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王都にて(2)

 依頼達成の報告をしている際に、受付から厳しい顔で苦言を呈されるクロイツ。


「ですが!そもそもクロイツ様は登録したてのFランク。ギルドの規定上、受付としてはランクを大きく外れる依頼を受注させるのは冒険者を死地に赴かせる事になるので基本的には禁止されています。何か切羽詰まった状況と判断して認めてしまいましたがクロイツ様が依頼に向かっている間、気が気ではありませんでした!」


「えっ?俺の事を心配してくれていたと言う事?もしかして……惚れた!」


……ダン!……


「うひぃ…」


 思わず口に出してしまった希望的観測だが、言葉ではなく机を力一杯叩くと言う行動で否定した受付。


 クロイツは情けない反応をするだけで、黙り込む。


「良いですか?そもそもFランクではBランク二体の対応など出来る訳がありません。確かに依頼達成のサインは本物、持ち込まれた魔獣も本物の様なので、後程あの村周辺の調査は行いますが、そこでグレートオーガが発見されなければ依頼達成として処理します」


 本来はサインがある時点で依頼達成なのだが、今回はあまりにもレベルが乖離した受注案件の為にギルドとしても真偽をその目で確認する必要があるとも説明を受けるクロイツ。


「その際にはクロイツ様は一つ飛ばしてDランクに昇格になる可能性が高いです。で、その女性、クロイツ様との関係は?」


 話題がリサになると、既に個室でフードを外しているリサの顔を見ながら厳しく受付は追及する。


「あ~、リサはあの村で惨い扱いを受けていたので、俺の弟子にした」


「そ、そうです。師匠について行くと決めたのです。もうあんな村に戻るのは嫌です」


 公的機関であるギルドの権力によって村に戻されるのではないかと心配したリサは、慌ててクロイツの言う事を肯定する。


「大丈夫ですよ、リサ様。ですが大変申し訳ありませんが、強制的な奴隷契約等の疑いがゼロではありませんので調査させて頂けますか?」


 本来信頼関係のある冒険者であればこのような事が行われる事はないのだが、新人がこのような異常な依頼達成をした挙句に一人の美少女を連れてきては調査せざるを得ない。


「じゃあ、俺は少し席を外しますよ。その方が何かを聞くにも信頼性が上がるでしょ?」


 敢えて席を外したクロイツだが、ここまで疑われては彼女を夕食には誘えないと、どうでも良い所で落ち込んでいた。


 個室から出て、ギルドの内部にある席について飲み物を頼むクロイツ。


 確かに受付の言う通りにあのグレートオーガ二体がBランクであればFランクの自分が容易く倒しては疑われるのも当然であり、更には未だやせ細っている美少女まで連れ帰っては色々な疑惑が湧くのも仕方がない……と比較的冷静に考える事が出来ていた。


 それもこれも既にあの受付を食事に誘う事を諦めたからできる事であり、そうでなければ今頃かなり動揺して如何に汚名を晴らすかと言う事だけを必死に考えていた事だろう。


 運ばれた飲み物をチビチビ飲んでいる頃、クロイツが退出した個室では外套を脱ぐように受付から指示されたリサが不安そうにしていた。


 クロイツが何か悪い方向に疑われている事、その結果次第では自分と引き離されてしまうのではないかと言う不安だ。


 取り敢えず言われたとおりに外套を脱ぐ。


 ギルドに来る前に服を買っていなければスッポンポンであり、この時点でクロイツは有無をも言わさず有罪(ギルティー)だっただろう。


「大丈夫ですよ。少し事情を聞かせて頂くのと、強制的な関係ではない事を確認させて頂くだけです」


 優しく話しながらも、受付は真剣な表情でうなじ周辺を確認する。


 奴隷契約がなされていればそこに紋章が現れる上、強制的な奴隷紋であれば赤くなる。


 このリベラ王国でも奴隷は合法ではあるが、突然現れたリサよりも年上ではあるが未だ少年と言って差し支えない男が契約しているとなるとその経緯を確認せざるを得ないと考えていたのだが、受付の不安は杞憂に終わる。


「ありがとうございます。もう外套を着て頂いて大丈夫ですよ。奴隷契約はなされていないようで安心しました」


 この言葉を聞いて、ひとまず安心したリサは少しだけ落ち着きを取り戻す。


 その後、流石は荒くれ者を始めとした一筋縄ではいかない連中を常に相手にしている受付。


 その力を如何なく発揮し、リサから優しく全ての事情を聞き取る。


「そうですか。その話が事実であれば今後ブサ村の依頼は受注できませんね。グレートオーガ二体の調査の際に事実を確認する必要が出てきました。ですが、クロイツ様の疑いが晴れて良かったです」


 少々時間はかかったが、痩せている理由も矛盾がない説明であった事からもリサは解放された。


「でも、グレートオーガ二体の討伐方法は分からない……ですか。その部分だけは嘘をついているようでしたけど、冒険者の力は秘匿する事も権利ですからね。残念です」


 受付は、部屋から出て行ったリサを少々厳しい目で見つめながらこう呟いていた。


「師匠!」


「おぉ、結構かかったな。飯でも食うか?」


 敢えて飲み物だけで過ごしていたのはリサと食事を共にするためであり、漸くリサが解放された事から食事を共にする事にしたクロイツ。


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