魔核のその後
グアトロ王国にある競売場にベンゾンによって持ち込まれたダンジョン町産出の魔核は、一品の金額としては至上最高額の虹金貨500枚(50億円)で落札されている。
「これほどの金額がかかるとは思いませんでしたが、資料を見るだけではなく実物を持って確信しましたよ。この投資は正しかったとね!この素材であれば間違いなく投資分は容易に手元に帰ってくるでしょう。フフフフ、以前の魔核の欠片も驚きましたがね」
透明度の高い……即ち純度の極めて高い魔核を手にしてにやけているのは、ベンゾンが持ち込んだ魔核を落札した男であり、彼はグアトロ王国の名産であるポーションを作成する錬金術師組合に所属している男。
普段競りに参加して、冒険者ギルドから直接購入できなかったポーション作成用の素材を購入する仕事をしていたのだが、競りが開始して少しした後に改めて配られた出展品の紹介資料を見て、慌てて会場から飛び出した人々のうちの一人だ。
彼もベンゾンの予想通りに組合本部に即連絡を取って魔核を競り落とす際の使用金額上限を確認していたのだが、今まで見た事も無い魔核であり、次回の納品は未定と言う情報を得た組合の上層部は上限を設けなかった。
今回最後まで競ってきた貴族もいたので金額は跳ね上がったのだが、競り勝って現品を手にした際に絶対に損はないだろうとの確信を得て安堵して組合に戻る。
「こちらです。詳細が記載されていた通り、いえ、正直想像以上の極上品です。出所はクロイツ率いるダンジョン町ですから、次の納品は未定と言う触れ込みではありますが……必ず次もあると考えています」
「確かに、噂によればダンジョンを完全に制御できているらしいからな。であれば、純度の高い魔核を手に入れる事も容易いだろう」
「私もその意見に同意するわ。そもそもあの町が品を卸す理由は……あそこは赤の紋章ばかりの町なのでしょう?紋章持ちは安全を確保する以上は外で働けないので、生活物資を購入する金銭を得る事以外には考えられないから、今回得た分を使い切る前に再度納品される可能性は高いと思うわよ」
魔核その物を目の前にして話し出す幹部達だが、その視線は見た事も無い純度の完全体とも言える魔核から外れる事は無い。
「しかし、本当に素晴らしい魔核だ。これを素材にすればエクスポーションを何本作れるのだ?以前研究用に購入したポイズナックの魔核の欠片よりも上等ではないか?」
「これだけ純度が高い魔核は見た事がありませんので、当然どれくらいになるかは想像になりますが……今迄の経験から、最低でも30本以上は作れると思います」
「30本か……通常の販売価格であれば、総額虹金貨750枚(75億円)。良いじゃないか!」
ここの所はSランク魔獣騒動が落ち着いているので、市場では以前のような供給不足と言うわけではないのだが、それでもポーションの需要は底堅い。
そもそもエクスポーションは非常に高ランクの冒険者が惜しげもなく購入していくし、薄めたハイポーションやさらに薄めた通常のポーションも根強い需要があるのだ。
「これほどの利益を出せるとは……今迄必死に素材採取依頼を出していたのがバカバカしくなりますな」
誰が言ったか、この一言をきっかけに錬金術師組合の上層部は次の出展についての話に移行するのだが……
「どう見ても、公益性の高いポーションと言う製品の素材になり得る貴重な素材を独占するのは悪ではないかと思うのだが、どうだろうか?」
「確かにその通りよ。本来公益性の高い物、それに準ずる者はしっかりと管理されるべきなのよ」
私利私欲に溺れた発言が出始める。
管理と言う面であれば、しっかりとクロイツ達も考えて安易に納品する事はしないと決めているので問題ないのだが、彼等、彼女達の言う管理とは錬金術師組合での管理に限定されている。
結局は自分達が供給量を自由に操作して値崩れが起きないように調整の上、しっかりと利益を確保する事だけが重要なのだ。
「であれば、その旨を無知なダンジョン町に進言すべきではないかな?」
「確かに。あの連中に住む者達では錬金術ができる訳がありませんので、この素材の有用性、そして本当の重要性を認識できるわけもない。その辺りを教えつつ、私達がしっかりと管理するのが世の為ですね」
勝手な理論で盛り上がっているのだが、破格の利益が簡単に出せる見込みが立った事から、誰もこの謎理論に対して異を唱えない。
「では、5日程の距離になりますが早速向かいますか?」
「そう言えば、この魔核を仕入れた商人……ベンゾンでしたか?その者の扱いはどうしますか?」
「ハハハハ、両親から引き継いだ商会を潰して行商人になるような人物など、捨てておけば良いのではないか?」
「そうですわ。私達が直接ダンジョン町と取引をするのであれば余計な費用も発生しませんから、その方向で行きましょう」
その勢いのまま魔核をエクスポーションに加工する為に数日が経過し、ベンゾンとリージョの後を追うように組合幹部がダンジョン町に出立した。
「想像以上の魔核でしたわね。まさか35本もエクスポーションを錬成できるなんて、初めて見ましたわ」
予想以上の利益を数日でたたき出したので、興奮冷めやらないまま幹部は馬車に揺られてダンジョン町を目指している。
この組合幹部の情報は、リージョはベンゾン関連やリリアーナの事で手一杯だったので掴む事が出来ていないまま、ダンジョン町に到着して嬉しそうに報告する。
「師匠、思った以上に高値が付きましたよ!」




