあ行くぞ」
気配を完全に遮断したまま、二人は村に侵入して村長宅に忍び込む。
門番はおらずに鳴子の罠が仕掛けてあるだけだが、環境適応で夜目が効く二人には軽く避けられている。
楽々村長の家に侵入すると、手足を縛り猿轡をかませた所で漸く異常に気が付いてもがき始める村長をさっさと収納してしまうクロイツ。
「これからの行動だが……何か気が付いた事はあるか?」
「はい。無駄に財宝らしきものが大量に各家の地下に保管されているようです。この下にもありますね。恐らく、ギルドで言っていたお金でしょうか?」
無生物の気配もきちんと掴めている事を確認したクロイツは、リサの頭を軽く撫でる。
「俺の予想では、闇の奴隷商本部への上納金も有るのだろう。この場所だけは他の家とは違って量は同じだが、価値が全く異なる物が保管されているぜ。当然貨幣も白金貨ばかりで、残りは虹金貨だ。他の家には金貨以下しかねーがな」
「そこまでわかるのですか……流石は師匠です」
無生物の種類まで見分ける事は、自分がいる直下にある物であっても今の実力ではできないリサは、只々クロイツの力に感動している。
「正直に言うと、俺はギルドの対応にも思う所がある。対応が遅いせいで既に手遅れになった人が多数いる。それに、人攫いの片棒を担ぐのが冒険者だってんだから救えねーよな。こうなると、ギルド側にも似たような人物がいるかもしれねー。だから俺は、この財宝の全てを頂く事にした。ギルドには罰も含めて、組織には当然活動資金を奪うためだ」
「師匠のやる事には間違いはありません。でも、疑われませんか?」
「当然そうなるよな。だが、これだけ大量の貨幣・財宝をしまえる場所、どこにある?俺の収納魔法以外には中々ねーだろ?この収納袋でも、精々この下にあるブツの半分程度だ」
「そうでした。やっぱり流石です、師匠!」
これだけではタダのコソ泥と言われても反論は出来ないのだが、リサはクロイツを称賛するだけなので、一応、リサにはその真意の続きを説明する。
「こいつらの資金は闇の奴隷商を潰す活動資金と、その後のサポートに使う事にする。正直俺は、金には困ってねーからな」
既に王城から相当高価な物を慰謝料代わりに持ってきているので、はっきり言ってリサを含めて毎日遊び惚けても生活できるだけの資産を持っている。
更には、高レベルの魔獣を一部納品しており、それだけでも相当な金額を手にしている。
「もう師匠、流石すぎます。やっぱり私の師匠は最高です!」
結局何を言っても褒めて来るリサだが、やはり自分も称賛された経験が極めて少ないクロイツにとってみれば心地良い。




