リサの爆発と思わぬ幸運(3)
三人を連れていつもの崖に転移するポチ。
「おいおい、ポチ。あのぶっ壊れた天井を直さなくて大丈夫か?中から無駄に魔獣が溢れて行かねーか?」
『大丈夫だよ、クロイツ様。制御下にあるから。でも、地上の人が落ちてくるかもしれないね。それは防げないかな』
「いやいや、突然3階層まで落ちたら……って、魔獣云々以前にその時点で致命傷じゃねーかよ!大丈夫かよ?」
『でも、今周辺には誰もいないでしょ?あれだけ大きな穴に落ちる程の間抜けな人ってそうそういないと思うけど。それにちょっと僕、思いついた事があって相談したいんだ。ダンジョンを直す事はできるけど、直し方って言うか……』
ポチはここで思いついた事を三人に説明する。
ポチの案としては、今赤の紋章を持つ人々が住んでいる二つの階層を3階層と4階層に移動して、今回出来た大きな穴を整備する事によって地上から直接3階層に戻って来られるようにしてはどうかと提案する。
「すげーじゃねーか!大怪我の光明か?確か、3階層からは知能が高い魔獣が配置できるんだったよな。それであれば、町に戻ってきた住民に危害は加える事はねーって事で良いんだよな?」
『うん。そうだよ、クロイツ様。その階段を作る時にそこから1階層と2階層には侵入できないようにしておけば、細かい制御が難しい魔獣、場合によっては襲われる可能性が高い魔獣と遭遇する事も無いよ』
「凄いですよ、ポチさん!」
「私もその案に賛成です、ポチ殿。リサのしでかした穴を上手く活用してくれるなんて、素晴らしい案です」
リサとリージョも一も二も無くポチの案に賛同し、クロイツの構想であった赤の紋章の人達が本当の太陽の下で生活できるようにする第一歩を歩みだす事が出来た。
かなり大きな穴が開いているので、そこを緩やかな傾斜でありつつも広い階段を設置し、1階層と2階層は壁で隔離して直接3階層につなげたポチ。
『これで大丈夫。まだ階層の移動はしていないけど、住民に説明してからの方が良いよね?それに、地上の町も全然できていない状態だし、3階層の魔獣と住民の顔合わせも必要でしょ?』
最初にクロイツが思っていたのは、リサと別行動を決断した時と同じく広い視野を持ってもらう事が目的だったのだが、冷静に考えれば赤の紋章をつけられる前に普通に生活していたはずの人々がほとんどなので、今では少し目的が変わって地上で普通の人と同じように生活できればと言う思いが大きくなっていた。
家族になって新たに生まれた子供には紋章は継承される事は絶対にないので、その子供達は思うままに人生を謳歌すれば良いのだ。
「ポチ殿、この溝は何の為にあるのですか?」
3階層の階段を下りた場所にある溝を不思議そうに見ているリージョ。
『これは、地上で雨が降った時の水を逃がすための溝だよ。凄いでしょ?一応僕も色々考えているんだよ?』
思わぬところで細やかな気配りを見せたポチに感動する三人は、最後の対策を行う。
「地上は一応屋根付きの広い入り口を作っただけだろう?このままだと、近接した異なるダンジョンの入り口と誤解されかねね~からな。何もしらねー優良冒険者が突然三階層に侵入して攻撃されちゃー目も当てられねーから、一応注意喚起しておくか」
最早ダンジョンを支配している事を隠すつもりもないクロイツは、敢えて積極的に言うつもりもないのだが、流石は元王族だけあって善良な市民が自分達のせいで消え去ってしまう事を良しとはしなかったのでギルドを通して大々的に注意喚起をしてもらう事にした。
と同時に、ある程度顔見知りになっている王族・皇族達にも同じように情報を回すとともに、その周辺にはクロイツを始めとしたリサ、リージョと言った超高ランカーが治める町を作ると宣言した。
事前に最も近い国家であるゼリア帝国の皇帝アソールには許可を得ており、その話を聞いたアソールは自らの国家の住民を移住させる事まで進言してきたのだが、まだその状況にないと断りを入れていた。
「これで漸くスタートか。俺達だけで町を作っても良いけどよ、それだとこの場所に町を作る事を認めてくれた皇帝にも申し訳ねーし、少しゼリア帝国への依頼として作業してもらう事にするか?」
仕事を与えて報酬を払う事にすれば余計な軋轢を生む可能性を極限まで低くする事が出来ると知っているクロイツは、敢えて懐を痛めて……と言ってもそれでも十二分な資金があるので、ゼリア帝国のギルドに対して町の作成依頼を出す。
一つの町を作る依頼など前代未聞であり相当な技能を持つ人々に仕事が行き渡り、ゼリア帝国のギルドを通して他国家のギルドでも依頼が出されているので、他国でも仕事が生まれて良い環境になっていた。
結果的に新たな町の認知が進むと同時に3階層に進む階段があり、無暗に侵入すると命が無くなる危険が高いと言う事も認知される。
地上でここまで話が進んで、実際に作業が始まっている事を知らない深層に住む赤の紋章を持つ人々は、今ものんびりと心を休めつつも楽しく生活していた。
「そろそろ伝える時か?」
「そうですね。概要を話しても良いとは思いますが、防壁が完成していないのでもう少し後にした方が良いかもしれません。出入口は一か所にして、力のある者……万が一にも赤の紋章を持つ人々が拉致されそうになっても看破できるほどの能力がある門番を置いてからの方が良いと思います」
「そうですね。私もお兄ちゃんと同じですね。でも、そんな門番……私達以外に誰か当てがあるのですか?」
『そこは、狼も配置すれば良いと思うよ?一応悪意は見抜けるし』




