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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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ダンジョン町での生活(リージョとベンゾン2)

「本当に、これが普通と考えては絶対に早死にしますね。そもそも、軽く見まわしただけでもこれだけのSランク魔獣がいる事自体が異常ですし、人族を前にしてこんな姿勢をとってくれる事自体が有り得ませんからね」


 目の前のポイズナックが完全服従の姿勢を維持してくれているのを見て、近づきながら自戒する行商人のベンゾン。


「えっと、リージョ様に荷物を積み込んだ後に出立しますと伝えて頂けますか?」


 ある程度の距離でこう告げるベンゾン。


 いくら服従の姿勢をとっているとは言え、やはりこの町の住民とは違い接触する時間が短いので恐怖心からこれ以上近接する事は出来なかった。


「キィ」


 ゆっくりと立ち上がったポイズナックは、軽く頭を下げて小さく鳴くと飛び去って行く。


「本当に……信じられない状況ですよ」


 呆れたような、感心した様な言葉を呟きながらも、馬車を預けている場所に向かっていくベンゾン。


 何故かそこにはもう既にリージョが待ち構えており、荷物も積み込まれた後だった。


「も、申し訳ありません。私がするべき事なのに……ここまでして頂くなんて、本当にすみません」


「私が来た時には積み込みはほぼ終わっていましたので、何もしていませんよ。お気になさらずに」


 ポイズナックの連携により、馬車を預けている場所を管理している人物にも連絡が来たので、気を利かせて荷物を積み始めていたのだ。


 この町では通常夜間は門を閉める……とは言っても物理的に閉じる構造をしているわけではなく、強化済みのグレートオーガが門の前に複数体陣取って入国できないようにしているのだが、入国担当の二人、ミリアとレスレがこの場に来て指示を出せばグレートオーガは防壁外周に散って行く。


 今日はまだ早かったようで門の前にはグレートオーガ数体分の大きな背中が見えるのだが、認められている人材や町民は出入り自由なのでオーガは視線を町の外に向けたままそっと足をずらして通れるようにしてくれる。


「では行きましょうか、ベンゾンさん」


「5日程になりますが、宜しくお願いします、リージョ様」


 グアトロ王国方面の街道に向かうと、街道脇には各国から来た様々な立場の人々が野営をしていた。


 まだ相当早い時間ではあるのだが街道とは言え見張りを置いているので、町から出てきたリージョとベンゾンの姿は目撃されている。


 いくら“白套のリサ”と“黒套のリージョ”の姿を模倣する人々が増えているとは言っても、ダンジョン町から出てきた黒套は本人以外には有り得ないので、周囲の視線はリージョと共に座って御者をしているベンゾンに注がれる。


「いや、リージョ様と共にいるだけでこれだけ注目を浴びるとは……逆に、私が一人で行動している際にも陰ながらリージョ様に守られていると思われて安全になるかもしれませんね」


「そうなると良いのですが……そもそも、襲われない事が一番ですよ、ベンゾンさん」


 呑気に会話をしているのだが、一応早朝なので周囲に迷惑をかけないようになるべく静かに……つまり相当ゆっくりと移動しているのだが、そのおかげか既に通り過ぎた一行がベンゾン達を追いかけてきて追いつかれる。


「とまれ!」


 一応指示通りに即止まるベンゾンだが、この時間にこれ以上騒がれて周囲の迷惑にならないように気を遣っただけだ。


 逆にベンゾン達に止まるように命令した一行は、一回の命令で従った事に満足そうにしながら近づいてくる。


「お前はあの町に出入りしている行商人の内の一人、それと……こいつは驚きだ。本物の“黒套のリージョ”か?」


 恐らく野営のテントの中で寝ていたのだろうか、移動中のベンゾンとリージョを見ていない一行の主のような存在が尊大な態度で話しかけるのだが、リージョはこのような雑魚に一切反応する事は無く呆れた表情で見ているだけだ。


「ご指摘の通り、こちらはSSランカーである“黒套のリージョ”様で、私はダンジョン町と商売をさせて頂いていますベンゾンと申します。で、この度はどう言ったご用件でしょうか?」


 一応話しかけた当人としては最終的にはリージョに話しかけたのだが、完全に無視された事に少々機嫌を悪くする。


「そ、そうか。リージョは口もきけない存在か。まぁ良いだろう、用件を伝えよう。この俺、伯爵家の出でありながらも冒険者としてCランカーになっている“英雄のシュレン”を指導させてやる。ありがたく思うんだな。この俺を指導した事で“黒套のリージョ”の名声も鰻登りになるだろう」


 リージョが冒険者になってランクを上げたのは、両親の仇……闇の商会長や幹部であり叔母であるミューテルに対する情報を得るために必死で力をつけていたのだが、その一件が終わったので冒険者のランクや名声には一切興味が無かったのだが、ダンジョン町の為に以前の伝手も使って世の情報だけは仕入れている。


 その情報によれば、冒険者の二つ名はいつの間にかつけられるのだが……公に認められるのはAランカー以上であり、現時点で地上にいるAランカー以上はダンジョン町にいる三人しか存在していない。


 つまり、目の前のCランカーと言う立場を自慢げにしている“英雄のシュレン”と言う二つ名は自称であり、そもそもリージョの情報でもそのような名前の冒険者は聞いた事が無かったのだ。


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