ダンジョン町での生活(1)
ダンジョン町とシス連合国の挨拶も終わり、地上で普段通りに生活する事にも慣れてきた赤の紋章の人々。
皇帝アソールの宣言通りにゼリア帝国内部にいた赤の紋章を持つ人々は無条件にダンジョン町に移住となっており、その人達は流石にあの皇帝が治める国で生活していた為に露骨に酷い扱いは受けていなかったようで、当初から地上で暮らす事が出来ているのだが……避難時にダンジョン3階層と4階層に行く可能性が捨てきれないので、移住後は敢えて魔獣に慣れてもらう意味もあってダンジョン内部で生活をしてもらっている。
日々充実した生活を送る事が出来ているダンジョン町の人々だが、外部の人々は何とかダンジョン町に入ろうと画策している。
ゼリア帝国から大々的にクロイツをトップとして“白套のリサ”と“黒套のリージョ”を従えたダンジョン町が大陸中に紹介されており、何とか鍛えてもらいたいと思っている冒険者、クロイツ達が制御しているのでダンジョンのお宝を容易に手に入れられるだろうと欲にまみれた冒険者、貴族、商人が続々とこの地にやってくるのだが、中に入れたのは友好国家の国家元首と護衛や、顔見知りの商人だけだった。
ほぼ全ての来訪者が門前払いを食らっているのだが、強引に侵入しようとする強者は誰一人としていない。
それは、門から中を覗くだけで数体のポイズナックの存在が確認でき、更には必ず複数体が中から外の様子を観察しているからだ。
「次の方」
その状態でも来訪者は後を絶たず、門の位置にいる受付……ゼリア帝国から来てくれている元ギルド職員のミリアとその友人のレスレが落ち着いて捌いている。
当然門には顕現しているポチの眷属二体がおり、二人が座っている後ろにもポイズナックが睨みを利かせている程の安全対策を実施しており、当初この町に来たミリアとレスレは、他の人々と同様にポイズナックを始めとしたSランク魔獣に恐れおののいていたのは良い思い出だ。
「おう。俺達は三人の冒険者パーティーだ。何でも、管理されているダンジョンがあるらしいな。そこできっちりと修行をさせてもらおうかと思ってよ」
噂が出回っているので、例えSランク魔獣であっても無暗に襲ってくることは絶対ないと知っている者達は態度が横柄になっている者も少なくないのだが、その視線は入門受付の二人の背後にいるポイズナックに釘付けだ。
「そうですか。ご存じとは思いますが、元Aランカーの“爆炎のハロルド”でさえ1階層の“さわり”だけで撤退したダンジョンですよ?大変申し訳ありませんが、お三方では侵入直後に死亡する未来しか見えませんが?」
「だから言っているだろうが、管理されているダンジョンなんだろう?そうならねーように調整してくれりゃー良いんだよ」
「当ダンジョン町でのダンジョンは、住民に対してのみ制御されているダンジョンです。来訪者に対してはその全てが無効になりますので、ご自分の努力でどうぞ。それに、ダンジョンに入るだけならばこちらの町の中からではなく、裏手に回れば誰でも入れるようになっていますよ」
「そこは見に行った上で、無理だと思って町に入ろうとしているんじゃねーか」
「では、こちらではもっと無理ですね。お引き取り下さい。次の方!」
全く相手にされずに追い払われる冒険者三人。
「チッ、ここまで来ておいて無駄足かよ!」
「いや、そうでもないだろう?あの防壁を超えちまえば……」
「バカか。よく見ろ!」
一部の欲にまみれた冒険者が門から離れながらこのような会話をしており、その視線は上空に向けられているのだが……そこにも複数のポイズナックがおり、明らかに自分達を補足しているのだ。
「は~、もう少し真面な連中が来ねーかな。いくら赤の紋章の人達が地上で生活が出来るようになったとは言え、外部との接触はいつもの商人だけじゃー仕方がね~だろうよ」
防壁の上でポチの体にもたれながら今の冒険者の様子を見ていたクロイツに対して、リージョが反応する。
「では師匠、確実にとは言い難いですが厳選した人材数人をポチ殿の眷属をつけて陰から監視の上、数日交代で滞在して頂きましょうか?そもそもミリアさんやレスレさんも外部の人ですが既に町人として普通に仲良く生活できていますので、慣れが大切だと思いますが」
「私とお兄ちゃんも町をうろうろしていれば安心してもらえると思いますよ、師匠!」
「そうだな。そうすっか。ま、皆に事情を説明した上で、人選はあの二人とポチの眷属に任せるしかねーか」
そう言いながらも、次は町の中に視線を向けるクロイツ。
そこにはダンジョン3階層直通の入り口から出入りしている人々がおり、手には素材や農具、収穫物や種、色々とダンジョン内部と外の町で使い分けて作業をしているように見えるが、今日は行商人が来ているからか内部に何かを持ち込むよりも内部から何かを持ってくる人の方が多くなっている。
ダンジョン内部と地上での生活については全て人々の好きなようにさせているので、ゼリア帝国から来たばかりの人々を除くと、敢えて一週間ダンジョンで宿泊して作業を行っている者も存在しているのだが、行商人が来る日は大体作業中の人以外は地上に出てくる状況になっている。
誰しもがクロイツの希望である、地上で本物の太陽の下で生活できるようになってもらいたいと言う気遣いに応えるべく行動しているのだ。
「で、今日の素材は何を準備したんだ?」
『いつもの深層の食材や種、鉱石だけだとつまらないから、魔核を準備したよ』
行商人に販売できる素材を準備して3階層に設置する役を担っているポチが答える。




