闇の奴隷商人襲撃(1)
あの日から毎日、一応Dランク程度までの依頼を受けるようにしていたクロイツとリサ。
この程度のレベルであれば確認業務が行われる事が無い為に、即日報酬を得る事が出来ている。
今日もEランクの依頼を達成し、ギルドの受付に二人で並んでいる。
「お疲れ様でした。クロイツ様、リサ様。先日のブサ村での依頼の件、調査が終了しましたのでお時間宜しいですか?」
こうして再び個室にいる受付とクロイツ、リサ。
「ブサ村からのBランク討伐依頼ですが、達成された事がギルドでも確認できました。同時にリサ様の扱いについても、事実であった事を確認しております。村長に対してギルドは罰を与えられる立場にはありませんが、囮を推奨するような村に対して、以降は依頼を受託しない旨通達しております」
ある意味、辺鄙な場所にある村にとってみれば完全に見捨てられた事になる。
そもそも本来Bランク一体の依頼で最低でも白金貨(100万円)以上の報酬を提示するべきところ、二体の対処に対して金貨一枚(10万円)での依頼を出す様な村だ。
本当に貧しければ話は変わり、場合によっては不足分の報酬をギルドが補助をする場合もある。
今回ギルドがそのような対応をしなかったために長く塩漬けになっていた依頼だが、その理由は、村長を始めとした村民達が私腹を肥やしていると言う情報を掴んでいたからだ。
辺鄙な場所にある村で見た目貧層ではあるのだが何故か無駄に食糧事情も良く、時折村民達が城下町であり得ない程贅沢に豪遊する様子が目撃されていたのでこの辺りの調査を徐々に始めていたのだが、残念ながら未だに結果が出ていなかった。
クロイツ達にはこの部分は報告していないが、そう言った事情も含めて完全に見放される事になったブサ村。
今後同じような脅威にさらされた場合にはギルドを通さずに直接冒険者に対して依頼を行うしかなく、依頼金の持ち逃げすらあり得る立場に成り下がったのだが事はそれだけでは済まなかった。
「先ずはブサ村からの報酬の金貨一枚(10万円)と闇奴隷商人の情報を得られたことによる報酬として、本来の適正報酬不足分である白金貨二枚(100万円)をお支払いいたします。それと、クロイツ様はDランクに昇格となります」
机の上にキラキラ光る硬貨を並べた後に、新たなカードと交換する受付。
クロイツはこの程度の硬貨は見慣れているので顔色を一切変えないが、リサは目を大きく見開いている。
「フフフ、クロイツ様はやはりただの冒険者ではないようですね」
「……いや、驚きすぎて表情に出なかっただけだ」
まさかここで鋭い突っ込みが来るとは思っていなかったので、慌てて取り繕ったような言い訳をする。
「そう言う事に致しましょう。無駄な詮索は互いの信頼関係を損ないますから。実はこれからが本題です。闇の奴隷商人の全貌は残念ながら掴めませんでしたが、その支部とでもいう場所は判明しました」
「それは何よりだ。じゃ、俺達はこれで!」
この後の展開が予想できたクロイツ。
間違いなく討伐隊に入れと言われるだろうと思い、その場所に攫われている人々と同じような環境に置かれていたリサを連れて行きたくないクロイツはさっさとこの場所から立ち去ろうとする。
「お待ちください、クロイツ様。その場所はブサ村なのです」
想定すらしていなかった言葉に、流石のクロイツも眉を顰めながらも浮かしていた腰を落ち着ける。
クロイツの心中は穏やかではない。
当然あの村にいたリサも奴隷の契約がなされていないか一瞬心配になったのだが、先日受付にそのあたりの調査をされて問題ないと判断されたと直接リサ本人から聞いているし、奴隷についての知識が少なからずあるクロイツも項に紋章がないかは確認済みだった事を思い出した。
リサの事になると少し冷静になれない自分に驚きつつも、ブサ村についての話を聞くべく席に着くクロイツだ。




