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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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ダンジョンにて(5)

 アロッサーラが懐かしそうに、嬉しそうに目の前の龍に話しかけているのを黙って見ている四人の見習い錬金術師達。


『ごめんね。僕も行きたかったけどさ?ダンジョンをしっかりと作ってからじゃないと、色々危ないと思ったんだよ。少し前に、僕なんかよりも相当格上のダンジョンが攻略されたって情報が流れて来たからね。そんな存在が僕の所に攻めてきたら、僕は消滅させられるか、自由を奪われるか……そんなのは嫌だもんね』


 龍の所にも漏れなくクロイツが制覇したダンジョンの情報が流れており、その情報を聞いた龍は自分のダンジョンの安全を確保するべく、他のダンジョンとは異なり外に対する情報収集ではなく中の補強に全ての力を注いでいた。


 そのおかげか2階層からAランクに分類される程の魔獣を多数配置する事ができるまでに至っていたのだ。


「それって……あの、龍さん?多分それ、大丈夫ですよ。恐らくですが、その攻略した方を私は知っています」


 直接クロイツ達からダンジョンに関する話を聞いたわけではないのだが、彼等がダンジョンを拠点にしている事は有名な話であり、彼等のファンであるアロッサーラとしてもその情報は知っている。


「そのお方は、お方達は龍さんと同じように赤の紋章を背負ってしまった人々を救って、町を作りました。そんな人ですから、無暗に他の領域を侵略する等は絶対に有り得ません」


『そうなの?少し安心できたよ。だったら僕も外に出ても大丈夫かな?』


「大丈夫だとは思いますが、絶対とは言い切れないので……地上でその方に事情を話して、龍さんの言っていた攻略されたダンジョンがその方が住んでいるダンジョンなのかを確認してからの方が良いですよね?」


 気遣いが出来る龍はこの場にいる四人にも会話を聞こえるようにしているのだが、内容が理解できるかどうかは別の話だ。


 一方で、未だに救出できていないアロッサーラの情報を掴むべく動いていたクロイツ達なのだが、やはりリージョが情報を掴む方がベルヘルトの手紙よりも早かった。


 リージョは狼の魔獣を使って情報を得たサインを送り、詳細を書き記した紙をグアトロ王国にいるクロイツに渡すように指示を出して即座に移動する。


 リージョが目的地であるがリベラ王国の近くにあるダンジョンに到着するのと、クロイツが情報を受け取って“龍と高ランカーの集い”から転移するのではどう考えてもクロイツの方が早いので、即動いたのだ。


「ハルミュレ、漸くアロッサーラが連れ去られたダンジョンの場所が分かった。行って来るぞ!」


 狼の魔獣から手紙を受け取ったクロイツは、“龍と高ランカーの集い”でアロッサーラの無事な帰還を願っている従業員の前で店長であるハルミュレにこう宣言して即座に店を飛び出すのだが、助け出せると明言する事は流石にできなかった。


 クロイツが全力で動けば他の人々には認識する事が出来ないので、全力で移動しつつ転移を使用して目的の場所付近に到着する。


 そこで気配察知を使ってダンジョンの存在を感じ取ると同時に、こちらに向かって来る強大な力を持った存在、リージョの気配を感じたので敢えて自らの気配を消さないよう……リージョを導くようにしながらダンジョンに向かう。


「師匠、あそこ……に随分と立派な服を着た者がいますね」


 クロイツが移動速度を落としているので難なく追いついたリージョ。


「どう考えても場違いだな。そうせあいつがベナマス王国の関係者だろう?あいつはリージョに任せても良いか?」


「……はい」


 リージョは自分もダンジョンに侵入した方が良いのではないかと言いそうになったのだが、本気を出したクロイツを見た事は無いがSSランカーとなった今の自分の実力でも邪魔になるだろうと判断した。


 当初の予定よりも相当時間が経過した今尚ダンジョンから戻ってこない軍の一隊を待ち続けている使者の男は、クロイツがダンジョンに侵入した際に起きた突風を感じた直後に目の前に黒尽くめの男がいる事に気が付いた。


「だ、誰だ?なんだ、突然。この私に用か?シス連合国のベナマス王国所属外交官であるこの私、ダンハルトに何の用だ?」


 真っ黒な外套を羽織り、真っ黒なフードを被った目の前の人物に国家としての立場を明確にして脅しをかけるダンハルト。


「私は“黒套のリージョ”。貴方は今回赤の紋章を仕入れて囮にしようとしたベナマス王国の一人である事は間違いないようですね。無駄な自己紹介ありがとうございます。これで余計な手間が省けましたよ」


 これ程有名になっているSSランカーを前にして反撃できる強さを持っているわけもなく、前触れなく突然目の前に現れたその実力を目の当たりにして、赤の紋章絡みでのクロイツを始めとした“白套のリサ”や“黒套のリージョ”の行動は有名になっている事を思い出した結果、胸倉をつかむ勢いでリージョに詰め寄っていたダンハルトはその場で膝から崩れ落ちる。


「どうやら、ご自分の立場を理解して頂けたようで何よりです。今私の師匠がダンジョン内部であなた方が囮にした赤の紋章を救出しに行っていますが、仮に誰か一人でも欠けていた場合、どうなるかわかりますね?」


 リージョはベナマス王国に侵入して情報を得ていたので、今回アロッサーラを含む五人の赤の紋章持ちを伴ってダンジョンに侵入し、グアトロ王国からの依頼である魔核の入手を行う事は知っているので、脅しをかけておく。


 この最中でもクロイツは魔獣を極力相手にしないように行動して気配察知を使いながら、1階層ずつ虱潰しに調査している。


「チッ、本当に最悪の場合、全てダンジョンに吸収された後って事も有り得るな」


 焦る気持ちを抑えつつ、必死で気配を探りながら階層を降りて行ったのだ。


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