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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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商人とグアトロ王国へ(1)

 あまりにも尊大な態度に心底あきれてしまうリージョと、流石にこれはないだろうと頭を抱えたくなっている行商人のベンゾンは無言になる。


「それ程感動したのか?なに、伯爵家の力を持つこの“英雄のシュレン”の力が有れば、本来は自力でAランクになれるのだが……もっと時間を短縮したいと思ったのだ。その手助けができる事を光栄に思うのだな」


 どこまでも勘違い男のシュレンはリベラ王国の伯爵家次男であり冒険者のCランカーである事も事実だが、リージョの予想通りに二つ名は勝手に自分でつけており、当主である伯爵からは手に負えないバカ者と言う事で放逐された存在だ。


 そうは言っても立場がある事は事実なので、廃嫡しつつも同じように手に負えない騎士を始めとした一行を相当な金銭を渡してシュレンの護衛と言う名の元に伯爵家を解雇していた。


 流石のリージョも、ある一国の伯爵家の次男の廃嫡までの情報を掴む必要性を感じていなかったので知る由もない。


 シュレンの護衛の立ち位置の元騎士、現冒険者達もシュレンの背後から何の反応も示さないリージョを睨んでいるのだが、ここで漸くリージョはフードを外して、その深淵まで除くような黒目でシュレンを見る。


「は~、相当なバカですか?なぜCランク程度を私が時間をかけて鍛える必要があるのでしょうか?私のメリット……あなたを鍛えた事による名声?罵声の間違いではないですか?そもそも名声には興味ありませんから、他を当たってください。そうそう、妹のリサも同じ事を言うと思いますし、まして師匠(クロイツ)はもう弟子はとらないですから、無駄ですよ」


「な、何を不敬な!それに、弟子にランクを抜かれるような腑抜けに教えを乞う事など、この“英雄のシュレン”がするわけがないだろうが!」


 あまりにも大声で騒ぐので、周囲で野営している人々は見張り以外も起きて注目してしまっている。


「一度しか言いませんから良く聞きましょうか、自称(・・)英雄さん。師匠は冒険者のランクには全く興味が無いのですよ。それに、私やリサがSSランクになれたのは全て師匠の指導のおかげです。当然、今私とリサが全力で同時に師匠と対戦しても、手も足も出ませんよ。外聞だけを気にする英雄さんが理解するには難しいかもしれませんがね。では、行きましょう、ベンゾンさん」


「は、はい」


 街道の中央に陣取っているシュレン一行を避けるように進むベンゾンだが、背後から叫び声が聞こえる。


「ま、待ちやがれ!ここまでコケにされて黙っていられるか!」


 何もコケにしていないのだが、自分の勝手な言い分が通らなかった際には常にこのように逆切れしていており、その態度に変化が見られなかった事が原因で廃嫡されたのだが、未だに改善される事は無いシュレン。


 再び進路を防ぐ位置に急いで移動すると、何と武器を抜く。


「おい、謝罪するなら今のうちだぞ!」


 周囲の者達は冷静なので、この事態を見て有ろうことかSSランカーに難癖付けた大バカ者がいると思いつつも、巻き添えが無いか心配になっている。


「仕方がありませんね。少し調教(・・)しましょうか」


「ちょ、調教だと!」


 真っ赤になるシュレンと背後の騎士崩れの冒険者達は、正に飛びかからんと力を入れた直後に意識を失う。


 周囲の者達から見れば、切れ散らかしたシュレン一行が突然全員前のめりに倒れたのだが、実際はリージョが暗器で軽く少々意識を刈り取っただけだ。


「皆さん、朝も早くからご迷惑をおかけしました。せっかくですからこの場を借りて一つだけ。ダンジョン町に入るには相当厳しい審査を通過する必要があります。こちらにいらっしゃるベンゾンさんのように認められればいつでも大歓迎ですが、そこに無様な醜態を晒している様な人材が認められるような事は絶対にありません。それと、弟子になりたい、鍛えてもらいたいと言う要望は誰であっても、どんな理由であっても受け入れられる事はありませんので、悪しからず」


 表情を変えずに座ったままこれだけ伝えたリージョは、再びフードを被るとベンゾンに進むように促す。


「行きましょうか、ベンゾンさん」


「そ、そうですね」


 白目をむいて泡を吹いている一行を避けて進む荷馬車を見送る周囲の者達は、どうやって攻撃したのかは一切わからないのだが、倒れている一行は間違いなくリージョの攻撃によるものだと理解して自分達とはあまりにも差がありすぎると認識する事が出来ていた。


 そのおかげか、リージョが絶対にありえないと言っていた“鍛えてもらいたい”と言った希望を持つ者達、この日この場所に居た者達は黙ってこの場を後にしていたのだ。


「これで入国の処理をしているお二人の手間が少なくなれば良いのですが……町としてはベンゾンさんのような方が増えてくるのが希望なのですが、上手く行かないものですね」


「そう言っていただけるとは恐縮です。まぁ、人は縁ですから、中々難しい所は有ります。行商人として長く活動している私でさえ、人とのお付き合いはまだまだ難しいと感じていますからね」


 ダンジョン町から離れるにつれて街道脇で野営をしている人々の数は減っており、日も登ってきた事から少々速度を上げて移動する事にしたベンゾン。


「これほどまでに安全な移動ができるとは……安全な街道でも日に数回は最低のFランク程度の魔獣に遭遇していたのですが、全くその気配すらありませんね。これもリージョ様のおかげでしょうか」


 実際は気配を消してリージョに同行している狼の魔獣によるものなのだが、こうして5日程の移動を安全に終える事が出来ていた。



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