メバリアとベナマス(1)
ベナマス一行が勝ち誇った表情で王城から出て行った後……残されたメバリアは自らが国王として即位した際にクロイツと共に信頼できる人物を探し出して貴族とした人物達に緊急招集をかけており、既に全員が集合して今回の件の対策を話し合っていた。
「私はこの契約について今の今迄知る事が出来なかった。申し訳ない。現状を説明すると、一月当たり虹金貨10枚(1億円)の未払い金、更には通常の契約である月当たり虹金貨1枚(1千万円)を支払う義務が発生しているのだが、その未払い期間が掴めずに困っている。契約は相当前から締結されているのだが……直後から未払いだと強弁されても反論する証拠がない」
「……これは、してやられましたね、陛下。一つ確認したいのですが、契約破棄についてはどのようになっておりますか?」
「半年前に告げる事になっているから、最低でも虹金貨6枚(6千万円)は支払う事になるだろうな」
今の時点で準備できたのは虹金貨20枚(2億円)であり、数日で準備できそうなのは後虹金貨数枚(数千万円)と言った所が限界である事は、今この場にいる面々は自らも復興を全力で行っているので理解している。
「では陛下、どう考えても先ずは未払い期間の確定が必須でしょう。ここは先代愚王に調査をすべきではないでしょうか?」
「当然だな。だとすれば、早急にクロイツ殿に依頼を……」
メバリアはポチから渡されている狼の魔獣を通じて何とか連絡を取ろうとしたのだが……
「お話は聞かせて頂きました。直ぐに師匠に現状を説明の上で対応いたしますので、少々この場でお待ちいただけますでしょうか?」
ベナマスの情報を収集する為に同行していたリージョがこの場に現れたのだ。
既に何度も同じ状況を経験しているメバリアの驚きは少ないが、他の面々は一応国家重鎮が集まっているこの場所に難なく侵入して見せた“黒套のリージョ”に対して驚きと崇拝の視線を向けている。
クロイツを始めとしてSSランカーの“白套のリサ”や“黒套のリージョ”はメバリア国王と懇意にしている事を知っているので、警戒や敵対の姿勢をとる者は誰一人としていなかったのだが、その実力を理解しきれていない者がいる事も事実だ。
「その、リージョ殿。ここからダンジョン町までは人の足では20日程度は必要になるはず。SSランカーのリージョ殿であれば相当短縮できるのは間違いないと思うが、この場で待つには時間がかかりすぎるのではないだろうか?」
この疑問に答えたのは、問いかけられたリージョ本人ではなく国王であるメバリアだ。
「いや、アフェニュー子爵はご存じないかもしれないが、リージョ殿達であれば軽くお茶を飲んでいる間に戻って来られる。心配する事は無い」
「そ、そうですか……陛下がそう仰られるのならばそうなのでしょう。わかりました。不躾な質問でした」
「では、急ぎますので私はこれで……」
徐々に気配が消えて行くリージョをよそに、この段階でこれ以上何かをする事は無いだろうと判断したメバリアは、宣言通りにお茶の手配をする。
「良し、一先ずは休憩だ。体も頭も休める時に休まないと、良い仕事はできないからな」
長く厳しい現場を仕切り続けてきた経験から、結論が出ない状態で無駄に動く必要はないと完全に頭を切り替えており、その姿勢を見て自分達の国王は素晴らしくできる人材であると改めて忠誠を誓った新興貴族達だが、お茶を飲みつつゆっくりできるかと言うと必ずしもそうではない。
「で、あの場所の道はもう少し広げる方が、交流が活発になると思うのだが」
「確かにノリワドス侯爵の指摘の通りですが、もう少し地盤を改良しなければ雨が降った時に立ち往生する馬車が多くなり、徒歩の人々にも相当危険な場所になる可能性がありますね」
「そもそも、馬車と人の通る道を分けるべきではないですかな?ヘンセーニル男爵」
と、復興に向けての話が活発に行われていた。
誰しもがこの新たなナスカ王国を良くしようと言う気概がある人物達なので、集まればこのようになるのはいつもの流れではある。
議論が白熱すると時間の経過を忘れてしまいがちで、既にリージョが去ってから数十分が経過している。
「お待たせしました」
そこにリージョがクロイツともう一人連れてこの場に現れた。
「俺の元家族の尻拭いをさせて申し訳ない。事情はリージョから聞いたが、俺も契約なんざ知らないからな。良く知っている奴を連れてきた……おい」
そこには、暫く太陽の下にいなかったからか異常に白くなっており、更には過酷な労働に従事していたので表情も少々虚ろで薄汚れて痩せこけているリーナがいた。
「え?ドレアではなくて?リーナ?」
クロイツの家族については少々知っているメバリアは、何故先代国王のドレアが来ないのかを不思議そうにしている。
「あぁ、ドレアはこいつに操られていたから詳しい事は何も覚えちゃいねーんだ。ホラ、早く説明しやがれ」
簡単にメバリアの疑問に答えたクロイツは、リーナに契約に関する話を促す。
「け、契約書は私の部屋の床下に隠してあります。それと、支払い済みの証明も同じ場所に入っているのですが、未払いは私がこの場を去るまでの間で少なくとも2年近くは続いています」
あまりにも衝撃的な事実がリーナの口から告げられる。




