メバリア即位(2)
「師匠、リベラ王国は承認を頂けました」
「私もグアトロ王国に行ってきました。もちろんお兄ちゃんと同じくOKの返事を貰っています!」
ナスカ王国の王城の一室に、クロイツと二人のSSランカーが集合している。
史上初のSSランカーのお願いである為に、リベラ王国もグアトロ王国も否と言えるわけもなく、あっさりとナスカ王国新国王であるメバリアは承認されるに至っていた。
これは少し前のSランク魔獣騒動が各国で起きており、その対処をあっという間にこの三人がして見せた事による効果なのだが、止めは強大な力を持ちつつも非常に慎重な皇帝と認識されているアソールがいの一番に新国王の就任を認めると共に、友誼を結ぶと宣言の上でお祝いの言葉まで述べたのだから、どの国家も否定的な言葉を発する要素を見つける事が出来なかった。
「良し、じゃあ後は国民に対する即位式だけだな。ねーとは思うが、一応リージョはメバリアの近くで護衛、リサは観衆の監視を頼むぜ?俺は来賓に気を配っておく」
「「はい」」
翌日大々的に即位式を行う事になっており、国王としての業務を始めている為に他国からは既に国家元首と認識されているのだが、形上国民に向けてのお披露目と言う意味での即位式を行う事になっていた。
「クロイツ様。今門番からの連絡で、ミーシャと名乗る者がメバリア陛下に面会を求めているようですが、如何致しましょうか?」
「ミーシャ?」
城の使用人から思わぬ名前を聞いて反応したクロイツに、リージョがこう伝える。
「恐らくですが、以前“爆炎のハロルド”と共に行動して死亡したと推定されていたA
ランカーの“血飛沫のミーシャ”だと思いますよ。何なら私が行って用件を聞いてきましょうか?師匠」
「う~ん、今更何しに来やがったんだ?うまい汁なんて、俺が言うのもなんだが今のナスカ王国にある訳ねーしな。良くわからねーから、とりあえず俺も行くぜ、リージョ」
「あっ、じゃあ私はメバリアさんの護衛に行っていますね、師匠、お兄ちゃん」
「悪いな、リサ。そうしてくれ。行くか、リージョ」
この部屋にいつつもメバリアの安全には気を使っていた三人だが、一応遥か格下とは言えAランカーに会いに行くのでリサが残ってメバリアの護衛につく事にしたのだ。
暫く歩くクロイツとリージョは、漸く門に到着する。
「あら?私は元ギルドマスターのメバリアに会いたかったのだけれど……仕方がないわね」
クロイツとリージョが来ても特段驚く様子も見せない女性は、やはりAランカーの“血飛沫のミーシャ”だった。
「で、今更メバリアに何の用だ?」
「そうね、実はメバリアがナスカ王国の先々代国王の種だって情報を掴んでいたのよ。で、それをネタに強請ろうとゼリア帝国に向かってみればいなくなっているじゃない?挙句にネタがネタでなくなる程の……王位継承なんて公になったものだから、当てが外れたのよ。そこで私は思ったわ!国王ともなれば、いくら前に冒険者であったとしても身を守る盾が必要でしょう?前に私はナスカ王国の専属になっていたのだけれど、契約があいまいな状態なので、確認をしに来たのよ」
強請るだの、自ら放棄した可能性が高い契約を確認するなど、平然と言ってのけるミーシャを見て少々引いているクロイツとリージョ。
「お、お前、頭は大丈夫か?自分で何を言っているのか理解できているのか?お前はドレアと契約している状態でポイズナックとの戦闘時にこれ幸いと逃亡したと聞いているがな」
「や~ね~!ハロルドにつられて引きずられるようにあの場を後にしてしまったけれど、契約を放棄したわけじゃないわよ?っと、誤解のないようにしておきたいのだけれど、ハロルドを殺ったのは私じゃないわよ?赤の紋章持ちだって事を忘れて行動したハロルドの紋章が契約違反で反応して死んじゃったのよ」
「……」
全く暖簾に腕押し状態で、目の前のミーシャと言う女は全く別の種類の強者だなと頭痛がしているクロイツ。
窮地に平然と逃亡するような人物が国王の護衛をするなど有り得ないので、とりあえず断る事だけは明確にしておくべきだと判断する。
「色々言っているが、お前が逃亡したその時点でドレアとの契約は破棄されているだろうが。それに、メバリアがその契約を引き継ぐ義務はね~よ。残念だったな。安定した生活がして~なら他を当たってくれや?」
流石のミーシャも、目の前の二人を同時で相手にして勝てるとは思っていないので戦闘ではなく別の方法で自らを売り込もうと考えるのだが、その最中にリージョが疑問を口にする。
「何故今更専属になろうとする?Aランカーであれば財力にも余裕があるし、得られる報酬も相当だろう?」
「それは……あんな戦闘の後では、単独で魔獣を相手にする気が無くなったのよ!」
ポイズナックとの戦闘時に手も足も出なかった事から、今まで一方的に狩る側の人間だと思っていたのが狩られる側になり得ると認識してしまい、単独で魔獣討伐を受ける気がおきなくなっていたミーシャだ。
「勝手な言い分だな。ま、お前の事情は知ったこっちゃねーからな。お引き取り願おうか」
一切の可能性はないとばかりに言い切られて一先ずこの場は引き下がるミーシャだが、Aランカーともなれば非常にプライドが高く、大人しくしているわけはない。
「フフフ、見てらっしゃい。私を雇わなかった事を後悔させてあげるわ!」
城下町のとある宿で、目を血走らせているミーシャはこう呟いていた。




