クロイツとポチ
「なぁ、ポチ。前にも言ったけど、この町の人々を安全な状態で地上に戻して―んだよな。希望者だけだけどよ?なんかうまい手はねーもんかな?」
『えっと、クロイツ様。僕は難しい事はわからないよ。でも、メバリア様だったっけ?その人が治めている国なら信頼できるんじゃないの?』
「国王として、人として信頼できるのは間違いねーが、その国の中にいる連中全員が信頼できるのとは違うだろ?赤の紋章持ち全員にポチが手配してくれた魔獣をつけられりゃー良いんだがな」
『ごめんなさい。僕も知らなかったけど、召喚するのに上限がある魔獣だったなんて……』
いつもの崖から町を見下ろしているクロイツとポチだが、話の内容は赤の紋章を持つ人々を地上に戻して安全な環境でどう生活できるかと言った所だが、最も確実だと思われていた魔獣を護衛につける方法は使えなくなっていた。
最近は住民が増えて、更に異なる階層の労働者に対応する魔獣も必要になっている事からポチがいつものように狼の魔獣を召喚したのだが、そこで漸く召喚個体数に上限がある事に気が付いたのだ。
「仕方がね~よな。確かにあれほどの知能の高さと能力を持ち合わせている魔獣を無制限に召喚出来りゃー無敵だからな。今迄はそんな状況になかっただろうから、知らねーのも無理はねーよ」
なんだかんだと話は進んでいるのだが、残念な事に良い解決案はなかなか出てこない。
他の魔獣を護衛に着ける事もできない事も無いのだが、あれほど愛らしく、且つ自らの存在を隠蔽出来て強さもある魔獣が準備できないのだ。
一部の条件が外れる……例えば大陸中に知れ渡っているSランク魔獣のポイズナックを準備する事は可能だが、この個体は隠蔽・強さと言った能力は抜群だが知能の面で少々劣り、守るべき対象に何かあった場合の対処時に近隣にも有り得ない程の被害を及ぼしかねないのだ。
「中々上手く行かねーもんだな。じゃあよ?先ずはこのダンジョン入り口付近に町を作って、そこで生活してもらうのはどうだ?」
『クロイツ様、狭い範囲なら問題ないけど、町……あまりに広いとやっぱり護衛が足りないと思うよ?それに、ダンジョンに個別に避難されると結構大人数を都度この階層に転移させなくちゃいけないから、厳しいかな』
クロイツとしては防壁なりなんなりを作成して町への入出を厳しく制限するのもありかと考えていたのだが、ポチもその程度はクロイツが言わずとも理解しており、そこをすり抜けられた場合に町中で暴動を起こされては全員を守り切る事は出来ないと考えている。
悪意を隠して町に入り、自らの血液を不可抗力の体で赤の紋章に付着させて強制的に戦闘させてしまう事もできるからだ。
「わかった!思い切って町の階層を1階層と2階層に……って、それじゃあ全員を守れねーのは一緒か?」
『このダンジョンの上層階設置可能になっている魔獣達はあまり知能が高くない魔獣しか配置できないから、住民を区別する事は難しいかな』
「へ~、階層によって設置できる魔獣が決まっているのか。そりゃー初耳だ」
『それはそうだよ、クロイツ様。いきなり一階層に最強の魔獣がいるっておかしいでしょ?』
クロイツとしては1階層の魔獣が最強だなんて侵入者にはわかりようがないので、更に強い魔獣が潜んでいると恐れて以降の侵入が控えられる可能性もある為にダンジョン防衛としては有りだとは思っているのだが、管理者であるポチが言うのだからそう言うものなのだろうと特段この条件について何かを言う事は無いが、疑問は残る。
「じゃあよ?参考までにどの程度の階層であれば知能が高い……そうだな、保護対象とそれ以外をきっちりと識別できる魔獣がおける階層は何階層からだ?」
『3階層!』
「浅っ!なんだかもっと深くなきゃいけね~流れだったろ?浅いな、おい!」
『え~、そんな事を言われても……困っちゃうよ』
「そうだな、悪かった。っと、そうだ?相当知能の高い深層の魔獣をそれぞれの護衛に……ねーな」
クロイツが自ら否定した通りに一応頭脳や強さは問題ないのだが、その強さ故かあまり隠密が出来る魔獣がいないので、見た目相当厳つい魔獣が常に護衛として近くにいてしまっては普通の生活が出来るとは到底言えない。
「理想は……3階層と4階層に町を移動して、直接ダンジョンに入れるようにする……か」
どう考えてもいきなりこのダンジョンから遠い町にバラバラに赤の紋章を住まわせる事は出来ないと考えているクロイツは、やはりこのダンジョンの入り口付近に町を作るのが良いのではないかと考え始めていた。
同時に万が一の際には敵味方が識別できる魔獣が護衛として存在している3階層に直接非難できる環境が最も良いのだが、そこまで上手くはいかない。
『クロイツ様、ダンジョン侵入は1階層と決まっているから、それは無理じゃないかな。ダンジョンを修復できない程破壊すれば別だけど、それはちょっと厳しいと思うし』
「だよな。まっ、まだまだ時間はあるからよ?それに当人達から移住したいと意見が出ている訳じゃねーから、気長に行こうぜ」
『うん!僕も何か良い案が有ったら教えるね』
フサフサの尻尾でクロイツを撫でながら嬉しそうにしているポチと、眼下に広がる幸せそうな人々を見て羨ましいながらも嬉しい気持ちで笑顔になれるクロイツだ。




