王都にて(1)
行きはクロイツの異能の力でさっさと依頼場所のブサ村に到着していたのだが、帰りは普通と言うよりも未だ体力が十分には戻っていないリサと共に行動しているのでより遅い進行速度になっている為に数日野営をしてリベラ王国の王都に戻る。
道中に獣や魔獣が現れたのだが、リサにもわかるように収納魔法から剣を出して仕留めて見せた。
王都に近づいている方向である為に一般的な冒険者でも倒す事が可能な相手しかいなかった事で、かなりゆっくりと動いてリサにどのように戦うのが良いのかを教える事が出来たクロイツ。
既に入門の列に二人で並んでいる。
「師匠、流石ですね。私も武器は剣が良いと思うのですが」
「まぁ焦るな。確かに俺は剣しか見せなかったからそう思うかもしれねーが、結構あぶねーぞ。魔法であれば遠距離から安全に対処できるが……一長一短あるからな。適正も踏まえて今後の方針を決めようぜ?」
既にクロイツの剣術に見惚れていたリサは、この時点で“師匠大好き病”が完全に発病していた。
その師匠のアドバイスは値千金であり、ニコニコとクロイツの話を聞いている最中に入門の順番がやってくる。
「依頼達成だ。こっちは俺の弟子だが、身分証はない。銀貨十枚だ」
クロイツは門番に冒険者ギルドのカードを提示し、リサには仮の身分証の発行に必要な銀貨10枚を渡す。
「確かに。これが仮のカードだ」
相変わらず緩い入門のチェックを受けて、二人は王都の城下町に入る。
「早速普段必要な物資、特に服だな。買いに行くか!」
「師匠、ギルドの報告は良いのですか?」
「んなモン後でも構わねーよ。取り敢えず、可愛い弟子の服を何とかしねーとな。行くぞ!」
「フフ、ありがとうございます師匠!!」
この時のクロイツの判断は大正解だった。
まさかギルドに報告に行った際、余計なトラブルに巻き込まれるとは一切思っていなかったのだ。
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遠慮するリサを押し切って、片っ端から服を購入したクロイツ。
何と言っても宝物庫から拝借した各種硬貨は未だ山のように収納魔法に保管されている。
予想通り外套の下には何も着ていなかったので、購入後にきちんとした服を着ている上にそのまま外套を使用しているリサ。
もう外套は不要だろうと思ったクロイツだが、リサがそのまま使いたそうにしていたので放置している。
リサが着ているこの白い外套は熱さ寒さに対応しているばかりか、サイズ自動調整、自浄能力と自己修復能力まである優れものであり、実は近い将来にその外套を常に羽織って高ランクの依頼を難なくこなす事で“白套のリサ”と呼ばれ、対をなす“黒套のリージョ”と呼ばれる者と共に人類史上初となるSSランク冒険者となるのだが、それはまだ少しだけ先の話。
そのまま武器でも見に行こうかと思っていたのだが、流石に連続して自分の為に何かを大量購入してもらう事に大きな抵抗があったリサの懇願により一先ずギルドに報告に行く事にした。
ガタイの良い人物、そしてそもそも希少の荒い連中が多い冒険者が集う冒険者ギルド。
その雰囲気に多少飲まれているリサは、既にフードを目深に被ってクロイツの後ろを服をつまみつつ付いて行く。
始めてなのでこんなものだろうなと思いつつ、醜態を晒した受付ではない食事でも誘おうと思っている受付の列に並ぶ。
何事もなく自分達の番になり、取り敢えず依頼達成の書類と共に普通の大きな袋に入れた依頼証明の首二つを渡すと共にリサの冒険者登録を行うクロイツ。
「えっ!ちょっと待って下さい。こんな短い期間で、本当に依頼を……って、確かに村長のサインがありますね」
ギルドに依頼をした時のサインと、依頼達成のサインを見比べている受付のミューテル。
やはり登録したてのFランクのクロイツがBランク二体を無傷で仕留めた事を呑み込めないでいる様だ。
このランクによる不整合を知る訳もないクロイツはさっさと作業を終えて思い切ってこの場で食事に誘おうと気合を入れていたのだが、クロイツを見る受付の視線は少々厳しい。
その視線の先には、新規冒険者登録を申請しているリサにも向けられていた。
「クロイツ様。冒険者としての心得、知識について説明させていただく前に出て行かれてしまったので少々困っていました。事情もお伺いしたいので少し宜しいですか?」
問いかけている形にはなるが決して否とは言えない雰囲気を曝け出している受付に対し、只々首を上下に動かすクロイツ。
受付はニコッと笑うと、後方にいた他の職員に受付を引き継いでクロイツとリサを個室に案内する。
「先ずは、依頼達成おめでとうございます」
「ありがとうござ……」
受付に言葉を返す途中で、強く止められるクロイツ。




