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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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グアトロ王国ベンゾン宅滞在(1)

 競りの会場から出てくる三人と、姿を消している狼の魔獣一匹。


「いや、初めての競り、楽しめました。貴方……」


「リリアーナと申します、リージョ様」


「リリアーナさん。私の我儘でお待たせして申し訳ありませんでした。リリアーナさんをダンジョン町にご案内しますが、もう少し体力をつけてから移動する事にしますので、よろしくお願いしますね。そこは楽しく生活できる場所で、もちろん今この時からリリアーナさんの安全は絶対に保障します」


 リリアーナと名乗った赤の紋章を持っている女性の素性は粗方聞いており、物心ついたころから今の立場であり故郷もわからず身内も不明との事だったので、殊更これ以降は安全である事を強調するリージョだ。


「そうですね、それが良いでしょう。どうですか?どの道私も数日後には再びダンジョン町の皆様から依頼された品々を購入して向かうので、同乗されては如何でしょうか?」


「そうして頂けると助かります、ベンゾンさん」


「いえいえ、こちらこそ安全が担保出来て助かっています。では、その間は是非我が家でお寛ぎ下さい」


 まさか一瞬で虹金貨500枚(50億円)を手に入れた人物とは思えない程の落ち着きを見せているベンゾンだが、厳密に言えばベンゾンの取り分は出来高の20%であり、それでも虹金貨100枚(10億円)の利益を得ている。


 実はベンゾンのこの落ち着き払った態度は表面を取り繕っているだけで、次の行商時に襲われないか、最悪は今日の帰宅途中に襲われないか戦々恐々としており、喉はカラカラ、手足は小刻みに震えている。


 もちろんリージョはその様子を完全に把握しているので、確かにリリアーナの体力をつける名目もあったのだが、無理なくベンゾンを護衛できるように話を振ったのだ。


「では移動しますので、どうぞ!」


 再び馬車に乗り込み移動するベンゾン一行。


『やはりいますか……どこにでもいるハゲタカのような連中ですね。この際私の存在を明確にした方が良いのでしょうかね?』


 リージョがこの馬車をつけてくる不埒な存在に気が付かないわけはないが、御者をしているベンゾンは不安げに周囲に視線を向けているだけで追跡している人物に気が付いてはいない。


『ここで私が離席しては、リリアーナさんやベンゾン殿も不安になりますね。ここは……』


 結論が出たリージョは、狼の魔獣に依頼する。


「お願いできますか」


「キャン」


 リージョにだけは見えている狼の魔獣に対処してもらう事にして声をかけると、リージョの意図を正確に理解して不埒な事を考えていた一行を一瞬でボコボコにして路地裏に捨てた挙句に冒険者カードを没収してきた狼の魔獣。


「流石に早いですね。ありがとうございます」


 手元の冒険者カードを見ているリージョは、どれもこれもEランクの雑魚ばかりであった事に安堵すると共に呆れている。


『そう言えば、こっちの方角はグアトロ王国のギルドでしたね。私の、私とリサの生まれ故郷とは言えあまり良い思い出は有りませんが。後でこの連中の所業と共にカードを渡しておきますか』


 リージョ程の立場になればギルドでの発言力、信頼度はギルドマスターを遥かに凌駕する立ち位置になっているので、警告を出しておく事にした。


「着きました。どうぞ」


 考え事をしている内に到着したようで、気が付けば立派な屋敷とも言える建屋のある敷地の中に入っていた。


「ベンゾンさん、立派なお屋敷ですね。何故これほど立派なお屋敷をお持ちなのに行商を自分で行っているのですか?」


「ははは、お恥ずかしい。これは私が成し遂げた成果ではないのですよ。私の両親が成し遂げた成果……それを行商まで縮小してしまったのが私なのです」


 無意識で地雷を踏んでしまったと後悔したリージョは、次に何を言えば良いのかを必死で考えるのだが……このような経験が無く中々対処が出来ない。


「ですが、今回皆様、ダンジョン町との商売が成功していますので、このままダンジョン町だけの行商を続けて行く所存です」


 悩んでいるリージョをよそに、最近かなり業績が上向いている事に手ごたえを感じていた所、有り得ない程の成果を得る事が出来たので落ち込む素振りは一切ないベンゾン。


「そ、そうですか。こちらこそ末永く宜しくお願いします」


 勝手に窮地を作り、いつの間にか乗り越えられていた事に安堵したリージョは、次からは余計な事は絶対に口にしてはいけないと厳しく自戒していた。


 広い屋敷に対して少々アンバランスな使用人の数だが、事情を把握したリージョはその件については一切触れず、これから元に戻って行くだろうと思いつつも今後リサやクロイツが来た際に同じ事をしでかさないように情報だけは共有しておこうと決意する。


「今日は、ダンジョン町の依頼品を買い出しに行ってまいります」


 宿泊3日目ともなると、襲撃が無い……実施は狼の魔獣やリージョがきっちりと対処しているのだが、その事実を知らないベンゾンは一切襲撃が無かったと思っており落ち着きを取り戻して、一人で外出できるようになっている。


 もちろんこの時も陰から狼の魔獣が護衛についているのだが、リージョがその立場を使って冒険者ギルドに対しても厳しく警告した事から、今日は襲撃の気配はなかった。


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