メバリア即位(4)
リサが考えていた通り、メバリアの護衛をしているリージョや来賓の護衛をしているクロイツも全ての状況を正確に把握しており、流石はリサだと感心していた所だ。
まさかこの場で命を狙われていたとは知らない各国の王族やメバリア新国王は、にこやかに観衆に向かって手を振っている。
やがてメバリアが拡声の魔道具を手にすると、観衆は一気に静かになる。
「皆、聞いてほしい。正直に言えば我が国ナスカ王国は窮地に陥っていたが、今こちらにいらっしゃる各国の助力もあり、持ち直す事が出来ている。しかし、最大の功労者は他におり、この大陸中を救ってくれたと言っても過言ではない人物がいるのだ。皆も知っているだろう?史上初のSランカー、そして更にはSSランカー二人を育て上げた偉大な人物を。紹介しよう、私と同じくナスカ王国の血を引くクロイツ殿だ!」
「「「「うぉ~!!」」」」
突然自分の事を紹介されるとは思ってもいなかったクロイツだが、ここまで大騒ぎになってしまっては姿を見せるほかないと思い来賓の背後に突然現れ……と言っても気配遮断を止めただけだが、その状態で歩いてメバリアの横に立つと、拡声の魔道具を笑顔で渡される。
『これだけの事が出来るのなら、緊張する必要ね~だろ!』
内心でこう思っているのだが、新国王お披露目の場で無粋な事はしないクロイツは黙って受け取り、思った事を口にする。
「今紹介頂いたクロイツだ。確かに俺は元王族だが、今はしがない一介の冒険者だ。だから、言葉は少々荒いままだが勘弁してくれ。少し前にリサとリージョと共にSランクの魔獣を排除したのは事実だが、別に大したことをしたつもりもねーし、恩に着せるつもりもねーが、今後同じ状況になったらまた対処する事を約束しよう。それに、この王国が少し前の情けねー状態と同じになった際には黙って見過ごすような事もしねーが、そこは安心している。何と言っても、俺の姉であるメバリアが国王になっているからな。皆もこれからのメバリアの活躍に期待していてくれ。共にナスカ王国を発展させていこうぜ!」
「「「「クロイツ!クロイツ!!」」」」
大歓声を受けて苦笑いのまま拡声の魔道具をメバリアに戻すクロイツは、再び来賓の背後に行くとそのまま姿を消すかのように気配遮断を使う。
「今、クロイツ殿が言った通りに私の政がおかしくなれば遠慮なく進言してもらいたい。だが、そうならないように全力で取り組む所存だ。この決意、周辺各国の首脳の方々が証人となってくれるだろう。共に豊かな国家を取り戻そうではないか!!」
「「「「「メバリア!メバリア!!」」」」」
更に大歓声が起こり、成功裏に即位式は終わり各国の王族と共に一室にいるメバリアやクロイツ達。
「いや、非常に見事であった、メバリア国王。国王らしく飾る事も時には必要だが、本心での訴えが効果的な時もある」
「確かにその通りだな。流石は元ギルドマスターだ。あれだけの魂の叫びであれば、誰しもが心を打たれるだろう」
各国の国王達からの称賛を受けて、今更ながら恥ずかしそうにしているメバリア。
「で、いつの間にか余達の護衛をしてくれていたと言う事は、何か異常がありそうだったのかな?」
最後に口を開いたのは、各国の国王の中でも非常に洞察力もあると目されているゼリア帝国の皇帝アソール。
「あぁ、それは……リサが対処した。とは言っても、狙いはメバリアだったから、他の国には関係ねーよ」
「はい。数人爆発物を持っていましたので、無効化して祝砲に合わせて処理しました。その指示をしたのが、Aランカーの“血飛沫のミーシャ”でしたので、こちらも捉えています」
あっさりとAランカーを捉えたと言っている事もおかしいが、爆発物をこの場の王族達に気が付かれないように祝砲に合わせて処理をしたと聞かされて、理解が追い付かないこの場の王族達。
ある意味この異常な戦力がナスカ王国の新国王であるメバリアの異母弟と言う立ち位置なのだが、恐ろしい感情よりも頼もしい感情が大きくなっているのは今までのメバリアの評判やクロイツ達の評判から、無駄に他国を襲うようなことは絶対にしないと確信できた事によるのだろう。
ミーシャと爆発物を投げようとしていたミーシャの手下は、リサによって捕えられて気絶させられた上で地下に放り込まれているのだが、特段そこまで聞く必要もないと思っている王族達は、この場でこれからの事……各国の交易やナスカ王国への援助、その見返りにクロイツ達によるSランク対応と言った話で盛り上がっていた。
「そうだ。俺から一つ提案があってな。各国を守る事は問題ねーが、赤の紋章。俺達は彼等を匿っちゃいるが、狭いコミュニティーで生活せざるを得ない状況だ。今後は各人に陰ながら護衛をつけて取りあえずはナスカ王国で生活してもらおうと思っている。他国に移住希望があった場合には、安全と職の配慮をしてもらいて―んだよ。まっ、どこに行こうが紋章がある限りこっちで警護は付けるが、気配を完全に消した状態で警護させるつもりだ。いつでも見られていると思うと好きな事が出来ねーかもしれねーからな」
「その程度であれば全く問題ないが、各国には未だ赤の紋章が生活している事もまた事実。我らも扱いが惨いものに対しては積極的に対処する事は約束できるのだが、そうでなければ少々厳しい事は理解願いたい」
各国の了承が得られたので、残りはあのダンジョンで住んでいる人々がどう判断するかだな……と思っているクロイツ。
最悪赤の紋章のトラウマがある場合や、ダンジョンでの生活を希望する者に対して無理強いするつもりは一切なかった。
「じゃあ、俺達は帰るぜ?」
人知れずポチから渡されている魔獣をメバリアの護衛としてこの場に残して消えて行く三人は、リサがいつの間にか魔道具についても詳しくなっていた事について色々と聞いており、一人で活動する時に色々な知識を入れたと教えられ、やはり自分の考えは間違っていなかったと安堵するクロイツだった。




