リサと共に
「師匠、お兄ちゃん!町の建設も順調、私達の依頼も順調で資金も問題ないので、約束通りに二人が飲んだお店に連れて行ってください!」
相当時間が経過していたので、すっかり忘れていた事を言われてしまったクロイツとリージョ。
クロイツは最終的に自分がリサの噴火のはけ口になる可能性があるので及び腰なのだが、リサと明確に約束をしていたリージョはその真面目な性格からか今日にでも向かうつもりでいた。
「確かに約束していましたね。町の状況もリサの言う通り順調ですし、今日あたり行って見ましょうか?師匠」
「あ、あぁ」
本来ならば手放しで喜ぶべき状況であるべきなのだが、リサがついて来ると言うだけで一気にテンションが下がってしまっているクロイツだ。
こうしてその日の内にグアトロ王国の店がある場所に到着する三人。
「へ~、随分と色々なお店がありますね。もちろん怪しそうなお店もありますけれど、大丈夫ですよね?師匠、お兄ちゃん」
「だ、大丈夫ですよ、リサ。ねぇ?師匠!」
「そうだぞ。これから行く店は、リージョが一人で選定してくれた店だからな。変な店である訳がない」
ここぞとばかりに真面目な口調で、万が一の場合でも自分が悪い訳じゃないと予防線を張るクロイツ。
「し、師匠……」
大丈夫だとは思いつつも突然のクロイツの裏切りに一気に不安になるリージョだが、賽は投げられているので思い切って店に向かう。
落ち着いた雰囲気の店に迷わず向かっているリージョを見て少し安堵した表情になっているリサの気配を、この状況でクロイツとリージョが感じ取っていないわけがない。
本気で楽しむ時には気配察知など一切使わないが、今は何がリサの起爆剤になってもおかしくない状況にあるので、本当に最悪の状況に陥ってしまった場合には周辺の被害を防ぐべく二人でリサを抑える必要があるのだ。
「いらっしゃいませ。アラ?また久しぶりのお客さんね。本当に忘れられたのかと思ったわ。フフ、今度は“白套のリサ”様までいるのね。凄いわよ!本物そっくり!これなら、今晩もあの三人について熱く語れるわね!」
店に入ると以前対応してくれた女性がすかさず声をかけてくれ、ある程度状況を教えられているリサは微笑みすら浮かべている。
この微笑は、クロイツとリージョが言っていた通りに怪しい店ではなかった事に対する安堵と、更には自分達、最終的には大好きな師匠の純粋なファンであり尊敬してくれているのだと雰囲気で感じ取ったからだ。
「ウフフ、師匠、お兄ちゃん。良いお店ですね。今日は私も飲ませてもらいます!」
クロイツとリージョはホッとしつつも酒を口にし始めると、やはり接客のプロだからか、クロイツ達のファンとしての仲間意識も相まってあっという間に楽しい雰囲気になる。
「それでね、リサちゃん。こっちのクロイツさんはね?リサちゃんと離れるのが本当はものすっごく悲しかったんだって。って、まるで本物のクロイツ様みたいな事を臨場感たっぷりに話すのよ?凄いわよね。私達でさえ想像すらできない事を知っているようで、値千金の情報よ。リサちゃんは何かないのかしら?」
少し混乱するリサだが、この場では自分達は本物そっくりの追っかけのような立ち位置で認識されていると思い出しつつも、クロイツが自分の事をそこまで想ってくれていたと聞かされてウルウルしてしまう。
言われているクロイツは……リージョも同様だが、リサと同じように隣に座っている女性の話術もあるのだろうが、途切れないような楽しい会話が展開されているようでリサ達の会話は耳に入っていない。
「えっと、ちょっと色々ありすぎて何を話せばよいのか……と、とにかく、師匠は全てが素晴らしいんです!」
「そうよね~。ナスカ王国の王族で、Sランク魔獣を一捻り。それでいてリサ様とリージョ様をSSランクになるまで育てられる力まで持っているのに、絶対に驕らない。本当に素敵よね~。実際にこの目でその姿を直接見てお話しできたら素敵よね!」
目の前にいますよとは言わずに、その称賛の言葉を本当に嬉しそうに噛みしめているリサ。
前回同様閉店まで全員が飲み明かして楽しい時間を過ごす事が出来ていた。
「今度は忘れられたと思われない間隔で来てくださいね!」
「「「わかった(りました)」」」
この場で転移を使っては問題があるので、一応テクテク普通の速度で歩いている三人。
「師匠、お兄ちゃん。疑ってごめんなさい。本当に素敵なお店でした。あの場所ならいつでも行って良いですよ。でも、その時はできるだけ私も一緒に連れて行ってくれると嬉しいです」
誤解が解けた上に店に自由に行ける権利まで手にする事が出来てホクホク顔のクロイツとリージョ。
非常に気分の良いまま三人は転移でダンジョン前まで戻り、大きな入り口となっている3階層に続く階段を下りている途中でポチによって下層に転移された。
『楽しかった?』
「あぁ、全てが上手く行ったぜ」
クロイツの腕には、慣れないお酒で酔いつぶれたリサが幸せそうな表情で眠っていた。




