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元王子クロイツとその弟子達の軌跡-史上初のSSランクを従える男-  作者: 焼納豆


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リージョの提案

 以前、クロイツは実の弟妹に対処するために行動すると言った時、そしてその調査等実際に行動を起こす際には非常に寂しそうな表情をしていたのを見逃していなかったリサとリージョ。


 リージョが敬愛する師匠(クロイツ)に元気を出して貰うべくクロイツの好きな物、事、を必死で考えた結果導き出した結論は、やはり女性……それも綺麗な女性と楽しく話す事が大好きだと改めて確信したリージョは、内容が内容だけにリサには相談できないので一人で情報取集をしていた。


 かつて“無音のリージョ”と呼ばれて暗躍していた時には各国の情報を相当数仕入れており、その中に綺麗な女性と楽しく話ができる店はグアトロ王国が最も数多くあった事を思い出していた。


「師匠、リサ、ちょっと今日は所用があるので出かけてきます。夕方までには戻りますがそれまでは不在になります」


「ん?珍しいな。まっ、気を付けて行って来てくれ!」


「行ってらっしゃい、お兄ちゃん(リージョ)」


 二人に見送られていつもの階層を後にして一気に全力でグアトロ王国に向かうリージョは、各店の最新情報を得ようと心に決め、自分自身で店に客として入り、実際に体験した上でクロイツに勧めようと考えていた。


 流石はSSランカーであり、あっという間にグアトロ王国の各種店が立ち並ぶ一角に到着したリージョは、何故か異常に緊張している自分に気が付く。


『ここまで緊張するとは、強敵を前にしてもこれ程の状態になった事は……記憶にありませんね』


「はいよ、お兄さん!あんたも“黒套のリージョ”のファンかい?私達の店にもファンがたくさんいるんだ。どうだいその辺りを語り合いながら一杯、楽しんでいかないかい?」


 リージョが心中穏やかではない状態で、呼び込みの者から声をかけられて驚くリージョ。


 まさか自分がこれほど簡単に第三者の近接を許すとは……と驚いていたのだが、なんて事はない、リージョが緊張のあまり非常に注意散漫になっていただけだ。


 今はフードだけは取っているリージョだが、普段は後ろでまとめている髪をばらして少し顔を隠すようにしているので、店の男も本物のリージョだとは思っていない。


「なるほど。で、一つ聞くが、リージョと言えば他に二人仲間がいたと思うが、貴方の店にはその二人のファンはいるのかな?」


「ん?そうか、そうだね。リージョだけでは語れないってところか。お兄さん、意外と通だね。当然“白套のリサ”とその師匠のクロイツのファンもきちんといますよ?」


『こ、これならば師匠も楽しめるかもしれない。百聞は一見に如かず!い、行くぞ、リージョ!』


 自分自身に気合を入れて、店に行く了解の言葉を伝えようとするのだが……何故か口がカラカラに乾いて言葉が出せないリージョ。


 とんだ醜態の連続に驚き、まだまだ修行が足りないと猛省しつつも師匠の為と必死で勇気を振り絞る。


「わかった。では、世話になろうか」


 口調も少々変えて万が一にもリージョ本人と明らかにならない程の念の入れようで、店に入るリージョ。


「こ、これは……」


 気配察知を行う事すら忘れる程の緊張具合で店に入ると、落ち着いた雰囲気の店の中にはソファーとテーブル、そしてカウンターの前に椅子が設置されており、一人客であるリージョはカウンターを勧められる。


「いらっしゃいませ。お兄さんは“黒套のリージョ”のファンなのかしら?私もなのよ。でも、正直な所、SSランカーを二人も育て上げた王族のクロイツ様も気になるのよね。貴方はどうかしら?」


 流れるように自分の隣の席に座ってきた綺麗な女性は、のっけからリージョが張った壁を乗り越えてきた。


 つまり……クロイツに興味があると言い切ったので、一気にリージョのテンションは上がる。


「そ、そうか。実はししょ……クロイツ様には非常に興味がある。貴方が知っている事を教えてもらえないか?」


「あら?嬉しいわ。私と同じクロイツ様のファンでもあるのね。私が知っているので有名な所は、ナスカ王国の王族である事、今はどこにいるかわからないけれど弟であり先代国王である無能のドレアや家族から過去に迫害を受けていた事かしら?でも、そんな逆境を跳ね返せるほどの強い心と本当の強さをお持ちだったのね。それに、私も驚いたのだけれど、今の陛下、メバリア陛下と異母姉弟ながらも信頼できる方が身内にいらっしゃった事が本当に嬉しかったわ」


 ここまで聞いて、リージョはこの店にクロイツを連れてくるべきだと決意した。


 まだ一軒目で初めて話した女性なのだが、即断即決できるほどにクロイツの事を尊敬している事が伺い知れたのだ。


「あなたは素晴らしい慧眼をお持ちだ。尊敬に値する」


「ウフフ、ありがとうございます。では、駆け付け一杯、如何ですか?」


「頂戴しよう」


 こうして調査がさっさと終わってしまった油断か、クロイツを良く言ってくれる女性と楽しく過ごせた油断か相当飲まされてしまったリージョだが、別段ボッタくりの店ではないので、普通に支払いを済ませて店を後にする。


『なんて素晴らしい店なのだ。調査のつもりが私も楽しいと思えるなんて中々ない。これならば師匠(クロイツ)に自信をもって勧める事が出来ますね』


 喜んで寝床に帰るリージョだが、この結果が大惨事を起こすなど知る由もない。


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