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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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171/214

各場所で(1)

 ベナマス王国に向かって進んでいる二人の軍人と、五人の赤の紋章持ち。


「想定よりも一人増えたが、まさか紋章持ちだとは思わなかったな。それも主のいない紋章持ち。暫く見なかったが、いる所にはいるんだな」


「俺達では紋章をつける事が出来ないからな。騒がれる事も無ければ、今後のダンジョン侵攻の作戦に活用できる人材が増えた事は喜ばしい事だろう」


 通常馬車で5日程度、軍人であればもう少し早く到着できるのだが、普段鍛えていない五人の赤の紋章持ちを無駄に急がせるわけにはいかないので、使者と共に通常通りの移動速度でベナマス王国に向かっている一行。


 漸く意識を取り戻したアロッサーラだが、突然の環境変化に戸惑い大声を出そうにも、何故か騒ぐ事も出来ずに動けなかった。


「お、気が付いたか。俺がお前の主だ。まさか赤の紋章を持っているとは知らなかったが、有効活用させてもらったぞ」


 軍人の一人が意識の戻ったアロッサーラに向かいこう伝え、事実アロッサーラも初めての感覚だが決してこの男の命令には逆らえないと本能で悟ってしまった。


 元Aランカーの“爆炎のハロルド”程の経験と力、豪胆な心があればそこまで思う事は無いのだろうが、か弱い女性で初めて主の設定がなされたアロッサーラでは抗う術を持ち合わせてはいない。


 一方で、いつもであれば翌日の昼には起きて掃除や洗濯をしているシシリーとアロッサーラを見かけない事から店長であるハルミュレは二人の部屋を訪問したのだが、当然人知れずに攫われた後なので、どこを探しても二人を見つける事は出来なかった。


 大騒ぎになった“龍と高ランカーの集い”ではその日の夜の営業はできる状態ではなく、店に来てくれたお客に対しては二人がいなくなってしまった事を伝えて、その情報があればいつでも教えてくれるように必死で頼んでいた。


 しかし、たいして力のない者達の集団なので有益な情報などあるはずもなく翌朝を迎えてしまったので、暫く店を閉めて情報収集をする事にしたハルミュレだ。


 自分達が赤の紋章を持っているので、仮に攫われたのであればその行く末がどうなるのかは考えるまでもなく、気持ちは焦るばかり。


 動転していたので客にも情報収集を頼んでしまったのだが、冷静に考えればこの行為自体も二人を危険な状況にしてしまう可能性があるのだが、そこはクロイツ達のファンと言う事で赤の紋章にも寛容だと信じる他なかった。


 ハルミュレは、数日経過後に1階の店舗に全員を集めるとこう宣言する。


「二人の部屋には、荒らされた形跡もありませんでした。騎士の方々に伝えて助力を願った場合、人によってはこの紋章に気が付いてその後どうなるかわかりません。ですから、私はダンジョン町と直接商売をしているベンゾン様に頼ろうかと思っています」


 ベンゾンは、このグアトロ王国で唯一直接ダンジョン町と商売が出来ている存在で、高純度の魔核を競売にかけて一躍有名になっている。


「今、彼方(ダンジョン町)に行かれていない事に賭けるしかないですが、もう時間的猶予は有りません。では行ってまいります!皆さんは自衛に努めていてください!」


 数人がハルミュレに同行すると申し出たのだが、今後どのような状況になるか不明である為に仮に今日の夜までに自分が戻らなければ夜の闇に紛れて逃げる準備をするように言い聞かせた。


「ここですね」


 立派な屋敷の前に到着したハルミュレは、意を決して門の近くで作業をしている女性に話しかける。


「あの、大変申し訳ありません。ベンゾン様はいらっしゃいますでしょうか?ダンジョン町のクロイツ様に至急ご相談したい事があるのです!お願いします!!」


 この屋敷には、ポチが準備した狼の魔獣やSランク魔獣のポイズナックが存在する。


 ポイズナックはベンゾンに付き従っているので、この魔獣がここにいると言う事はこの屋敷にベンゾンがいるのだが、そこまでは知らないハルミュレは祈る気持ちで問いかけている。


 ある程度ベンゾンから狼の魔獣の力を教えられている使用人は、魔獣が大人しくしている様子を見てハルミュレが危険な存在ではないと理解して主であるベンゾンに取り次ぐことにした。


「初めまして。私がベンゾンです。さ、おかけください。何やらクロイツ様にお願い事があるとか……明後日にここを出立する予定ですので、内容によっては直接お伝えできると思いますよ?」


 ベンゾンは好意で言っているのだが、ハルミュレにしてみれば明後日出発して移動に5日程度、それでは絶対に間に合わない確信があった。


「じ、実は……私はクロイツ様達のファンの方々と共に楽しめる“龍と高ランカーの集い”と言う名前のお店をしておりますハルミュレと申します。数日前に私共の従業員であるシシリーとアロッサーラと言う女性が失踪してしまったのです。それで……」


 ここで自分も赤の紋章持ちであると明かさざるを得ないので、クロイツに認められている人物相手とは言え相当なリスクを負う為に少し逡巡してしまうハルミュレ。


「“龍と高ランカーの集い”ですか。フム、わかりました。皆まで言わなくても大丈夫です。そう言った事でしたら、大至急対応する必要がありますね。直ぐにクロイツ様に連絡させて頂きますので、少し失礼しますね」


 実はベンゾン、クロイツ達三人から“龍と高ランカーの集い”については詳しく聞かされており、素晴らしい店だと聞き及んでいた。


 その店主からの助けであれば、即クロイツに伝える必要があるだろうとポイズナックに手紙を持たせてクロイツに今わかっている状況を伝える。


 待つ事10分程度。


「ベンゾン様、クロイツ様がお見えです!」


 早くもクロイツが屋敷の前にやってきた。


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