ブサ村(1)
「村長!あの女をそのまま開放して良かったのか?」
「仕方がないだろう。そもそも組織本部に引き渡しを拒まれた地雷物件だ。まさかあれ程化けるとは思わなかったが、俺達の秘密は掴んじゃいないだろうから問題ないはずだ。それに、ギルドでも特別な動きはない。なんと言っても、リサを囮にすべく差し出す様な村の依頼は二度と受けないと言われたからな」
ギルド職員がグレートオーガ二体の討伐の確認に来た際に事情を個別に聞かれ、口裏を合わせていなかったがために事実が伝わってしまい、ギルドから依頼拒否を言い渡されていた。
逆に言うと、闇の奴隷商の支部である事は公になっていないとも言える。
もし公になっていれば、この程度の罰で済むはずがないからだ。
このブサ村は闇の奴隷商の支部であり、一時的に攫った人々を留めておく場所でもある。
当然後ろめたい金を村民全てが保有しており、息抜きとして時折王都に言っては羽目を外している。
中には女性の村民もいるが、もちろん彼女達も組織の人間であり、同性を騙してこの村に連れてきては闇の奴隷商の本部に販売していたりもする。
裏ではこのような事を行っているブサ村だが、表は貧相な村を通しつつも中身は相当あくどい事をしている。
10年ほど前になるが、とある人物が攫った夫婦を強制的に奴隷としたが逃亡を図られ、結果奴隷紋の力によって死亡したのだが、その衝撃からか赤子が生まれ落ちた。
赤子でも育てれば金になる事を知っているので、死なない程度に育てる事にしたブサ村の村民達。
ある程度の年齢になれば、万が一死亡しても構わない雑用係として使えると考えての行動だ。
その子供は五歳程度から自分の立ち位置を正確に理解したらしく、極めて大人しく従順な下僕が完成した。
碌に食事も与えず、風呂などは以ての外なので見た目は相当酷いものだが、奴隷契約をしていない状態で従順な奴隷が出来上がった。
勝手に奴隷契約をしては本部に販売する事は出来なくなる場合が多いので、逃亡の恐れがある年齢になってしまった場合には止む無く奴隷紋を打ち込む事にしていた。
その赤子であるリサが六歳になった頃に本部に販売を申し出たのだが、本部の購買担当者は購入を拒否したのだ。
理由を聞いても答えてくれずにこの村で対応しろと言うばかりであったので、村長達は始末する事も考えたのだが、リサはストレスの捌け口にもなるし、便利に使い潰せるので、村民の総意として村で生活させる事にした。
こうして生活をしている中で村民が目撃した二体の魔獣……Bランクのグレートオーガ。
このまま何もなければ村で生活しつつも裏稼業を継続できるのだが、万が一にも襲ってこられては、いくら組織の支部とは言ってもグレートオーガ二体には敵わない。
ここまで育て上げたブサ村と言う隠れ蓑を捨てる事を嫌った村民達は、取り敢えず貧乏村である事を意識しつつ、相場よりも相当低い金額でギルドに討伐依頼を出したのだ。
既に城下町で豪遊していた事は忘れ去っている所が、所詮この程度の人物たちの集まりなのだろう。
当然仕事内容と報酬が一致していないために一向に冒険者が派遣される事は無かったのだが、グレートオーガの方にも大きな動きは無かった。
このままの状態を維持するのもアリかと考えていた所で、クロイツが討伐をしに来た!と村に現れたのだ。
村長は事情を確認するが、今日冒険者登録をしたばかりの新人単体できたと言うのだ。
この時点で、城下町のギルドで冒険者登録をした当日にブサ村に到着できると言う異常事態に気が付けていればブサ村の未来は変わっていたのかもしれないが、どこまで本当の事かもわからなかった村長達は、新人によくある適当な返しだと思い、そこは敢えて指摘しなかった。
だがギルドでの依頼書を持っているのは事実であり、明らかにギルドがこの新人の派遣を許可していると言う事になる。
事実は、強引にクロイツが受託しただけだが。
そうなると、弱い勘違い新人冒険者が依頼を達成できずに死亡するのは確実だが、相場以下の報酬を提示している村としてギルドからは何かしら攻められる可能性があり、闇の奴隷商の支部としての裏の顔を暴かれるきっかけになる可能性があると考えた村長以下村民は、リサを生贄に差し出す事にした。
新人冒険者と共に村民死亡の痕跡があれば、村としても魔獣討伐に来た冒険者に命がけで協力をした姿勢を示せるので、無駄なギルドからの指摘を受ける事はないだろうと考えていた。
こうして差し出したリサは新人冒険者と共に死亡するはずだったが、何故か生き残った上に、脅威となっている魔獣二体も討伐完了してしまった。
その時に見たリサはすっかり変わった美しさを曝け出しており、これならば今度こそ闇の奴隷商本部に相当高値で売り付けられると踏んで取り戻そうとしたのだが、あえなくクロイツに切って捨てられた。
この状況から、あり得ない事ではあるのだが闇の奴隷商の支部としての情報がリサから洩れていないかを危惧していたのだ。
情報の漏洩はリサからではないが、そもそもギルドからは目を付けられており、止めは、組織に手を貸して小銭を稼いでいる冒険者が暴走してクロイツ達を襲って返り討ちに会い、そこから完全に情報が漏れてしまっていた。
こうしてブサ村の壊滅と村長捕縛の特殊依頼を受けたのが、以前この村に訪れたクロイツと、この村で軟禁状態にあったリサなのだ。




